暗黒物質(ダークマター)とは、以下のことを表す。
- 宇宙における質量の大半を占めながら観測されていない(仮説上の)物質の総称。
- 見るに耐えない、もしくは材料や原型を留めていない暗色系で正体不明の物体。
- 星のカービィシリーズに登場するボスキャラクター→ダークマター(カービィ)
- 『とある魔術の禁書目録』に登場するキャラクター「垣根帝督」の保有する超能力の名称。
- ファイナルファンタジーシリーズに登場するアイテム。
- 『クロノ・トリガー』の登場人物・魔王が使用する冥系最強魔法。
- 漫画『遊戯王ZEXAL』ならびにOCGに登場するカード「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」の略称。
- 『映画 魔法つかいプリキュア! 奇跡の変身!キュアモフルン!』に登場する敵キャラクター。
- 料理という名の毒。嫁のメシがまずいを参照
ここでは1について説明する。
4行でわかる暗黒物質↓
- 目に見えない。触ることも出来ない謎の物質。「見えない/謎の」だからホントは闇物質が正しいけど語呂が良いから暗黒物質
- だが、重さ(質量)を持ち、その重力で星や銀河を引っ張っていく
- 宇宙は大量の暗黒物質とひとにぎりの見える物質からできている。
- つまり宇宙を真に支配しているのは目に見えない暗黒物質だったんだよ! ΩΩΩ<ナンダッテーッ!!
概要
太陽系の惑星の動きを想像してみよう。ニュートンの万有引力の法則によれば重力は距離の自乗に反比例するので太陽のすぐそばを巡る水星は太陽の強い重力の影響を受けて素早く公転し、最も遠い海王星は太陽の重力が弱まるためにゆっくりと公転する。と、そこまでは理論と観測値が一致していた。そこまでは…
さて今度は数千億個の恒星からなる天の川銀河を想像してみよう。星々は円盤のような形に配置され、ゆっくりと公転している。ここでも万有引力の法則を適用するのなら、銀河の中心に近い星ほど素早く公転し、周辺に行くに従って公転速度がゆっくりになるはずだ。はずだったのだが…
実際の観測結果は驚くべきものだった。銀河系の中心も周辺部も同じ速度で公転していたのだ! これではニュートン力学が成立しない。科学者は重力シミュレーションで銀河系の星の動きを計算しなおした。その結果、見えている物質の10倍もの見えない物質が銀河に含まれていないと観測結果とあわないことが判明する。この見えない仮定の物質は暗黒物質と呼ばれるようになった。
その後観測技術は進化し、天の川銀河は周りの数個の銀河と銀河団を形成し、さらに銀河団は複数集まって超銀河団を形成していることが判明する。だがニュートン力学ではこれらの宇宙の大規模構造は見える物質だけでは宇宙の年齢(現在では約138億歳と判明している)をかけても形成せず、周囲にその数倍の暗黒物質が、さらにはその数倍の未知のエネルギー(後述)が存在してはじめて形成することがわかった。これらの見えない存在こそ宇宙の真の支配者だったのだ。
さらに最近では重力が空間を曲げて遠くの銀河の光を歪ませる重力レンズ現象を調べることで暗黒物質の空間における分布地図も描けるようになった。暗黒物質は直接観測できなくとも今やその存在は確実視されている。
正体
その正体を知ることに関しては、素粒子物理学と天体物理学の二つのアプローチが存在する。
天体物理学からは、様々な理由により観測されない未知の天体、物質が候補に上げられている。MACHO (Massive Compact Halo Object)と呼ばれているものがその代表格である。
しかしビックバン仮説などを考慮に入れると、未知の天体がどれほど多く存在していようとも宇宙の構成要素には到底足りず、暗黒物質のほんの一部でしかないと考えざるを得ない。
素粒子物理学からは、WIMP (weakly interacting massive particles) と総称される「電磁気的な相互作用をほとんど起こさない素粒子」が候補として挙げられている。これらの大半は実在が確認されておらず(何しろ見えないし触れないので)仮説上の存在として扱うしかないのが現状である。
未知の天体説
暗黒物質の候補の一つとして、従来の観測技術では暗すぎて捉えられない天体というものがある。考えられるのは、恒星の終末期にその中心核が縮退してできた白色矮星や中性子星、質量が軽すぎて十分な核融合を起こせず赤外線のみで淡く光る、恒星になりそこねた天体褐色矮星。主となる恒星を失ったはぐれ惑星などだ。だが問題があった。これらの天体の質量の大半は原子核を形成する陽子・中性子などのバリオンと呼ばれる粒子で成り立っているのだが、ビッグバン理論で発生するバリオンだけではどうしても暗黒物質の量を説明できないのだ。よってこれらの説は却下される。そこで次の説が登場する。ブラックホールだ。
ブラックホールといっても、恒星の終末期に超新星爆発で出来る恒星ブラックホールはバリオンからなる恒星の中心核が縮退したものなので、その量はビッグバンで発生するバリオン量に依存する。だが、ビッグバン直後に超新星爆発によらないブラックホールが多数発生すれば候補の一つと成り得る。
未知の素粒子説
現在暗黒物質候補として有力視されているのが未知の素粒子だ。条件は電気的に中性であること、質量を持ち、重力と相互作用する(弱い相互作用をする可能性もある)というものだ。そこでまず浮かび上がったのがニュートリノだ。ニュートリノはたくさんある。宇宙初期には大量に発生したと考えられ、電気的にも中性だ。が、観測によってその質量は軽すぎて暗黒物質の量を満たさないと判明。さらに、速いスピードで動いているニュートリノでは、銀河のような構造が形成されないという指摘もあり、暗黒物質候補の主流からは外された。
次に挙げられる候補はすべての素粒子に対してそれぞれ対称的に存在し性質が似ているが自転に相当するスピンの値がずれている影の相棒と呼ぶべき超対称性粒子だ。これらのうち電気的に中性なものをニュートラリーノと呼ぶ。超対称性粒子は極めて重いため寿命が短い(ハイゼンベルクの不確定性原理により質量の重い素粒子ほど平均寿命は短くなる)が、超対称性粒子のうち最も軽いものだけは安定である(または寿命がとても長い)可能性があり、暗黒物質候補と成り得る。
ほかにもアクシオンとかミラーマターといった粒子が候補として挙げられているが、いずれもまだ仮説に過ぎずすべてはこれからの観測にかかっているといえよう。
暗黒物質検出の試み
暗黒物質の正体が未知の素粒子であると仮定して、これを検出しようという試みが全世界で行われている。だが、現在のところ発見したという報告はない。
検出の方法は暗黒物質粒子の質量に近いと思われる物質を宇宙線のノイズを避けるために地下深くに置き、熱によるノイズを避けるために超低温に冷やして暗黒物質粒子との衝突を待つというものである。検出のための物質にはゲルマニウムかキセノンが使われ、ゲルマニウムの場合は衝突による振動を熱として、キセノンの場合は光として検出する。
日本では2010年からXMASSと呼ばれる実験を行っていた。岐阜県神岡鉱山の1000mの地下に約1トンの液体キセノンを置き、暗黒物質粒子との衝突で発生する光を周囲の光電子増倍管で検出するという試みだったが期間中全く反応がなかった。そこで検出するターゲットを切り替えた。重金属並みの質量の粒子からダークフォトン(後述。ニュートリノより重いが電子よりは軽いとされる)がキセノン原子内部の電子を弾き飛ばした際の誘導放射の検出を目指したが、やはり何も検出されず、2018年に研究は打ち切られた。
これらの実験装置はあくまで暗黒物質粒子が弱い相互作用をする(弱い相互作用ができれば検出物質の原子核と衝突して弾き飛ばす事ができる)場合に限られ、もし暗黒物質が「重力以外の相互作用を行わない」粒子であればまず検出できる見込みはない。
綻び出したWIMP説
これまで暗黒物質の有力候補とされてきたWIMPであるが、ここ最近になってどうもその存在が怪しくなってきた。WIMPは弱い相互作用、つまり電磁相互作用よりもずっと弱い反応しかしないため互いには滅多に衝突せずにすり抜けるだろうと考えられてきた。実際、弾丸銀河団と呼ばれる40億光年先にある銀河団は二つの銀河団が衝突して一体化し含まれているガスが超高温となっているのだが、周辺の重力レンズは各々の暗黒物質が互いにすり抜けて銀河団から遠ざかっている様を示していたのだ。これによりこれまでWIMP説は確実とされていた。ところが最近になってWIMPでは説明のできない観測結果が次々と現れたのだ。
- 暗黒物質の分布は一様でムラがない。濃い塊になったりしないことが最近の観測で明らかとなってきた。これは暗黒物質粒子同士は稀に衝突することを示している。
- WIMPがもし弱い相互作用をするのなら崩壊してより軽い粒子になるはずだ。そう見込んで国際宇宙ステーションに粒子検出器を積み込んで暗黒物質が崩壊する際に発生する筈の高エネルギーの陽電子の検出を試みたが、結局見つけることはできなかった。
…というわけでWIMP説が揺らぎ始め、科学者は新しい理論の構築を迫られた。たとえなこんな感じである。
- 暗黒物質の正体は弱い相互作用をするWIMPではなく強い相互作用をする"SIMP"である。具体的にはいまだ未発見の第4世代・第5世代のクォークである。これら「ダーククォーク」は通常は正クォークと反クォークが結びついて「暗黒中間子」となっている。暗黒中間子はボソンであるため通常はボース・アインシュタイン凝縮を起こして粒子としての実態を失っていると考えられるが、稀に互いに衝突したり高エネルギー宇宙線に衝突することで一時的に実態を表すことがある。
- この宇宙に重なるようにして存在するもう一つの宇宙があると考える。この「宇宙」の物理法則は我々の宇宙とは全く異なり、存在する全ての粒子が皆やたらと重たい。光子に相当するダークフォトンでさえである。この隣の宇宙とは重力とのみ相互作用できる。超弦理論に寄れば端を持たないリング状の重力子は空間に縛られることなく自由に動くことができるからだ。こうした暗黒粒子の中にはダークフォトンを介して結びついた更に極めて重い暗黒原子があり、これらはまるでレコード盤のような薄くて平たいダークディスクを作ってこれが我々の宇宙の銀河の核を構成している。
- 暗黒物質はスピン0のスカラー粒子である(スカラー粒子とはスピンしていない、「どの方向から見ても同じ顔をした」粒子。標準模型ではヒッグス粒子が相当)。暗黒物質の分布にムラがないのはそれがインフレーションの前の、宇宙がまだ原子より小さい頃に誕生したからである。
- 暗黒物質は重力、電磁力、弱い相互作用、強い相互作用と並ぶ「第5の相互作用」を司る粒子「カメレオン」である。この粒子はその名のように周囲の物質の有無によって性質が変わる。周囲に質量を持った物質が多くあると質量を持った粒子として振る舞い、質量を持った物質が周囲にない場合は空間を膨らませる斥力として振る舞う。その為銀河団内部ではカメレオンは暗黒物質となり、銀河が極端に少ないボイド内部ではボイド自身をさらに膨らませるエネルギーとなる。
- 君たちに最新情報を公開しよう。
宇宙最初の恒星「ファーストスター」からの電波と、ハッブル宇宙望遠鏡、プランク衛星からの観測により、ハッブル定数が大幅に修正され73(km/s)/Mpcとなった。ビッグバンによる宇宙の膨張は従来の見込みよりずっと激しかったのだ。そしてこの頃の暗黒物質の温度は現在の宇宙背景放射と同じ3ケルビン。急激な断熱膨張により極限まで冷やされてしまったのだ。そこで科学者の間にある仮説が生まれた。「バリオンに衝突してその電荷を『食って』エネルギーを得るエキゾチックな粒子」の存在を。
バリオンの一つ中性子は単独では極めて不安定な粒子で、平均寿命15分で崩壊して陽子になる。実は中性子の崩壊過程は2種類ありそれぞれ寿命が違う。なんとそのうちの一つは「暗黒物質に衝突して負電荷を奪われる反応」だという! 現在ロスアラモス国立研究所では単独の中性子を磁場の中に浮かべて崩壊過程を観測する実験を行なっている。もし、暗黒物質が本当に宇宙を「食らう」存在なのだとすれば宇宙の将来は…
反論
たとえ直接見ることができなくとも観測によりその存在は確実視されている暗黒物質であるが、これに対する反論もある。そのひとつは宇宙を支配している力が重力よりも電磁気力の方が強いとするプラズマ宇宙論だが、これは観測事実とそぐわない事象があるため、宇宙論の世界では異端視されている。
もうひとつはニュートンの距離の自乗の反比例則を修正することで観測事実に合わせようという修正ニュートン力学。これは学会でもそれなりの支持をうけている。また、アインシュタインの相対性理論の前提である時間と空間を合わせた時空という概念を見なおして時間と空間を別々に取り扱おうという理論もあり、これもそれなりの支持を得ている。
更なる謎
研究が進んでいる暗黒物質だが、現在では更に大きな謎が明らかになりつつある。
暗黒物質もまた、宇宙の大半を占める謎の「暗黒エネルギー」のほんの一部にしか過ぎないと分かってきたのである。(ぐっ・・・静まれ、俺の右腕よ!)この正体が明らかになれば、宇宙の謎を解く大きな鍵となるだろう・・・う、しまったヤツラに嗅ぎ付けられた、これ以上はもうm
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