最高裁判所裁判官国民審査とは、最高裁判所裁判官を罷免するかどうかを国民が審査する制度である。。
概要
最高裁判所裁判官の任命後、初めて行われる衆議院議員総選挙の際に実施される。その後は、10年経過した後に行われる衆議院議員総選挙の際にさらに審査を行い、職務に適切かどうか、国民が直接意思表示できる。国民審査とは、裁判官ごとに行われ、有権者は辞めさせたい意思があれば×印を、なければ何も記載せずに投票する。罷免可が罷免不可の票数を超えた場合、その裁判官は罷免される[1] 。
この制度は、最高裁判所の地位と権能(特に違憲審査権)の重要性にかんがみ、アメリカ合衆国のミズーリ州など若干の州で行われていた制度にならって定められ、裁判官の選任に対して民主的コントロールを及ぼすことを目的としている。
審査の性質はリコール制度(解職請求制度)なのか、内閣の最高裁判所裁判官任命を国民が確認する意味なのかは、判断が分かれる。
投票方法について
国民審査は、現行法上、罷免を可とすべき裁判官に☓印を付し、そうでない場合には何も記入しないという投票方法によっているが、その方法には、たとえば、罷免の可否について不明の者の票を罷免を可としない票に数えることになるなど、いくつかの問題点がある。最高裁は、国民審査の性質はリコール制度であることを理由に、積極的に罷免を可とする投票以外は罷免を可としないものとして扱うことはむしろ適当である、と判示している[2] 。しかし、現行法の方式が違憲だとは言えないにしても、信任は◯、不信任は☓、棄権は無記入というほうがより適当である、とする意見は有力である。
実情
国民審査の制度は、憲法の規定に則り、衆議院議員選挙と同時に全国的に行われているが、昭和24年の第1回からこれまで23回、延べ172人が審査を受けたが罷免された例はないなど、制度の本来の趣旨は必ずしも生かされてきていない。よって、廃止すべきであるという見解もある。
しかし、近年は多くはないものの、新聞紙上で最高裁判所裁判官についての経歴を報じる事も増えつつあり、国民審査制度を活用する転機になっているともいえる。
批判・改善案
現行は、最高裁判所裁判官の任命後、初めて行われる衆議院議員総選挙の際に実施される。その後は、10年経過した後に行われる衆議院議員総選挙の際にさらに審査する、となっており、なおかつ裁判所法で定められた定年が70歳であるので、任命が60歳以上の場合は、実質1回しか審査を受けないことになる。法律上は40歳以上であれば任命可能なものの、実際に歴代の最高裁判所裁判官任命はほとんどが60代以上で、最年少が51歳のため、50歳以下で任命されたものはおらず、1963年1月31日以降は全員が60代である。よって過去に二度以上の審査を受けた最高裁判所裁判官は6人しかいない。
また、衆議院議員選挙と同時に行われるため、解散権が内閣に存し、ある程度裁量的に行使できるとされている現状では、国民審査自体も不定期に行われる。そのため、事前にどの程度の人物がどのような判決について審査を受けるか不透明であり、チェック機能が十全に働きにくくなっている。
改善案としては、衆議院議員選挙と同時にするというのを変える案、参議院選挙と同時にする案、最高裁判所裁判官全員を毎回審査する案等がある。
裁判官についての情報
裁判官の経歴は、最高裁判所のページで公表されている。また、国民審査期間中は、審査公報と呼ばれる衆院選の選挙公報と同様の経歴情報と各裁判官がどのような裁判に関わり、どのような判決を下したかが記載されたものが公表される。
元最高裁判所裁判官の声
- 山浦善樹 - 「最高裁裁判官15人の上司は国民。国民の皆さんへのあいさつだと思って公報に考えを書いたんだ」、「弁護士として、依頼者の息づかいを感じながら一人一人と向き合ってきた。最高裁は、私のような人をむしろ欲しているんじゃないかと思った」。夫婦別姓違憲訴訟(平成27年12月16日最高裁判決)では、合憲とする多数意見(10人)に対し、違憲(5人)の立場を表明した。「別姓にしたいけど相手の親の顔色をうかがい、言い出せない人が世の中では大半だろう。裁判に訴えてくるのは大変なこと」。「みんな迷いながら裁判をしている。時代が変わりメンバーが変われば結論も変わりうる。最高裁の裁判も結局、人の営みなんだ」[3] 。
実施された国民審査
参考になるサイト
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公式生放送
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関連項目
外部リンク
脚注
- *■最高裁判所裁判官国民審査とは?
- *最大判昭和二十七・二・二〇民集六巻二号一二二頁
- *「憲法の番人」最高裁判事、貴重なチェック機会
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