有限会社とは、日本にかつて存在した会社の形式の一種である。
概要
有限会社の要件を以下に列挙する。
- 出資者が全て自社の社員であり、かつ50人以下である事。
→ 社員でない者から出資を受けてはならないと言う訳ではない。出資を受ければ、雇用関係を結んでいるかとは関係なく、その人は(出資に対する権利を得るという意味での)社員に自動的になる。
ただし、「出資している人」が50人を超えてはならない。出資した持分を分割して他人に譲る等してもしこれを超えてしまった場合、譲渡が法によって無効とされる場合もある。 - 資本金が300万円以上である事。
→ 株式会社は1000万円以上。 - 株式会社の株式のような、出資に基づく証券を発行していないこと。
- 取締役が1人以上いる事。
→ 取締役を置く事自体は会社としての基本だが、株式会社は取締役3名・監査役1名が最低でも必要で、殆どの場合その中から代表取締役を選出するのに対し、有限会社では取締役1人がいれば良い。
大まかに言えばこの5点を満たした組織が、所定の届出・手続きを行えば法的に有限会社として認められ、活動が出来るようになる。
株式会社と比較して、小規模の企業を前提としているため、出資は内部の者からのみで構成され、社員の人数も制限されている。
「有限」の由来もここからくる。
多くの有限会社は、少数の出資者(しばしば特定の一人)と、雇用された(従業員と言う意味での)社員で構成されている。
出資者である一人が組織を運営する上での長であると共に、経営の方針を決める出資者としての長も兼ねる、いわゆるワンマン経営になる事が多い。
もちろんワンマン経営は必ずしも悪いものではない。
多数の株主の総意によってのみ方針が決まる株式会社は、一時的な業績悪化があったりした場合、経営に詳しい経営陣が「すぐに上向きになる」と言う見通しを持っていたとしても、株主がそれに納得しなければ方針転換せざるを得なくなる。
しかしワンマン経営ならば社員が納得しようがしまいが、経営者が一時的な業績悪化があっても方針転換しないと決めていればそれで済む。
有限会社の廃止
小規模で、時に一族による身内経営が少なく無い日本の社会に有限会社はよく適合するものと考えられての制度創設だったが、実際はそうではなかった。
株式会社と有限会社を比べた場合、株式会社の方が単純に規模が大きい会社である事が多かった。
規模が大きい会社と言うのはつまるところ業績の大きい、信用出来る会社と言う図式が成り立つと言っても過言では無いため、ある仕事を発注する企業を複数の中から1社選ぶ場合、有限会社であるという理由で選択肢から外すといった事も少なくなかった。
そういった背景のために、有限会社の規模でありながら、無理に株式会社の形態をとる企業が増えてくる。
しかし株式会社になる目的は「株式会社」と言う肩書きだけであって、有限会社特有の「少数の出資者の出資だけで成り立つ」「出資した事による権利(株式)の譲渡の制限・禁止」「株主(社員)全員による総会を開かず、上層の経営陣だけで方針を決定する」と言った実態は殆ど変わっていなかった。
株主総会を開く事や、株式を自由に譲渡出来る事は株式会社であれば必須用件であるため違法なのだが、実情を踏まえて法律の方が特別法を定めてこれを黙認するという方向で折れるという状態になる。
こうなると、「有限会社」と「無理に株式会社の形態をとっているだけの実質的有限会社」では資本金の最低額が違うだけで他は全く同じと言っていい状態のため、有限会社と言う制度がある意味が無いという事で、2006年5月1日をもって有限会社の制度を廃止した。
既存の有限会社は
有限会社そのものが廃止された事により、既存の全ての有限会社は、自動的に株式会社になる。
株式会社になるので、出資額に応じた株式を発行すること、取締役と監査役を置く事、株主総会を開くようにする事などが必要になってくるが、株式会社としての要件を満たす体制に変更出来るまでは営業を許可されない・・・と言う訳ではない。
体制を変更しないまま営業を続ける事も可能だが、以下のような制限がかかる。
これらの制限のもと、有限会社の体制のまま営業をしている会社の事を「特例有限会社」と言う。
当然だが、逆にれっきとした株式会社が特例有限会社であるかのように間違えられる会社名を使う事も出来ない。
ちなみに、かつてニコニコ大百科を運営していた未来検索ブラジルは有限会社である(2003年4月10日設立)。
上記で言う「特例有限会社」に該当するため、会社名を表記するときは必ず「(有)未来検索ブラジル」または「有限会社未来検索ブラジル」と表記する。
今から会社を作る場合
当たり前だが、今から新規に会社を作る場合、有限会社として設立する事は認められない。
株式会社として設立するほか、有限会社の廃止と引きかえに新設された「合同会社」として設立する方法もある(本来の有限会社が想定していた「小規模な会社の設立」にも向いているとされる)。
詳細は株式会社の記事を参照。
関連項目
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