李下に冠を正さずとは故事成語の一つ。
概要
【古楽府・君子行】に見える故事成語の一。「李下に冠を正さず、瓜田に履を納れず」とも。
書き下すと「君子は未然(みぜん)に防ぎ、嫌疑(けんぎ)の間(かん)に處(お)らず。瓜田(かでん)に履(くつ)を納(い)れず、李下(りか)に冠(かんむり)を正さず。」となる。現代語にすると「君子は人から疑われるようなことを未然に防ぎ、疑わしい振る舞いをしないものだ。瓜畑で靴をはき直すためにしゃがんでいれば瓜泥棒と疑われるし、スモモの木の下で冠を直そうと手を伸ばせばスモモ泥棒と疑われるだろう」というような意味である。
楽府(がふ)とは漢代に設立された、民間の詩歌を収集する役所で、後に収集された詩歌を指すようになったが、「李下に冠を正さず」はそうして収集された「君子行」と呼ばれる作者不明の楽府詩の一部である。
「君子行」は当時から広く流布していた、一種の処世訓を示した民間歌謡であったとされており、現代で言えば書店に平積みされているビジネス書の類に相当するようなものであったと考えればわかりやすいかもしれない。
また漢代の「列女伝」にも、「経瓜田不納履、過李園不整冠」という一節があり、君子行とどちらが成立が早いかは定かでないが、当時の人々によく知られた言回しであったことがうかがえる。
関連項目
- 故事成語
- 直に冠を被らず
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