概要
東京都区部(東京23区)を管轄する消防本部であり、区自治体の連合体としての東京都が区に代わり設置している。よって東京都の機関ではあるが、区の市町村としての役割を代行しているため区のみを本来的な管轄としており、また都道府県としての役割ではない。
他の市町村の消防本部と同じように、消防事務委託制度により本来の管轄地域外である多摩地域29市町村も請け負っている。
消防組織
1948年(昭和23年)にそれまでの『内務省警視庁消防部』から独立する形で「東京消防本部」として創設され以後、拡充を重ね2016年(平成28年)4月時点で以下の陣容となっている。
- 職員:3360人
- 消防署:18ヶ所(消防出張所:78ヶ所)
- 消防車両:600台(内ポンプ車:164台、救急車:86台、はしご車:21台、救助工作車:20台etc)
- ヘリコプター:2機
- 消防艇:2隻
- 予算:417億849万円(平成25年度)
- 職員:1782人
- 消防署:11ヶ所(分署:1ヶ所、消防出張所:35ヶ所)
- 消防車両:286台(内ポンプ車:72台、救急車:44台、はしご車:21台、救助工作車:10台etc)
- ヘリコプター:1機(+1機)*
- 予算:236億6400万円(平成25年度)
※いずれも公式HPから引用
- 職員:3506人
- 消防署:25ヶ所(消防出張所:64ヶ所)
- 消防車両:399台(内ポンプ車:152台、救急車:72台、はしご車:29台、救助工作車:25台etc)
- ヘリコプター:2機
- 消防艇:2隻
- 予算:379億1718万円(平成25年度)
(+1機)*は総務省消防庁からの貸与
東京消防庁が本来の管轄である東京都区部(東京23区)に加えて消防事務委託による+29市町村を管轄しているのに対し以下の3本部は複数の市町村ではなく1市のみを管轄している違いがあるとはいえ、東京消防庁がずば抜けて居るのがわかる。
なお、あくまで東京都区部(東京23区)の消防本部であるため、消防事務委託を受けていない稲城市と東京都島嶼部は管轄していない(近隣応援協定はある)。委託のない稲城市と東京都島嶼部が本来の消防制度の原則であるが東京都においては逆転している。
組織
首都・東京の防災の要ゆえに独自性の高い専門部隊を多く擁している。その上方単位として管轄地域を10地区に分けている。
方面 | 管轄地域・備考 |
第一方面 | |
第二方面 | |
第三方面 | |
第四方面 | 新宿区、世田谷区、杉並区 |
第五方面 | 豊島区、文京区、北区 |
第六方面 | |
第七方面 | |
第八方面 | |
第九方面 | |
第十方面 |
指揮隊
災害現場において直接対応は行わないが現場の情報を集約・分析してより効果的な対応を消防隊、救助隊、救急隊へ指示・統制する部隊。東京消防庁では災害規模に応じて3段構えの指揮隊を編成している。
指揮隊 | いわゆる『所轄』の指揮隊。 所轄規模では『大隊長』のもと活動を行う。 |
方面指揮隊 | 複数の署大隊が出動する場合、各方面本部 毎に配置された指揮隊が活動する。 |
統合指揮隊 | 2019年に編成された本部直轄指揮隊。 元々は『警防部指揮隊』の名称で編成 されていた。 大規模災害(テロを含む)が発生した場合は従来 東京消防庁本部の総合指令室で指揮を一本化 して対応していたが通常の災害対応が疎かに なる懸念があったことに加え、2020年東京 オリンピックによるテロの懸念も増大したこと から、指揮権限を拡大し大規模災害対応に専念 する指揮隊。 実際に対応する場合は本部隊とHRを中心に 『統合機動部隊』として活動する。 |
消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー、HR)
1996年(平成8年)に編成された特別高度救助隊のパイオニア。阪神淡路大震災の経験を元に従来から編成されていた特別救助隊の上級部隊となる震災対応部隊として編成されたが震災以外の災害にも出動する。2013年(平成25年)春時点で以下の5隊が編成されている。
任務 | |
震災対応 | |
NBC対応 | |
震災+大規模水害対応 | |
8HR(立川市) | 震災対応+NBC対応 |
9HR(八王子市) | 震災+土砂災害対応 |
そして以下の実働部隊が編成されており、災害に応じて一種の諸兵科連合を他部隊と構成して対処する。
部隊名 | 特色 |
機動救助隊 |
基本的に救助車2台(通常型、震災対策型)を装備し |
機動特科隊 |
パワーショベル、ブルドーザー、クレーン車等の重機で |
機動科学隊 | |
機動救急救援隊 |
即応対処部隊
2020年(令和2年)発足。大地震や風水害時は交通網や通信網が寸断されて必要な現場に進出が遅くなって人命救助に支障が出る事から字の通り即応対処=迅速な救助活動を行うために編成された。
現在は以下の実動部隊が編成されている。
即応情報隊 | ドローンや全地形活動車を用いて 情報収集を行う偵察部隊。 |
即応救助隊 | 実動部隊。後述の高機動救助車や 重機、特殊ボートを運用する。 |
特別救助隊
1971年(昭和46年)に発足。元々は戦前の警視庁消防部時代に編成され、戦時中の廃止を経て戦後に復活させた『専任救助隊』が原型。
ただし、この部隊は火災現場での救助が主目的だったため交通事故や化学災害の対処は厳しかったため、より幅広い災害での人命救助部隊として編成された。
発足当初は1隊のみだったが2023年時点では23隊編成され特別救助隊を含む他部隊との兼任を含めて『水難救助隊』が13隊、『山岳救助隊』が4隊編成されている。
因みに大規模な高所火災への対応として1974年(昭和49年)から1995年(平成7年)にかけて『はしご特別救助隊』が編成されていた[1]。
特別消火中隊(A-one Fire Unit)
2004年(平成16年)に発足。通常の消防隊はベージュの防火服、銀色の防火帽を着用しているのに対し特別消火中隊は黒色、金色の防火帽を装備して消火活動にあたる。多様化する火災に対応するため編成された。
ポンプ車2台(通常型+水槽付などの特殊ポンプ車)で編成が基本。
化学機動中隊
放射性物質や有害化学物質の漏洩、硫化水素もしくは練炭がらみの災害=NBC災害に対応する部隊。地下鉄サリン事件のニュース映像に出てくる『オレンジ色の防護服を着た一団』は彼らである。
航空隊
1967年(昭和42年)に発足。2014年時点でヘリコプター8機を装備(内1機は総務省消防庁からの委託)。3隊編成で2隊は立川市の立川広域防災基地、1隊が江東区の東京へリポートに配置されている。
発足当初からフランス製のヘリコプターを装備しており、ドーファン、ピューマ系列が半々の保有数だったが発足50周年となる2017年からドーファンの後継機としてイタリア製AW139の配備が行われた。
航空消防救助機動部隊(エアハイパーレスキュー、AHR)
2016年に発足。それまでの航空隊には救助隊員の配置がなく、災害時にはHRを含む別部隊と連携して災害対応にあたっていたがより迅速な対応を目指して編成され、以下の新装備も配備された。
ヘリ消火装置 | 後述の高所消火装備の改良型で 放水銃が1門に削減された代わりに 砲塔式を採用したことで放水範囲が 広がった。 |
大量救出用ゴンドラ | 着陸しての救助が出来ない場合、 従来では要救助者を1人づつ釣り 上げていたが効率が悪かったため、 ゴンドラを吊り下げて効率化を図った。 |
車両吊り下げ装置 | AHR発足にあたって配備した専用 車[2](スズキ・ジムニー)を吊り下げ 輸送するパレット+スリングベルトセット |
同時降下用装置 | 字の通り、ヘリコプターの両サイドから 救助隊員をロープ降下させる装備。 |
編成は東京ヘリポートに本隊、立川広域防災基地に多摩分隊が配置されている。
救急機動部隊
2016年に発足した本部直轄の救急隊で2019年に更なる増強が行われた。NBC災害や感染症、更に外国人旅行者への対応も想定して編成されている一方で、時間帯によって配置箇所を代えてしまうのが特徴。
具体的に日中は東京駅(第一方面)と渋谷区(第三方面)、夜間は新宿駅(第四方面)、港区(第一方面)の待機所に配置されている。
音楽隊
1949年(昭和24年)に発足。発足にあたっては軍楽隊経験者(帝国海軍19名、帝国陸軍2名)を採用した。
消防署新設などの関連イベントに留まらず、東京オリンピック(1964年)開会式など都内の大型イベントで演奏している。
消防車
前述のとおり、首都・東京の防災の要である故に独自性の高い消防車を多く配備している。
但し、国からの災害・テロ対策の為に国家予算で整備・貸与された車両も複数運用している。
救助車
|
いわゆる「救助工作車」。後述する各種工作車との兼ね合いからこの表記となる。 1969年の特別救助隊発足当初からいすゞ・フォワードを使用している。 また、基本形は各種救助機材搬送に特化しているが40年を越える特別救助隊の歴史上ではポンプを積載して単独で消火能力を持つ型、クレーンを装備した型、更に空輸[3]による海外派遣を想定して車高を低くした型が存在した。 なお、静画に描かれている救助工作車の一般的な『荷台に稲妻マーク[4]』は東京消防庁が発祥である。 なお、3HRを除くHRに配備された震災対策用救助車は日野・レンジャー(3型)、8HRに配備されている4型はトヨタ・ダイナからいすゞ・エルフに移行している。 |
はしご車
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40mと30mの[5]、25mの屈折梯子車、22mの屈折放水塔車を装備する。 日本最長は54.7mとなるが東京はそれ以上のビルが多い。しかしそれ以上に中高層のビルが多く道も入り組んだ地域に存在するため取り回しを重視して30mが多く配備されている。 |
2軸仕様MH |
日野自動車と大手消防車メーカー『モリタ』が共同開発したMHを2軸化した東消向けはしご車。 |
ボーリング放水車 |
高所放水車の一種でビルや倉庫の壁に10㎝台の穴を開けて其処から注水する車両。1970年代から1990年代にかけて配備。 |
大型化学車 |
3HRを除く全てのHRと第二方面蒲田署(空港分署)、第七方面深川署(豊洲出張所)に配置。 総務省消防庁の規定では概ね2tの化学消火剤+強力な消防ポンプを備えればよいとされているため、 また、 第二方面では航空機火災用に近接して消火を行う『装甲化学車』も並行して配備していたが2014年に通常型の大型化学車2台に一本化した。 |
消防活動二輪車 (クイックアタッカー、赤バイ) |
消防用オートバイ。 しかし、阪神大震災を教訓に機動力の高さを再評価され、発災年の1995年にバイク2台+水槽付ポンプ車1台の体制で復活を遂げた。 |
工作車 |
災害活動の障害になる車両や故障した消防車を牽引するレッカー車。 |
通信工作車 |
各種通信機材を搭載し、災害で通信網が破壊された場合に独自の通信網を構築したり、広域応援時に現地と消防庁本局との通信を行う。 |
(防災機動車) |
各方面本部に1台配備している指揮支援車両で方面指揮隊が使用する。 |
補給車 |
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レスキュータワー車 |
1974年から1988年まで配備されていた特殊車両。 |
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救出救助車 (耐熱救助車) |
70年代から震災対策として配備。
ドイツ製装甲車をベースにし人命救助に特化したものであるが実戦経験はなく、防災訓練で実際に炎を突破するのが活躍の場であった。 |
ウニモグトラックをベースとし、放水銃とショベルを備え用途を広げていた。そして2000年の三宅島噴火災害で実戦を経験した後に退役した。 |
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装軌式を採用し不整地突破能力を高めた国産車両だったが使い勝手が悪かったのか東日本大震災にも使用されないまま退役することになった。 |
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フロントポンプ式化学車 |
90年代後半に1台だけ製造された通常型化学消防車。 ちなみに警視庁消防部時代にはアメリカから輸入されたフロントポンプタイプのポンプ車が配備されていた時期があり現在は消防博物館で見学することが出来る。 |
啓開ポンプ車 |
阪神大震災後に震災対策用として配備されたポンプ車。 |
救援車 | |
無人走行放水車 |
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救出ロボット (ロボキュー) |
3HRに配備されていたロボット。 |
福島第一原子力発電所事故で投入されたHRの特殊車両だが本来は震災時等の大規模火災用に開発された。 水道管が地震で破壊される=消火栓が使えないという阪神大震災の経験から水害用の排水ポンプをベースに開発された(実際、送水より排水の方がより大量に水を出せる)。故に水源は海や湖沼、大川となる。 送水車と10㎝級のホースを搭載するホース延長車で1セットとなる。 なお、初期型はドイツ製のウニモグトラックベースだったが現在は全て国産車[11]となった。 ちなみに2HRの大型資材搬送車にホース延長コンテナが設定されている他、7方面(向島署)の通常型資材搬送車にポンプ出力、ホースを半減して1セットに纏めた遠距離送水コンテナが設定されている。 |
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資材搬送車 (貨物車) |
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整備工作車 | |
特殊救急車
2型 山岳対応型 |
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みやこどり |
東京消防庁が保有する消防艇の筆頭。 |
おおえど |
2018年に導入された新型消防艇。 |
ゆりかもめ |
航空隊が導入しているピューマ系列大型ヘリの筆頭。 |
広報施設・イベント
東京消防庁では以下の4つの広報施設を無料で解放している。ただし、体験施設を利用する場合は予約の必要がある。
施設名 | 展示内容 | 住所・備考 |
を用いて展示 |
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池袋防災館 |
起震、消火器訓練、応急手当等 の体験施設を主体とした展示 |
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立川防災館 |
基本的に池袋と同様の展示 |
(立川広域防災基地内) |
本所防災館 |
尤も新しい防災館。従来の防災館 も有する。 |
(本所消防署に併設) |
また以下の公開イベント・訓練を定期的に開催している。以下のイベントを観覧するに当たってはマナーを守って観覧し訓練の邪魔をしないことを推奨する(実際マナーの悪い撮り鉄ならぬ撮り消が出てきている)。
イベント名 | 備考 | 日時 |
消防出初式 | 江東区豊洲訓練場 | 1月6日頃 |
合同総合水防訓練 | 管轄下の特別区・自治体 | 5月末 |
水の消防ページェント | お台場 | |
東京国際消防防災展 | 東京ビックサイト | 1998年から5年ごとに開催 |
関連作品
動画
- 福島第一原子力発電所事故での出動・活動
この対処に投入された消防車の一部は福島に残され放射線量の高さで廃車になったものもある。
静画
IF作品
関連項目
- 東京都/警視庁
- 消防/消防車/特別高度救助隊/緊急消防援助隊
- ホテルニュージャパン火災/兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)/新潟県中越地震/東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)/福島第一原子力発電所事故
外部リンク
脚注
- *はしご隊自体はその特性上、特別救助隊候補、もしくはOBの消防官で編成されているので予備救助隊の側面がある
- *本隊に配置。ちなみにこの他に通常型救助車、ポンプ車、救急車も配置されている(ヘリによる空輸不可)
- *想定されていたのは軍用輸送機ではなくB-747=ジャンボ機の貨物機だったが実際の出動はなかった
- *実際はツバメがモチーフ
- *国産梯子車と海外製梯子車を並行配備
- *少量の水を圧縮空気で噴射して消火する装置。本来は小規模火災用だが6連装銃身から一斉発射して早急な火災消火を狙った
- *当初インパルス放水銃だったが後に携帯式CAFSに切り換え
- *かつては第一方面にも配備され二台体制だった
- *この中には緊急消防援助隊向けの貸与車両も含まれる
- *ホイールローダーと小型ドラグショベルが存在
- *初期型は悪路踏破性を重視してしゃくれ状キャブが特徴の除雪トラック用シャーシを使っていたが後にダンプカー用3軸車に変更
- *8HRに配備されていた時期もあった
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