なお、本稿では8090系のみなとみらい線乗り入れ対応用に製造された先頭車グループである8590系(デハ8590形・デハ8690形)についても解説する。
概要(8090系)
1980年に登場した国内初の本格的軽量ステンレスカーで、8000系と同様の20m4扉のオールロングシート車両である。
1978年に試作された軽量ステンレス構造の、8000系デハ8400形(後にデハ8200形に改番編入)をベースにコンピュータによる合理的な設計(有限要素法による強度解析を初めて鉄道車両に導入)で、従来のオールステンレス車両より車体で24%・編成全体で8%の軽量化を達成している。
この軽量化により、従来の4M2T編成と同程度の出力でさらにサハ1両を増やし4M3T編成を実現することが可能となった。
1985年までに8両編成10本80両が登場したが、調子に乗って作りすぎた本数が増加したために下2桁が90番台だけでは収まりきらずに80番台に突入する異例のデフレナンバーが発生している(同じ8000系列の8500系でもデハ8700・8800形でそれぞれ「07xx」「08xx」のデフレが起きている)。
当時の東急としては珍しく切妻では無く、特徴的な3面折妻の前面で登場した8000系列唯一の非貫通先頭車で、これが後々の8590系登場の一因となっている。
デザイン面の特徴としては、車体側面にも2本の赤帯によるアクセントが入れられた他、車体形状が下膨れの形状となっている。
昔、軽量化を狙って製造された旧5000系も下膨れの形状だったことから、歴史は繰り返すと言えるかもしれない。
登場当初は東横線でもっぱら急行用として運用された(当時は急行と各停で運用が分かれていた)。
概要(8590系)
1988年から89年にかけて、当時具体化しつつあったみなとみらい線(地下線)乗り入れに対応するために製造された制御電動車のデハ8690形・8590形を指す。
便宜上編成全体をさして8590系と呼ばれることが多いが、中間車は8090系である(この制御電動車も8090系とも言える)。
クハ8090形をベースに8両編成で6M2T編成として出力を確保するため、また地下区間での非常脱出口を確保するため貫通扉付きの制御電動車として5組製造された。
既存の8090系と合わせて組み換えが行われて、8590系は8両編成5本として引き続き東横線で、8090系は5両編成(3M2T)10本となり大井町線に転属となった。
基本的には8090系と変わらないが貫通式先頭車となったことで運転台周りは8500系がベースになっている他、自動放送装置が設置された。
2000年代の一時期、東横線の運用数削減に伴い8両編成3本が田園都市線に転属(10両2本に再組成。余った4両は休車)して運用されたが、みなとみらい線開業までに東横線に戻り、全編成が当初の目的であるみなとみらい線乗り入れを達成した。
ところが、5050系の増備により東横線を追われ、5両編成(4M1T)3本と10両編成2本に組み直され、それぞれ大井町線と田園都市線に転属となった。余った車両は8090系初の廃車となっている。
運用
現在は8090系が大井町線、8590系は大井町線と田園都市線で運用されている。なお、大井町線所属車はパンタグラフが菱形からシングルアームに変更されている。
大井町線の8090系と8590系ではMT比の違いから加速度に差が出ている(8090系3.0km/h/s・8590系3.3km/h/s)。
また、2006年の田園都市線直通急行運転開始に合わせ8590系全車と8090系の半数は前面帯を赤と黄色のグラデショーン(通称大井町色)に変更。合わせて各駅停車の際の行き先表示に「各停」の表記を追加し、車体には(田園都市線内での誤乗防止の観点から)大井町線をアピールするステッカーが取り付けられた。
後に8090系の前期車にも行われ、その際に8090系は行き先表示がフルカラー&白色LEDとされた。この際、8090系初期車はライトが帯に中途半端にかかる残念な状態になってしまっている。
さらに2009年以降、東横線から9000系の転入が相次いでおり、8090系は廃車が進んでいて、2013年3月現在ついに残り2本(8099F・8081F)となっている。
なお、初期顔の編成は既に全編成が運用を離脱してしまった。
また、2012年9月にはやはり9000系転入により、8590系としては初めて大井町線の8692Fが運用を離脱した。さらに2013年2月に、8693Fも運用を離脱し、大井町線の8590系は残り1本となってしまった。
なお、既に東横線から全ての9000系が撤退し、改造待ちの状態である事から、大井町線から8090・8590系が全廃になる日は近く、既に秒読み段階まで来ていると言っても過言ではない。
2013年ゴールデンウィーク、ついに大井町線に残る8090系2編成にさよならHMが取り付けられた。
8081Fは両先頭車とも同じHMだが、8099Fにはそれぞれ別のデザインのHMが付けられたため、計3種類のHMが取り付けられたこととなる。
その後、5月16日に8081Fが、同月24日に8099Fが運用を離脱し、8090系の営業運転が終了した。
また、8691Fも6月15日をもって営業を終了し(17日に恩田へ回送)大井町線の8090系は形式消滅となった。
田園都市線の8590系は東武線に直通しないいわゆる「サークルK編成」となっていて、運用が限定されている上に少ないため半ばニートレイン状態になり下がっている(一応直通準備工事はしているのですが…)。
そのため、運用は平日の朝中心で日中は中々お目にかかれない状態が転属以来続いている。
譲渡
廃車になった8090系が3両編成となって秩父鉄道に譲渡されている。秩父では7500系を名乗っていて、同じく元8500系の7000系とともに1000系(旧101系)を追い出しつつある。
前面帯は緑と黄色(レモン色?)のグラデーションに、側面帯は緑色にされている他、パンタグラフは菱形に戻したうえで増設されている。また、片方のクハは制御電動車化されており(機器はデハ8290形から流用)、2M1T編成となっている。
さらに2012年12月、8089Fのうち、秩父鉄道7500系化で過剰になったデハ8200(ただし機器をクハ8090に供出しているので電装解除状態)・デハ8400に東急テクノシステム長津田工場で先頭車化改造やパンタ増設などの魔改造が施され、やはり秩父鉄道の7800系として出場した。2013年3月16日のダイヤ改正で営業を開始したが、秩父鉄道従来車の3連から2連に変更になっており、末端区間での運用を担う事となった
・・・のだが、浦山口~影森間の上り勾配が上れない、という何ともお粗末な事態が多発し、営業開始後すぐに運用を離脱してしまった(これについては単に出力不足だった説、SLパレオエクスプレスの油を踏んだことによる空転説が存在する)。
現在は運用を再開している模様(詳しい方情報提供を)だが、現在も東急側で追加編成の改造が進んでおり、どのような改良を施されるのかが気になるところである。
さらに2013年7月には8590系が富山地方鉄道に譲渡され、9月に運用を開始することが判明。今後の動向が注目される。
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