東方儚月抄とは、上海アリス幻樂団(ZUN氏)制作の弾幕STG「東方Project」を漫画化、小説化した作品である。
概要
「東方初の本格シナリオ」という触れ込みの企画で、内容的には「東方永夜抄 ~ Imperishable Night.」の後日談にあたるオリジナルストーリーである。本作が初登場のキャラクターには綿月依姫、綿月豊姫、レイセンらが存在する。
この作品は他の東方作品とは違い、ひとつの異変発生~解決といった一日で終わるものではなく、長期にかけて各キャラクターの行動を追ったものであるため、描かれている期間が非常に長くなっている。物語の中で数ヶ月単位で時間が飛ぶことも珍しくなく、途中で風神録の出来事も起こっていることが確認される。なお、東方緋想天での会話より緋想天の事件までには終了していることがうかがえる。
また、三誌縦断連載の形態をとっており、
- Comic REXにて連載された「東方儚月抄 ~ Silent Sinner in Blue.」(漫画)
- キャラ☆メルにて連載された「東方儚月抄 ~ Cage in Lunatic Runagate.」(小説)
- まんが4コマKINGSぱれっとにて連載された「東方儚月抄 ~ 月のイナバと地上の因幡」(4コマ漫画)
の三種類が存在する。
ちなみに、東方儚月抄の熱狂的なファン(信者)はボウゲッシャーと呼ばれる。
漫画版『東方儚月抄 ~ Silent Sinner in Blue.』
月刊ComicREXにて連載されていた漫画。作画は秋★枝、原作はZUN。通称「秋枝月抄(あきえだげっしょう)」。
単に「儚月抄」と言った場合は主にこの作品を指す、中核的な存在。
再度の月侵攻を企てる八雲紫と彼女に先んじて月へ行こうとするレミリア、さらにその周辺の様々な思惑と同時期に発生している月内部の混乱を描いている。
2007年7月号から2009年5月号まで連載。単行本は上巻・中巻・底巻の三冊。
ComicREX11月号には、単行本収納BOXが付録としてついた。
なお、日本神話の神様「大国主」が東方関連の動画に出てきた際に、やたらとイケメン扱いのコメントが流れる一因となっている作品でもある。
元々の日本神話の中でも女神に一目ぼれされたり、傷ついた兎を助けたり(「因幡の白兎」)とイケメン的な神様ではある。しかし本作中ではさらに、
てゐ 「大変な美男子 兎達の憧れ」
霊夢 「大国主命とかどうかしら? 美形だって言うし」
藍 「兎たちがいつも歌にしている神様ですか? あいつらのアイドル的な」
と、イケメンであることを強調された言及が何度もなされている。
上巻
第一話から第七話まで収録。
表紙は霊夢と魔理沙。裏表紙はロケットをラジコン操作するパチュリー。背表紙はロケットの上部(上筒男命)。
巻末にTOKIAMEとあらたとしひらより上巻の発売を祝うメッセージが寄せられている。
また、「儚月抄」の単行本の中でCDが付いているのはこの巻のみ。
第一話 賢者の計画
紫が神様の力を借りる方法について霊夢に稽古をつけ始めた。
最近紫の様子がおかしいので、何か企んでいるのではないかと霊夢は心配する。
近く起こるであろう面倒事に備えて、一人でも修行をし続けることにした霊夢。
大国主命の力を借りるのはどうだろうか(美形だって言うし)などと考えていたところに、
一匹の妖怪兎がふらふらと現れ、倒れこんだ。
永遠亭では毎月満月の日に、薬草の入った餅を搗き捧げる例月祭が行われていた。
これは月の都から逃げ続けていた輝夜、永琳、鈴仙たちが自らの罪を償うために行っている行事なのだが、
餅を搗く兎達は本来の目的とは違う、ダイコク様に感謝する歌を歌いながら搗いていたので、鈴仙は嗜めた。
その月では不穏な噂が飛び交っていたようだ。
「新しい勢力が生まれて月を支配しようとしている」「新勢力により人間が表の月に刺した旗が抜かれた」
等の噂が月の兎達を混乱させているらしい。
本来月の都の人は表の月を弄ることはできないので、その表の月の旗が抜かれたということは、
増長した月の民同士の争い「月面戦争」が起こることを意味するのではないかと輝夜と永琳は考えていた。
紫は式神の藍達を使って協力者への呼びかけと情報を集めていた。
藍からの報告を受けた紫は妖しい笑いを浮かべ、「第二次月面戦争」を始めることを宣言した。
第二話 玉兎の手紙
霊夢は妖怪兎を神社で休ませ、医者も呼ぼうとしてあげたが、ちゃっかり兎が持っていた羽衣を拝借していた。
兎は羽衣を取り返すと、霊夢が寝ている間に、謎の呼び声に導かれて神社を立ち去った。
兎は月の兎、玉兎であり、地上の者には発音することのできない名前を使われ、永琳に呼び出された。
玉兎は永琳の正体を聞くと、自分を匿って欲しいと言い出す。
月では不死の薬を飲んで幽閉された罪人の名前を冠する月面探査計画、「嫦娥計画」に対する恐怖や、
新しい勢力が月で革命を起こそうとしているなどの流言飛語で混乱の中にあった。
玉兎は嫦娥の罪の肩代わりに餅を搗くことに嫌気が差して月から逃げ出したのだ。
そこで玉兎が当てにしていたのが「八意永琳の逆襲」説で、革命のリーダーとされる永琳を頼って地上に逃げてきたのだった。
永琳は自分を悪役に仕立て、月の都を混乱させている者の正体を探りたかった。
永琳は玉兎を匿うことはせず、羽衣を使って月に帰るように言うと、月の都を守るリーダーに渡すように一通の封書を与えた。
これを渡せば玉兎の逃亡罪は帳消しになるだろう。
神社で修業を続ける霊夢とそれを見る魔理沙は、月に昇っていく流れ星を観測したのだった。
第三話 紅いロケット
紅魔館のレミリアは、一ヶ月前に藍から「月の都に侵入し、めぼしい技術を奪ってくる」計画への協力を持ちかけられていた。
妖怪の数が増えたからかつてのように負けることはない、貴方のような妖怪が協力してくれるなら簡単にめぼしい物を見つけてくれる、
等の藍の言葉で興味を持ったレミリアは、「先に行って月を侵略し、紫を驚かせる計画」を始める。
パチュリーに月へ行く方法を作らせるため、咲夜に資料集めを命じると、
「たまたま」香霖堂に資料が入荷しており、いとも簡単に、
ロケットには「三段で構成された筒状のもの」が必要であるという情報を手に入れることができたのだった。
第四話 旧友の雨月
白玉楼の妖夢と幽々子は団子を食べながら雨の中秋の名月を楽しんでいた。
妖夢と幽々子は二ヶ月前に藍から「吸血鬼達が月に行くことがないように監視する」ことの協力を持ちかけられていた。
藍曰く、間違ってレミリアらが月に行ってしまったら、ただでさえ強力な月の民を警戒させ、勝ち目が無くなってしまうからだという。
しかし幽々子は、藍も理解していない紫の真意を理解したのか、興味が無いと言い放った。
妖夢もわけがわからなかったので、二ヶ月間、一人でレミリア達の監視をしていた。
そのことを幽々子に報告すると、幽々子は「あること」を霊夢に伝えるように命じる。
それがロケットの推進力になり、レミリアのロケットが完成するだろうと言うのだ。
完成させては紫に都合が悪いはずのロケットを完成させてしまおうとする幽々子の真意が妖夢にはわからなかった。
第五話 住吉計画
紅魔館のロケットは、外観は出来ていたが、推進力が見つからず完成しなかった。
パチュリーは咲夜に推進力となる「三段の筒状の魔力」を見つけてくるように命ずる。
咲夜は何のことだかわからず、霊夢に相談をするが、霊夢も全くわからなかった。
そこへ妖夢が現れ、ロケットは宇宙を飛ぶ船なので、月や空に関するものではなく、航海に関するものを探すべきだと言う。
幻想郷には海が無いので、航海に関する神様を呼んでも意味が無い、と霊夢が言おうとしたその時、答えが見つかった。
上筒之男命、中筒男命、底筒男命、三柱併せて住吉さんと呼ばれる航海の神様。
霊夢をロケットに乗せ、この神様の力を呼び出させることによってロケットは推進力を得ることができるのだった。
「住吉月面侵略計画(スミヨシプロジェクト)」はここに完成した。
第六話 三神式月ロケット
住吉三神を呼び出すための修業をする霊夢と魔理沙が神様について会話する。
神様は何分割しても同じ力を持つ。神様の宿る場所があれば無限に神様を増やすことができる。
そんな物理法則に反したことができるのは、神様、主に神霊とは精神、つまり「考え方」を示すからで、
考え方は伝播しても減らないからだという。
つまり、神様が宿るというのは神様の性格を持つこと。よって、多くの神様(考え方)を宿らせると神様同士が喧嘩してしまうのである。
ついでに神奈子のような肉体を持った神様は、自分の神霊を分霊させることで増えるのだという。(つまり本体は増えない)
霊夢は月へ行くことに面白さを感じるようになっており、魔理沙もロケットに忍び込んで月に行くつもりになっていた。
レミリア達は、ロケット発進の前祝いとして、咲夜が短時間で作ったヴィンテージワインを飲んでいた。
紫は月の都に向けて式神を飛ばしていた。
月における月の都は、地上での幻想郷と同じ関係にある。
外の世界のロケットでは月の都は見つけられない。紫の能力では別の生き物を「表の月」に連れて行くことはできない。
幻想郷のロケットならば――
式神が突然月の都への道を見失い、息絶えた。
第七話 月のお姫様
中華風な外観の建物が立ち並ぶ月の都。
永琳からの封書を渡すため、玉兎は月の都を守るリーダー、綿月姉妹の宮殿を目指していた。
入り口で門番ともめているところに、「海と山を繋ぐ月の姫」綿月豊姫が両手に桃を抱えて落ちてきた。
豊姫は玉兎を屋敷に招き入れると、妹の「神霊の依り憑く月の姫」綿月依姫に嗜められる。
二人は玉兎の話を聞くことにした。玉兎から永琳の話を聞くと、懐かしさを感じると共に、
永琳は師匠であり、建前上月の使者のリーダーとして討伐しなければならない罪人であるが、そのつもりは無いことを話す。
二人は玉兎に地上に逃げた「罰として」この宮殿に住み、共に月の都を守ることを命じ、
新しい名前「レイセン」を与えた。これは昔地上に逃げた兎の名前だった。
二人はこれでまた玉兎を束ねるリーダーに目をつけられてしまうと、自らの甘さを省みる。
しかし、綿月姉妹には多くの人手が必要である理由があったのだ。
いよいよ永琳の封書を開く二人、中の手紙に書かれていたのは――
中巻
第八話から第十四話まで収録。
表紙は豊姫と依姫。裏表紙はロケットの前に並ぶパチュリー、レミリア、咲夜。背表紙はロケットの中部(中筒男命)。
第八話 賢者の封書
依姫の率いる月の兎達は稽古をサボって噂話に花を咲かせていたり寝てたり本読んでたり餅食ってたり散々な状態で、
依姫の気配を感じると稽古を始めるのだった。
依姫から「新しいレイセン」を仲間に加えるように言われ、快く受け入れるのであった。
月の都が存在するのは月の裏側と呼ばれるが、この場合の裏表とは結界の外側か内側かという意味である。
裏側の月は穢れのない海と豊かな都の美しい星であるが、
表側は荒涼とした生命のない星として、機械の残骸や旗など穢れた人間の夢の跡が眠っている。
豊姫と依姫は、綿月の家系ゆえ懐かしく感じる海を眺めながら、永琳の手紙を思い出す。
不確かな噂が飛び交う中、二人が信用できるのは永琳の手紙だけであった。
二人は永琳の手紙が示す通り、個別に動くことを確かめるのであった。
紅魔館のロケットを見た永琳は、その完璧さに驚いていた。
住吉三神の加護を得ることは誰の入れ知恵なのだろうか。
このロケットが確実に月に辿り着くように、ある工作を施すのだった。
第十話 幻想ケープカナベラル
霊夢、魔理沙、咲夜、レミリアと妖精メイド3匹が乗り込み、外からパチュリーが謎の儀式を行う。
住吉三神の神降ろしを行い、ついにロケットが月へと飛び立った。
空飛ぶロケットを眺める永遠亭の住人達。
侵略者は吸血鬼のことだったのかと輝夜は言い、あんなロケットで辿り着くのか心配する。
そこで永琳が確実に辿り着く仕掛け、月の羽衣を貼り付けておいたことを話すと、吸血鬼が月を侵略することを望んでいるのかと問い詰める鈴仙。
永琳は、「本当の犯人を見つけ、月の都を守るために」ロケット計画を成功させようとしていることを明かす。
黒幕が誰なのかはわかりきっている。あとは綿月姉妹にかかっていた。
第十一話 青い宙を行く
パチュリーの図書館に永琳と輝夜が訪れた。
どうやって、どういうつもりでロケットを作ったのか問い詰める永琳に、パチュリーは真意を明かす。
レミリアが踊らされてることも、ロケットに月の羽衣が仕掛けてあることも、
本当に月を攻めるのを望んでいるのが紫であり、ゆえに都合よくロケットの情報が手に入ったことも、
全てわかった上でロケットを作ったのだった。単にレミリアの我儘に付き合っただけだった。
地上に残ったのは痛い目に遭いたくないからだけれども。
底の筒と中の筒を切り離し、ロケットは「普通に空気のある宇宙」を順調に飛び続けていた。
そして、ついに月に辿り着くと、海の上に真っ逆さまに墜落していった。
第十二話 豊かの海
幻想郷に海は無い。豊かの海を呆然と見つめる霊夢と魔理沙。ロケットは大破し、帰りはどうするのか。
一方レミリアは付近を探検していた。周りには桃の畑ばかり。
霊夢と魔理沙の下には長い刀を持った依姫が現れた。
住吉三神を呼び出していたのは霊夢であったことを確かめると、その刀、祇園様の剣を地面に刺した。
すると大量の刀が地面から生えてきて、霊夢と魔理沙を閉じ込めてしまった。
そこへレミリアと咲夜、玉兎達が戻ってきて、レミリアの前にあっさり逃げてしまったことを報告する。
呆れる依姫だが、間髪入れず何かの術をレミリアに放とうとする。
しかし、咲夜が時を止めて依姫の後ろを取り羽交い締めにする。驚く依姫。
咲夜が刀を地面から抜くと、霊夢と魔理沙を閉じ込めていた刀も引っ込む。
依姫は一行に月に来た目的を尋ねる。目的は何だっけ?等と呑気なことを言う霊夢達。
しかしレミリアは言い放つ。「月の都の乗っ取りだ」
依姫は不敵に笑った。
第十三話 月面の美しさ
依姫が羽交い締めにされた状態から腕に火を纏わせる。思わずひるんで手を離してしまう咲夜。
その火は全てを焼き尽くす神の火、愛宕様の火であった。
依姫の力は霊夢が最近習得した神降ろしの完成形だったのだ。
依姫は、霊夢が不正な神降ろしをしたことにより、謀反を疑われていた。
再び祇園様の剣で霊夢達を閉じ込め、その疑いが晴れることを喜ぶ依姫。
魔理沙は依姫と戦っても勝ち目がないことを悟り、降参を宣言する。
その代わり、幻想郷の「知的で美しい」決闘ルール、スペルカード戦による決闘を提案する。
精神的な戦いであれば、月で忌み嫌われている殺生をして無駄に血を流すこともない。
魔理沙は勝っても負けても大人しく地上に帰ることを約束し、それならばと依姫は決闘に乗ることにした。
レミリアは咲夜に決闘の一番手を命じた。
第十四話 金属の戦い
永琳の手紙には、依姫は豊かの海に現れる敵を迎え撃つようにと指示が書かれていた。
その敵は依姫の潔白を証明するのに役立つとも。そして、その通りになった。
依姫は火雷命を呼び出し、雨と雷と炎で咲夜を攻撃する。
咲夜が炎に包まれたかと思ったその時、咲夜は再び依姫の後ろに回り込み、ナイフを突きつけていた。
その時既に依姫をナイフで囲んでおり、おまけにルミネスリコシェで攻撃した。
しかし、依姫は金山彦命を呼び出し、ナイフを砂に変えてこれを防ぐ。
更にその砂はナイフに戻り、逆に咲夜の方に飛んでいった。
咲夜は時を止めて逃げようとするが、それを察した依姫は再び雷雨を降らす。
時は止まったものの、雨まで止まってしまい、全く身動きがとれなくなってしまった咲夜は白旗を上げた。
依姫は八百万の技があるので一人頭二つしか使わなければ399万回連戦しても勝てると豪語する。
そして二番手として魔理沙が立ち上がった。
底巻
第十五話から最終話まで収録。
表紙は紫と幽々子。裏表紙はうたた寝するレミリア、パチュリーと、それを見ている咲夜。背表紙はロケットの底部(底筒男命)。
下巻ではなく底巻なのは住吉三神にちなんだものと思われる。
第十五話 星屑の人間
魔理沙はスターダストレヴァリエやイベントホライズンで攻撃するが、
弾幕が依姫の周りで止まってしまったり、刀で切り払われてしまったりと、全く歯がたたない。
依姫は星の弾幕にあてつけて、天津甕星を呼び出し魔理沙を攻撃した。
霊夢は今回悪いのは月に攻め込んだこっちなので、負ける予感があった。
特にレミリアは一番簡単に負けるだろうと予想する。
話をしている霊夢とレミリアの下に攻撃を受けた魔理沙が吹っ飛んできた。
本気を出せとレミリアが促すと、魔理沙は得意技、ファイナルスパークを放つ。
しかしその直線の攻撃は、祇園様の剣を構えた依姫には全く通じない。
ならばと光線を二本放つダブルスパークで攻撃するが、
一方は同じように構えた剣に切り裂かれ、もう一方は剣を構えたまま呼び出した石凝姥命が創りだした八咫鏡によって跳ね返される。
魔理沙は降参し、次はレミリアの番となった。
妖夢と幽々子は湖の畔に来ていた。これからやることは一つだと幽々子が言うと、妖夢は紅魔館の家探しなのかかと答える。
幽々子はそれを聞くと笑った。
第十七話 二十七と三分の一の罠
紫と藍は賢者の海に辿り着いた。月の賢者は丁度留守であったので、待ちますかと藍が言うと、
紫は、そうではなく賢者の住処に忍び込んでめぼしいお宝を奪って来いと言う。
そんなことで千年前の雪辱を晴らし満足できるのかと藍が訊ねると、
紫は、それでいい、どうせ地上の者は月の民に敵わないのだからと言う。
力では、と付け加えて。
霊夢と依姫が戦っているが、霊夢は既に手を地についている。
霊夢は神様相手だと戦いにくい、もっと妖怪らしい妖怪を退治したいと愚痴を言いながら、依姫に一枚の札を投げる。
札を切り裂く依姫だが、札からは黒い何かが現れた。
それは霊夢が神降ろしした、大禍津日が溜め込んだ厄災であり、月に寿命をもたらす穢れだった。
これを一つ一つ潰さなければ月は地上と変わらなくなる、これで弾を避けることはできなくなったと霊夢は言う。
まるで、倒して然るべき妖怪みたいだ。霊夢が。と、魔理沙言った、
紫が賢者の住処への境界を開け、中に入った紫と藍は驚愕する。幻想郷に戻ってきていたのだ。
夜空に浮かぶ満月は少し欠けており、月と幻想郷を繋ぐ境界は閉じて、戻れなくなってしまう。
これは永琳の仕掛けたトラップなのだと、豊姫とレイセンが現れた。
第十八話 月の頭脳
ロケットは囮で本物は静かに現れる、永琳の手紙の通りになったと豊姫。
茫然とする紫に対し、自分と一戦交えるのかと問う。
霊夢と依姫は互いに息を切らして戦っていた。依姫は伊豆能売を呼び出し、霊夢の穢れ弾を祓う。
巫女の姿の神など聞いたことがないと霊夢は言うが、依姫は勉強不足ねと言って、剣を霊夢の首に突きつけた。
一方で、幻想郷では豊姫が紫の首に扇子を突きつけていた。
その扇子は森を一瞬で素粒子レベルで浄化する風を起こす月の最新兵器だった。
紫は大笑いし、降参を宣言する。
更には土下座までして許しを請うのであった。
第十九話 縛られた大地の神
紫と藍はフェムトファイバーの組紐で縛られ捕らえられた。
フェムトファイバーは不浄な者の出入りを禁じるために使われた縄であるが、
本当は月の民に逆らう者を封印する役割を持っていた。
それこそが出雲の大社で大国主、つまりダイコク様を封印する注連縄であり、
新しく幻想郷に来た諏訪の神社にあるものと同じ意味を持っていたのだ。
豊姫は、依姫の方の戦いも終わったことの報告を受ける。
これで「月に忍び込んだ不浄な者は全て捕まえた」と言う。
それを聞いた紫は、縛られたまま妖しい笑みを浮かべるのであった。
永遠亭では例月祭が行われており、兎達はまたダイコク様に感謝する歌を歌いながら餅を搗いていた。
そこへレイセンが現れ、てゐに封書を渡す。その姿を目に、月の使者より地上の神様のほうが頼りになるじゃないかとてゐは言った。
手紙には月を攻めようとしていた犯人は捕まえたことが報告されていた。
上手く行きすぎて不安になりつつも、満月を肴に団子と酒を楽しむ永遠亭の住人達であった。
――月にはまだ侵入者が残っていた
第二十話 最後にして幽かな穢れ
神社から霊夢がいなくなって二十五日、他の者は帰ってきたのに霊夢だけが帰ってこない。
射命丸は、そろそろ新しい巫女を捜さなきゃいけない時期なのかと考えていた。
紅魔館に潜入取材を試みるも、レミリアの興味は月から別のものに移っており、話を聞くことはできなかった。
しかし、ちゃんと霊夢は帰ってきた。
依姫には身の潔白を証明して謀反の噂を消す必要があったので、
自分以外、霊夢にも神降ろしができることを見せて回っていたので、時間がかかったのだった。
射命丸に月の土産話を語る霊夢。手を触れずに開く扉、文字の拡大縮小が自在な本、月の民の人となり。
そして、見覚えのある亡霊が居たことについて。
最終話 青の宴
神社にレミリア達がやってきた。お詫びを兼ねて霊夢達を海に招待すると言う。
これで新しい記事が書けそうだと喜ぶ射命丸だが、その横で見覚えの無い鴉が飛び去ったことに気づいていた。
子供のように悔しがる紫だったが、式神から鴉が去ったことの報告を受けると、途端に態度を変えて勝利宣言をする。
鴉は見張りだったのだ。
一体何が起きていたというのか、白玉楼にて紫は藍に説明する。
紫は最初から月の民と一戦交えようとなどしていなかった。
正面から侵入するロケット組は囮であると見せかけて侵入する紫自身も囮だったのだ。
2種類の囮で豊姫と依姫の2人を個別に引きつけて、その隙に幽々子を月に侵入させる。
幽々子達は死者であり、既に浄土の住人であるので、穢れが無い。
だから月の都に忍び込んでも目立たないので、空き巣には最適だったのだ。
そこまでして幽々子が賢者の家から盗んできたものは、一つの古びた壺。それは月で漬けられた超々古酒であった。
あれだけ騒ぎを起こして盗んできたものが酒一本。藍は呆れる。紫は大爆笑する。
そして、その月の酒で勝利を祝うのであった。
レミリアの言う海とは図書館に作ったプールだった。冬にプールに入るのは妖怪はともかく人間には寒いだけなので大不評。
そこへ紫と幽々子が現れ、いい酒が手に入ったので宴会をしようと言う。
酒を飲んで宴会を楽しむ。
霊夢は言う、「月みたいな海ができてもやることは一緒ね」と。
紫は言う、「それが穢れだらけの人間のいいところでしょう?」と。
謀反の噂、月面戦争、住吉三神ロケットの進入、それを囮として侵入した「黒幕」、それらは全部酒を盗み出すことに使われていた。
してやられたことに気づいた綿月姉妹はぎゃふんと言う他なかった。
しかし、本当に紫の目的は、酒を盗み出すことだけにあったのか?
小説版『東方儚月抄 ~ Cage in Lunatic Runagate.』
キャラクター情報誌「キャラ☆メル」で連載されていた小説。ZUN自らが執筆している。挿絵はTOKIAME。通称「骨月抄(ほねげっしょう)」。
東方キャラの一人称小説で、主役は毎回変わっている。永夜抄や漫画版儚月抄の裏話が描かれており、儚月抄を楽しむためには不可欠な存在である。
紫がなぜ第二次月面戦争を計画したのか、その目的は何だったのか等、重要なこともこの小説で明かされている。
2007年6月発売の創刊号から2009年8月発売のVol.9まで連載。単行本は一巻のみ。表紙は輝夜、裏表紙に永琳。
各話の形式
第一話 | 賢者の追憶 | 八意永琳の一人称 |
第二話 | 三千年の玉 | 蓬莱山輝夜の一人称 |
第三話 | 浄土の竜宮城 | 綿月豊姫の一人称 |
第四話 | 不尽の火 | 藤原妹紅の一人称 |
第五話 | 果てしなく低い地上から | 八雲紫の一人称 |
第六話 | 愚者の封書 | レイセンの一人称 |
第七話 | 半身半義 | 魂魄妖夢の一人称 |
最終話 | 二つの望郷 | 三人称 |
※最終話は連載時には前後編に分かれて掲載された。
4コマ版『東方儚月抄 ~ 月のイナバと地上の因幡』
4コマ漫画誌「まんが4コマKINGSぱれっと」で連載されていた作品。作画はあらたとしひら、原案はZUN。 通称「うどんげっしょう」。
主役は鈴仙・優曇華院・イナバで、彼女と永遠亭の日々を描く。
本作のみ、神主が原作ではなく「原案」としてクレジットされている。半公式の同人扱いだろうか。漫画や小説とはストーリー的なリンクはほとんどなく、シリアスなどどこ吹く風でマイペースにはっちゃけている。
主に優曇華がてゐに振り回されたり輝夜に振り回されたり永琳にお仕置きされたり失禁したり寝込んだり薬でアイキャンフライしたりするお話である。(※誇張無し)
特別編としてコミックマーケットの一迅社企業ブースで販売された小冊子やスクールカレンダーに収録された4コマも存在する。
2007年8月号から2010年2月号まで連載。単行本は上下両巻発売中。
その他、詳細は「東方儚月抄 ~ 月のイナバと地上の因幡」の項を参照。
上巻
第1話から第15話まで+おまけ収録。
通常版の表紙は鈴仙とてゐ、裏表紙は永琳と輝夜。
限定版の表紙はうどんげ(フィギュア)in兎鍋、裏表紙はうどんげフィギュアを前や横、上下から見たイラスト。
限定版にはうどんげフィギュアが付いてくる。
下巻
第16話から第30話まで+おまけ収録
限定版にはてゐフィギュアがついてくる。
関連動画
関連商品
関連コミュニティ
関連項目
関連リンク
- 15
- 0pt