概要
東武日光線の特急形電車1720系「DRC」の後継車として1990年デビュー。
先代DRCが当時としては異常に豪華な車両の部類であったこと、また落成当時がバブル期だったという世相を反映してか、設計コンセプトに"Fast&Pleasure"を掲げられ、内装・電装品共に現在の基準で見ても異様なハイスペックとなっている。
ちなみにWikipediaの記事によれば、一両辺りのお値段はN700系新幹線とほぼ同じらしい。
グッドデザイン賞及びブルーリボン賞を受賞。
車体及び内装
車体は東武鉄道で初めて全アルミニウム合金製車体を採用し、軽量化・低重心化に配慮している。軽量化に配慮したとはいうものの、後述のとある理由のために一両辺りの重量は約36t前後と、下手な鋼製車よりも重い。
客室ドアはプラグドア方式。開閉時には音声による注意喚起のドアチャイムが鳴動する。尚、春日部駅では一部のドアが開かないので注意されたし。
床下の防音材は文字通り通常の3倍近い厚みに設定されているため、トップスピードに達しても車内は非常に静かである。あの赤い彗星もビックリだ。
設計には銀座東武ホテルの設計も手がけたデザイナーが参加している。
普通車である1~5号車の座席は1100mmピッチ・4列配置の回転式リクライニングシート。シートピッチ1100mmという時点でJRでは既に特急グリーン車並のスペックであるが、さらに全席フットレスト装備である。
それだけではなく、運行開始当時は座席内にスピーカーが組み込まれており、イヤフォン無しでのオーディサービスも実施されていたという(現在は撤去された)。
ちなみに記事主は浅草~鬼怒川温泉間を乗り通した経験があるが、全く疲れは無かった。
3号車の半室はビュッフェとなっている(現在は売店)。今でこそ売店に"格下げ"されてしまったものの、それでも弁当やおにぎり、またホットスナックといった「食事類」を扱っている、今では貴重な存在である。JR各社も、特に長距離乗車の機会の多い新幹線に於いては少し見習うべきではないだろうか。
大事なことなので2回言いましたが、上で挙げた座席のスペックは飽くまで「普通車」のものである。では6号車の特別車両は一体どうなっているのかと言えば、4人用個室が6室となっている。
記事主は普通車しか利用経験がないので詳しいことまでは不明だが、それでも20m級の特急形電車で定員が4人個室×6=24人という時点でどれだけ贅沢な空間の使い方を使っているかくらいは容易に想像できるであろう。(ちなみに一般的な在来線特急電車の座席車定員は50~60名前後)
繰り返すが、記事主は普通車しか利用したことが無いので、再びWikipediaの記事からになってしまうものの、件の特別車両はホテルを意識した設計となっており、床はカーペット張り、さらに各個室には大理石製のテーブルが鎮座している。アルミ車体にもかかわらずの異常な重量の理由は主にこれである。
また運行開始当初は前述のオーディサービスに加え、電動ブラインドとビュッフェに商品を注文するための電話までもが備え付けられていたという。
機器類
東武100系は指定席特急専用車としてはいち早くVVVFインバータ制御を採用した。
「電車でGO!」をはじめとする鉄道シミュレータソフトのプレイ経験のある方なら分かると思うが、鉄道車両は所定の速度に達したらマスコンをOFFにする、という運転法が一般的である(京急のような例外もあるが)。
言い方を変えれば、「鉄道車両が最もエネルギーを消費するのは発車して数分間の加速している時間」でもあるということである。
このことから、その運用の特性上特急形電車はサイリスタチョッパ(電機子チョッパ)やVVVFなどの省エネルギータイプの制御方式による省エネルギー化の恩恵は薄いと見られ、VVVF化は後回しになる場合が多い。実際、近鉄の「アーバンライナー」こと21000系は抵抗制御を採用している。
しかし東武鉄道の場合、
- 日光線の山岳区間は25パーミルの連続する勾配が存在しており、
- またカーブも比較的多いため、中~高速域の加速性能を向上させる必要があり、
- 結果として高出力の車両が必要になった
- さらにVVVF制御の特性として、定速運転機能を簡単に実現できる
・・・という結果からVVVF制御を採用するに至ったと言われている。
どちらかと言えば省エネルギーよりも「高出力化しやすい」「運転しやすい」という点からVVVF制御をいち早く採用したと言える。
VVVF装置は日立製作所製の大容量GTOサイリスタを用いたインバータ装置であり、これにより150kWの主電動機をインバータ一台あたり8個制御する。
150kWという数値は現代の基準からすればそれほど大きな数値ではないものの(鉄車工標準規格車両は190kW)、100系は全ての車両にモーターを搭載するため編成出力レベルは非常に高い。
編成出力は150kW×4個×6両=3600kW、一両辺りの出力は600kWに達し、重量あたりの出力は16.4kW/tに達する。ちなみにこの「16.4kW/t」という数値は、早い話が重量1t辺り16.4kWの出力があるということを表している・・・が、これは下手な新幹線電車よりも大きな数値である。
駆動方式はTDカルダン駆動、ギア比は高速向けに設定され16:85=1:5.31。
台車は住友金属製のTRS-90形ボルスタレス台車を採用。軸箱支持方式はS形ミンデン方式である。
全軸にオイルダンパを装備し、乗り心地の向上を図っている。
初期車である101~104Fはロールアウト時はヨーダンパを未装備であったが、105F以降の後期車からヨーダンパが追加された。尚、初期車もこれにあわせヨーダンパを追加している。
補助電源装置は140kVAのDC-DCコンバータとSIVを組み合わせたもの。
電動空気圧縮機は低騒音型のHS-20系列。
JR乗り入れ対応編成である106~108Fは、乗り入れに備えJR用ATS機器などの各種機器を追加されている。
また、個室車にも「グリーン車」マークを付けてある。
新幹線に迫る性能
上で挙げた通り、東武100系の出力は在来線電車としては非常に高い部類に入るが(それどころか下手な新幹線以上である)、その出力は走行性能にも現れている。
東武100系の(カタログ上での)電車性能は、
と、特急形電車としては比較的平凡な数値である。そう、「カタログ上では」。
しかし、定加速領域(乱暴に言えば、起動加速度を保てる上限の速度)は100km/h弱までとなっており、高出力とも併せて高速での加速は文字通り「高いってレベルじゃねーぞ!」である。この「定加速領域:100km/h弱」という数値がどれだけ異常なのかというのは、160km/h対応車であるJR西日本681系(試作車)が100km/h強、京成の「新型スカイライナー」ことAE形が100km/h弱ということを考えれば見当がつくだろう。何しろ160km/h運転対応車とほぼ同じ力行性能があるということであるから。
何しろ件の東武日光線の25パーミル上り勾配を、落ち葉や雪をものともせずに平坦線と何ら変わらないように再加速してしまう車両である。
さらに平坦線でのに均衡速度(車両の性能的に出せる最大の速度)は、ある計算によれば約210km/hに達するとの結果すら出ているという話がある。文字通り、ちょっとした新幹線並の性能を有する車両である。
現在
現在では6両9編成・計54両が「スペーシアきぬ」「スペーシアけごん」として運用を行っている他、JR乗り入れ対応車である106~108Fは「スペーシアきぬがわ」にも投入されている。
ちなみにJR側の東武乗り入れ対応型485系は1編成しか無いため、485系が検査に入った際には「日光」の代走に回る場合もある。当たったらラッキー。
関連動画
100系が本気を出しすぎたようです。
まさかのイメチェン
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関連項目
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