東海道新幹線とは、東京駅~新大阪駅を結ぶ東海旅客鉄道(JR東海)の鉄道路線である。
概要
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日本で最初に開業した高速鉄道(新幹線)路線で、輸送量が逼迫していた東海道本線の輸送力を増強する為に建設された。東海道本線の輸送力増強方法としては現行の標準軌新線以外にも複数案あったものの、十河信二の悲願でもある「広軌別線」としてトンネルや用地など戦前の弾丸列車計画で進めていたものを下敷きに5年で開業にこぎ着けた。また、当初は鈴鹿山脈を越え京都に向かう計画であったが、工事が難しく必達目標である「(1964年の)東京オリンピックに間に合わせる」を達成するため、及び北陸方面への連絡のために米原駅経由となった(結果、関ヶ原の雪に悩まされることになった)。
1964年に開業し、2014年10月1日に開業50周年を迎えた。
新幹線路線のうち、全線が一括開業した唯一の路線でもある(新在直通路線、いわゆるミニ新幹線の秋田新幹線を除く)。
開業当初は東京駅、新横浜駅、小田原駅、熱海駅、静岡駅、浜松駅、豊橋駅、名古屋駅、岐阜羽島駅、米原駅、京都駅、新大阪駅の12駅だったが、1969年に三島駅、1988年に新富士駅、掛川駅、三河安城駅、2003年に品川駅が開業して17駅となっている。
神奈川県内(寒川新駅)および静岡駅内(静岡空港)に新駅を設置する構想があるが現時点では具体的な動きは無い。滋賀県では一時期南びわ湖駅を設置する動きがあり、着工までこぎつけたものの財政問題や反対派の県知事が就任したことで白紙になっている。
山陽新幹線とは、1972年の岡山開業時から直通運転を行なっている。現在は、JR西日本山陽新幹線博多駅まで直通運転し、東京駅~新大阪駅間を最短最速2時間21分で結ぶ。なお2011年開業の九州新幹線とは直通運転を行っていない。これは東海道新幹線内で走行する車両規格を統一させるためである。
山陽新幹線との直通列車が主体のダイヤであるため、東海道区間がJR東海、山陽区間がJR西日本と管轄が別れた現在も「東海道・山陽新幹線」とセットで呼ばれることが多く、JR東海の運行情報でも一括で案内されている。
東海道新幹線の最高速度は285km/h。しかし初電と終電近くの列車以外は過密ダイヤゆえ240~260km/h程度の走行であることがほとんどで、270km/hに達する区間はごく僅かである(但し、今後京都~米原間にて330km/hに、その他の区間でも山陽新幹線並みの300km/hに最高速度を引き上げる計画がある)。2020年3月から全ての車両が285km/h対応の列車となっている。
大半の時間における「のぞみ」は、東京~新大阪間で2時間27~30分運転のパターンで運転を行う。
また東京駅から横須賀線と並走する区間から離合する武蔵小杉駅付近までの間も、他の区間よりカーブが急になる(特に多摩川橋梁からの急カーブを抱える武蔵小杉駅で顕著)等の影響で最高速度は170km/hに抑えられる(東京付近で目に見えてスピードダウンするのはこのため。カーブが多いため実際は大半の区間で100km/h~110km/h前後で通過し、170km/hで走行するのは直線区間のみ)他、熱海駅は185km/h制限がある。
東海道新幹線では16両編成(座席数1323席または1319席・各車両の座席配置もドア位置も全て統一)のみの運用となっており、異常時などにおける車両運用の弾力性が確保されている。山陽新幹線・九州新幹線用の8両編成は鳥飼車両基地への回送時のみ東海道新幹線に入線している。副次的効果として、全列車が停車する東京・品川・新横浜・名古屋・京都の各駅に設置されたホームドアも容易に設置出来た。しかし新大阪駅に限っては山陽・九州新幹線用の8両編成も停車する為、両方のドア位置に対応したホームドアを開発する事になった。
JR東海の全収入の8割以上を上げているドル箱路線であり、同社の生命線である(これは東海道新幹線に大規模災害等が長期間続く場合、JR東海の経営危機を迎える可能性が非常に高いことを意味する。JR東海が中央新幹線の建設を推進しているのは、東海道新幹線の代替路線確保のためでもある)。
「のぞみ」は品川駅・新横浜駅・名古屋駅・京都駅に停車駅が統一されている。私鉄で言えば「特急」の様な存在。以前は品川駅や新横浜駅を通過する列車が存在したが、2008年に全列車停車へ改められた。
また1992年から1997年まで、朝の下りに新横浜駅のみ停車し、名古屋駅・京都駅を通過する「のぞみ」が設定されていたこともある(いわゆる「名古屋飛ばし」)。
「ひかり」は「のぞみ」の補完的列車で、静岡県内(掛川駅、新富士駅を除く)や北陸連絡(米原駅)など、「のぞみ」が停車しない主要駅のカバー的役割を負っている(停車パターンは後述)。私鉄で言えば、「急行」的な存在とも呼べる。
「こだま」は全ての駅に停車する。「のぞみ」停車駅と、待避線のない熱海駅以外では、「のぞみ」・「ひかり」の通過待ちがある為、後続から如何にして逃げるかがカギとなる。(N700系以降の車両が加速度2.6km/h/sなのはこのこだまでの運用を考えた為である。)
「のぞみ」では小田原駅(上り)・三河安城駅(下り)通過後に定通アナウンスと次駅停車案内が流れる(アナウンス目安は次駅停車約10分前)。
なお、東海道新幹線では大人の事情(保安上の問題と言われている)で市販向け前面展望ビデオの撮影は勿論、トレインシミュレーションゲームでの採用を一切拒否している(山陽新幹線では前面展望の撮影が行われているが、JR東海管理区間を含む新大阪駅~新神戸駅間は撮影区間から除外される事が殆ど)。
これは1990年(平成2年)、当時天皇であった上皇明仁の天皇即位に伴う「即位の礼・親謁の儀」が伊勢神宮で行われる前日、新横浜駅付近の擁壁を爆弾で破壊し、運行と明仁のご移動を妨害するという、即位の礼に反対する為のテロが発生した事から、これ以降、テロ対策で原則撮影禁止とされたためである。
但し、旧国鉄時代に撮影された前面展望ビデオ(6倍速で収録)は残されており、貴重な映像資料となっている。現在でもテレビメディアで一部区間において撮影が許可されているケースは存在する。
1990年以降、東海道新幹線を狙ったテロは起きていなかったが、2015年(平成27年)6月30日、新横浜駅 - 小田原駅間を走行していた「のぞみ225号(N700系2000番台X59編成)」が、男性の撒いたガソリンによって火災を起こし、焼身自殺を図った男性と日本人女性が死亡するというテロ事件が起きている(■)。
翌年(2016年)の伊勢志摩サミット開催も相まって、駅の改札を空港と同様の保安検査場に改め、武器や危険物等の取締を強化する様、議論もされた。結局、利便性を損なわれるとして却下されたが、これにより2018年に同区間で起きた無差別殺傷テロを許す事になる。
2017年9月30日には、専用サイトで年会費無料で交通系ICカード(ICOCA・Suicaなど)とクレジットカードを会員登録することのできるチケットレスサービス「スマートEX」を「東海道新幹線」「山陽新幹線」(東京駅~博多駅間)内において開始した。
2023年末から年末年始・GW等繁忙期の「のぞみ」は全席指定化された。2003年の品川駅開業以降20年ぶりの全席指定化だが、20年前と違いインターネットで新幹線の座席指定の予約が出来るようになったので予約の難易度は格段に下がっているものと思われる(みどりの窓口は実質きっぷの受取場所みたいなモノで、その他に切符の受け取り専用の機械もある)。
また、車内販売については要員確保の困難が予測され2023年10月末で終了。グリーン車のみ専用サイト経由でのモバイルオーダーサービスが提供されることとなったが手配の関係上、上りは新横浜駅手前、下りは栗東信号場手前でオーダーの受付を終了する。
2026年度中に完全個室タイプの座席を導入する予定。但し1編成につき2室のみ。個室専用のWi-Fiやレッグレスト付きのリクライニングシートのほか、照明の明るさ・空調の風量・放送の音量なども個別に調節可能な機能を備える。
路線図
現在のパターンダイヤ
早朝や深夜前等の時間を除き、現在の東海道新幹線は緻密なパターンダイヤが組まれている。
いわゆる12-2-2ダイヤと呼ばれるもので、これは1時間あたり「のぞみ」12本、「ひかり」2本、「こだま」2本という意味がある。ただし「のぞみ」12本のうち定期列車は4-5本程度で残りは臨時列車である。
日中「のぞみ」は東京~新大阪間所要時間が2時間27分パターンが毎時1本づつの設定であり、それ以外は全て所要2時間30分のパターンダイヤである。
「ひかり」は俗に「静岡ひかり」と「米原ひかり」と呼ばれるタイプの列車が1時間に1本それぞれ走っている。
「静岡ひかり」はのぞみの停車駅に加え、静岡駅、浜松駅、新大阪駅からの山陽新幹線区間の各駅に停車する。それに加え、熱海駅か三島駅のどちらかに停車する列車が大半である(両方通過の列車もあるが、静岡駅以遠の到着時間は同じなのでかなりの余裕のある列車になっている)。
「米原ひかり」は新横浜駅から名古屋駅までは小田原駅もしくは豊橋駅にのみ停車する列車が交互に発車する(下り列車の東京駅偶数時発が豊橋、奇数時発が小田原に停車する。上りは逆)。また、名古屋駅から先は各駅停車になる。
東京~新大阪間の所要時間はいずれも2時間54分。
「静岡ひかり」は静岡駅、浜松駅でそれぞれ1-2本程度ののぞみを待避し、「米原ひかり」は岐阜羽島駅、米原駅でやはりそれぞれ1-2本ののぞみを待避する。臨時列車次第では空待避もあり得る。
毎時2本の「こだま」は東京~新大阪間運転と東京~名古屋間の運転が1本ずつで、それぞれ「新大阪こだま」「名古屋こだま」とも言う。
「名古屋こだま」は東京駅から名古屋駅まで2時間49分、「新大阪こだま」は新大阪駅まで3時間54分の所要時間となっている。「名古屋こだま」は名古屋駅で「米原ひかり」と接続している。
「こだま」の方は全列車が停車する駅と、待避線のない熱海駅以外の大半(というよりほぼ全て)の駅で1-2列車の「ひかり」または「のぞみ」を待避する。臨時列車次第では空待避は日常茶飯事である。臨時も含めれば10以上の列車に抜かれることになる。
著名な列車の解説
ここでは東海道新幹線でも有名な列車について解説する。とは言っても、実際に界隈で話題になるのは早朝に運転されている下りの5列車と深夜の1列車が主である。
※2020年3月14日ダイヤ改正で列車番号が変わった列車は、それ以前の号数を(旧:***)と表記する。
- ひかり531号 (列車番号531A, 名古屋6:36発→博多10:11着) (旧:ひかり491号(列車番号491A))
途中停車駅=名古屋から新神戸までの各駅・姫路・岡山・福山・広島・新下関・小倉・博多
現在の定期「ひかり」で唯一の東海区間発博多行き。山陽新幹線内は旅行会社が企画商品として販売する格安こだま号用きっぷの対象に組み込まれており、速達性の高さや利便性の高い時間帯の運行であることから人気を博している。 - ひかり533号 (列車番号533A, 新横浜6:00発→広島9:56着) (旧:ひかり493号(列車番号493A))
途中停車駅=小田原・静岡・名古屋・京都・新大阪・新神戸・西明石・姫路・岡山・福山・広島
新横浜駅6時発の広島行「ひかり」。新横浜駅から新大阪駅まで先着する。
3分後には最速「のぞみ」が3本も追いかけてくるにも関わらず、小田原駅でのぞみ491号に道を譲った後は、静岡駅に停車しながら西明石駅まで逃げ切る(西明石駅でのぞみ99号,姫路駅でのぞみ1号を待避)。
余裕時分の多い東海道新幹線において余裕の少ない列車としても知られている(余裕時分は相対的に少ないだけでちゃんとある)。新横浜駅から新大阪駅まで「のぞみ」より途中2駅も停車駅が多いにもかかわらず、昼間の2時間33分「のぞみ」よりも2分速い。JR東海の本気が垣間見える列車。 - のぞみ491号 (列車番号9491A, 新横浜6:03発→新大阪8:06着)
途中停車駅=新横浜・名古屋・京都・新大阪
2023年3月の相鉄・東急新横浜線開業に伴い、目黒駅・海老名駅方面からの始発列車との接続を取る形で新設された、土曜日と月曜日限定の臨時便。
2024年3月16日改正ではのぞみ497号(9497A)と改め、連休初日や繁忙期などを中心にのぞみ97号(7097A)として博多まで延長運転(山陽新幹線途中停車駅=新神戸・岡山・広島・新山口・小倉)。
小田原でひかり533号を追い抜いた後、名古屋まで前方に列車がいないのを良い事に爆走する。 - のぞみ99号 (列車番号99A, 品川6:00発→博多10:46着)
途中停車駅=新横浜・名古屋・京都・新大阪・新神戸・岡山・広島・徳山・小倉・博多
品川駅6時発の博多行のぞみ号で、品川駅~新大阪駅間は「のぞみ1号」より1分遅いだけの準最速列車。 - のぞみ1号 (列車番号1A, 東京6:00発→博多10:52着) N700S
途中停車駅=品川・新横浜・名古屋・京都・新大阪・新神戸・岡山・福山・広島・小倉・博多
栄えあるのぞみ1号。東京駅~新大阪駅2時間22分で結ぶ東京駅朝6時発の一番列車である。
かつては東海道新幹線の最速列車だったが、2020年3月ダイヤではのぞみ64号・のぞみ265号(→のぞみ263号)にその座を譲っている(東京~博多間の最速も2024年改正でのぞみ64号が4時間45分を記録した)。
設定当初は300系が使われ、その後500系、N700系と、700系を除く歴代イメージリーダーカーが充当されているのも特徴である。
かつてはこの列車に乗ると、終点博多駅の到着ホームの向い側で後続の新下関発九州新幹線「さくら407号」に連絡できた(2024年3月時点では後続の「のぞみ5号」が新下関発「つばめ321号」と小倉・博多で連絡可)。
※ダイヤ乱れなどがない場合、新幹線の運転時間帯は6時から24時までとなっているため、上述した列車が各駅を6時に毎朝発車するダイヤが組まれている。(のぞみ271号(名古屋6時20分発)は数少ない例外) - のぞみ265号 (列車番号265A, 東京21:24発→新大阪23:45着)
途中停車駅=品川・新横浜・名古屋・京都・新大阪
新大阪行きの下り最終列車。東京駅~新大阪駅2時間21分で結ぶ東京駅発下り最速列車でもある。(上り最速列車はのぞみ64号とのぞみ488号)。2024年3月改正でのぞみ263号(263A)へ変更された。 - こだま763号 (列車番号763A, 静岡6:02発→新大阪8:09着) (旧:こだま693号 (列車番号693A))
途中停車駅=各駅停車
終点の新大阪まで前述の「ひかり533号(旧:ひかり493号)」からノー待避で逃げる最速「こだま」。所要時間は2時間2分。2024年3月改正で静岡駅出発時刻が5分繰り上がり所要時間が2時間7分となった。
もし「こだま」が待避がなかったらどれだけ速いのかを指し示す列車としてよくあげられる。ちなみに日中の同区間の標準所要時間は2時間30分であり、差分の28分が通過列車の待避に使われていることがわかる。
また、上り静岡駅始発東京行きのこだま804号(列車番号804A) (旧:こだま700号(列車番号700A))や、浜松駅始発のこだま808号(列車番号808A) (旧:こだま702号(列車番号702A)も同様に途中ノー待避運転であり、静岡駅~東京駅間の所要時間は1時間14 - 15分であることから(日中の標準所要時間は1時間25 - 28分)、もしも東京駅~新大阪駅をN700系で運転する途中ノー待避のこだま号があったとすれば、およそ3時間20分弱=通常の「こだま」より45分ほど速い時間で走破出来る計算となる。
関連動画
関連項目
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東海道新幹線・山陽新幹線・九州新幹線の使用車両 |
☓ 0系 -☓ 100系 -☓ 300系 - 500系(☓ WIN350)- 700系 - 800系 - N700系 - N700S - 923形(ドクターイエロー) ※☓下線は運用終了車両 |
東海道新幹線・山陽新幹線・九州新幹線の列車名 |
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