林野庁とは、日本政府を構成する「庁」のひとつ、日本の林業の監督と国有林野事業を担当する政府組織である。
様々な国に同様の名称の機関があるが、ここでは特に日本国政府の林野庁について記載する。
概要
組織
英訳名はForestry Agency。農林水産省の外局である。
歴史
農林省林野局が分離し林野庁になって今に至る。戦後、皇室財産だった御料林も国有林に組み入れられ、林野庁が管理している。
元三公社五現業のひとつで現在も直轄事業として林業も行っている。
林業の衰退
第二次世界大戦後、旺盛な住宅需要にこたえるため拡大造林が世論の主流を占め、それにこたえるため現在の森林の構築が強行された。それにより全国の国有林が一斉伐採され、伐採後にスギを中心とした針葉樹が植栽した。これはスギが育成が速く真っ直ぐに育つため木材として使いやすいとの判断からだった。その後、木材の輸入緩和政策が施行され外国産材にコスト面で敗北した林野事業は1兆3000億円を超える累積債務を抱えることなった。
緑のオーナーの憂鬱
1984年から1998年度にかけてスギやヒノキを植えた国有林に1口50万円を出資して国と共同所有する緑のオーナーを募集した(1999年に募集停止)。予定では20年後あたりから販売収益が上がり利益が分配される仕組みとのうたい文句だったのだが、まともに収益のできる運用ができなかったため多くの出資対象が元本割れとなった。結果、訴訟を起こされ2016年2月29日、大阪高裁は訴訟を起こしたオーナーたち約80人に対して説明義務違反を行ったとして約9900万円を支払うよう命じた。
そして花粉症へ
上記の経緯で植栽された大量のスギによって現代の日本人の国民病である花粉症が大量発生することとなった。同時に植えた杉が放置され実質不良債権化している為、収益以前の話となっているのである。
売れない杉
現在でも累積債務は一向に減っていない。一般会計から利払い分と償還用に平成25年予算で172億円をもらっている。林業からの売上げは毎年20億円程度でほぼ焼け石に水となっている。
林野庁の未来
無花粉スギの普及に熱心な近年においても、広葉樹は成長に年数がかかるという理由で杉以外を植栽していく気はあまり見られない。これはどこまでいっても林業が視点の中心にある官庁である為、30年で生育する針葉樹の変わりに長い場合だと80年はかかる広葉樹を植えるインセンティブが働かないためといわれる。
以上のことから林野庁を環境保全を主目的とするために環境省傘下に移動すべきではないかという論陣も近年は見られる。その他、京都議定書の定義においては山で取れた木を燃焼させて発電した場合にはCO2排出量は生育時の吸収分との打消しでゼロとみなされる為、林野の保存のために小規模な木材の発電を林野庁でも行ってはどうかという意見もある。またそれと並行して森林組合の育成にも力を入れている。
今後、日本の森をどのように保全するにせよ国民の深い議論が必要である。
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関連項目
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