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核分裂とは、原子核が分裂することである。
概要
一般的に不安定な核種において起こる現象である。
原子核が中性子を吸収すると、核分裂が起こり中性子を放出する。この放出された中性子が原子核にぶつかると、また同様に核分裂が生じ・・・といった連鎖反応が起こる。
この反応においては熱が生じるため、それをうまく利用すればエネルギーを手に入れることができる。その利用手段の代表例が原子力発電や原子爆弾である。
この核分裂において2種類以上の原子の生成が起こり、これら生成物を核分裂生成物という。
なお核分裂を起こす有名な例に235U、239Pu(原子爆弾、原子力発電)、238U(水素爆弾(tertiary))がある。
詳細
定義
核分裂の定義は、ヘリウム4より重い原子核が複数、生成物として出る現象となる。
ヘリウム4の原子核(α線)とガンマ線、娘核種が生成するα崩壊は、核分裂に含まれない。
自発核分裂
Acより重い元素の場合、核種によっては、中性子を吸収しなくても核分裂を起こすことが知られている。これを自発核分裂という。
たとえば、235Uや238Uでも、割合が低いものの、自発核分裂を起こす崩壊モードが存在している。この反応は、臨界事故のきっかけになる事もあるので要注意である。自発核分裂を起こしやすい核種として、240Puが有名である。
鉱物の多くでは、ごく微量の238Uが含まれる。生成年代の古い鉱物ほど、自発核分裂を起こして跳ね飛ばされた原子核の軌跡が、結晶の傷として多く残るようになる。鉱物の薄片を薬品処理し、顕微鏡で軌跡をカウントして生成年代を測定する方法をFT法(フィッション・トラック法)という。
臨界状態
核分裂反応の場合、核分裂生成物の核種では余剰となる中性子が、数個生成される。連鎖反応が続くと、定常的に、あるいは鼠算式に中性子が生成される。これを臨界状態という。
反応が暴走すると、莫大な熱と中性子が発生する(臨界事故)。これを防ぐため、中性子が燃料の容器に留まりにくいように形状を棒状にしたり(生成直後の中性子は高速なので、容器の直径が短いとすぐ飛散する)、周囲に中性子を吸収するホウ素やハフニウムなどを配置したりする。
「バケツでウラン」(東海村のJCOで1999年に発生した臨界事故)の場合は、量もさることながら、沈殿槽(事故当初マスコミ報道ではバケツと呼ばれた)に一定量ウラン溶液を入れると、周りの冷却設備の水も含めて、3次元方向のどの向きでも、容器の差し渡しが十分大きくなり、中性子がランダムウォークして容器内に留まる確率が跳ね上がるのが根本的な問題であった。
原子炉
核反応を用いて熱を取り出す炉としては、核分裂を利用したものが実用化されている。反応で生じた熱を主に水(水蒸気も含む)を冷却材として用いて回収し、タービンを回して電気に変換する。普通、冷却系は燃料容器を冷却する系と、タービンを回す系の2段に分ける。
原子炉の燃料
多くの商用原子炉では、主に235Uを燃料として使用している。燃料は通常、235Uを全ウランの数%(研究用小型炉の場合もうすこし高い割合)まで濃縮したものを用いる。
239Puは、ウランの主成分である238Uが高速中性子を吸収することで容易に得られる。これはプルサーマル燃料を使用した商用原子炉、高速増殖炉で、ウランなどと共に、燃料として使用される。
この他、トリウムから容易に生成できる233Uが、将来の燃料として研究されている。
メルトダウン
冷却系のトラブル、または中性子を吸収する制御棒のトラブルが起きて、核反応により異常な高熱が発生すると、核燃料をいれた燃料集合体が溶融して破損する事故が発生する。これをメルトダウン(炉心溶融)という。
通常、燃料集合体は圧力容器の中に入れて保護するが、メルトダウンが発生すると、冷却系や圧力容器の損傷が発生することが多く、重大な放射能漏洩事故につながる。
放射性廃棄物
核分裂生成物には、様々な元素の色々な同位体が含まれる。放射性核種で半減期が数分~数万年のものも多数含まれる。また、反応で出る中性子を照射された物質でも、放射性核種が生成することが多い。
すべての放射性物質を安全に分離するのは、関係する元素が多すぎるのと、強い放射能のために、費用と手間の面で不可能である。このため、使い終わった燃料集合体などは、燃料として再利用する分を除いて、全て高レベル放射性廃棄物として保管する。
関連項目
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