楠芽吹を突き動かすものは、怒りである。
自らの誇りのために、自らの生き方を誰にも否定させないために、少女は戦い続ける。
これより語られるのは、美しく華麗に咲く花たちの物語ではない。
名も知られず誰の目にも止まらず、人に踏みつけられながら、
それでも地を這うようにして必死に生きる雑草たちの物語。
勇者でない者たちが、勇者に成る物語―。
『楠芽吹は勇者である』とは、「勇者であるシリーズ」のイラストノベル作品である。
前作「乃木若葉は勇者である」と同じく、企画原案・シリーズ構成はタカヒロ、執筆は朱白あおい。
略称は「くめゆ」。
概要
時系列的にはアニメ「結城友奈は勇者である」一期と、同作二期後半「勇者の章」の間に、防人と呼ばれる少女たちの活躍を描く。
「電撃G'sマガジン」の別冊付録「電撃G'sノベル」において2017年8月号から2018年1月号まで連載された。2017年12月16日に、書き下ろしを加えた単行本(一巻完結)が発売された。さらに、「結城友奈は勇者である メモリアルブック」でその完結編が収録されている。
2018年2月・6月にはドラマCD(全二巻)が発売された。また、アプリゲーム「結城友奈は勇者である 花結いのきらめき」でも、「楠芽吹の章」としてストーリー後半まで再現されている。
アニメ三期「結城友奈は勇者である 大満開の章」にて、本作がアニメで描かれることとなった。
本作の防人は30人以上の組織で動くためか(その中で主要人物は5人だが)、従来の作品に比べて群像劇の色合いが強い。また、前日譚である「鷲尾須美は勇者である」「乃木若葉は勇者である」が話が進むにつれて、その時系列上もあってどんどん重い辛い展開になっていたのに対して、本作は勇者であるシリーズのイラストノベル作品で初めて悲劇的な結末を回避できた作品でもある。そのためか、それまでの作品に比べてシリアスな本編の合間に、コミカルな描写も割と多い。特にドラマCDの書き下ろしストーリーは、それが顕著である。必聴。
あらすじ
神世紀300年秋、壁の破壊による四国最大の危機を勇者部が阻止した少し後のこと。大赦はバーテックスの攻勢が一時的に収まったことを機に、勇者に選ばれた勇者部以外の、結果的に選ばれなかったかつての勇者候補生を呼び寄せ、新たに量産型勇者と言える防人を組織させた。
防人は能力こそ勇者に劣るが、灼熱の外の世界でも長期間行動できるなどの勇者システムを持ち、壁の外の調査を行うよう防人に命じた。その中で、防人のリーダーとなった楠芽吹は、かつて三好夏凜との勇者候補に敗れたことから鬱屈とした思いを抱えていた――。
登場人物
防人
32人で構成される量産型勇者。番号は01~08が指揮官、09~24が銃剣隊、25~32が護盾隊となっており、番号が早いほど大赦が能力が高いと判定している。最初のバーテックスとの戦いで、4名が負傷あるいはトラウマとなり防人を辞めたが、直後に新たな4名を補充されている。
防人の主要キャラクターは、「乃木若葉は勇者である」の勇者同様、出身地が分かれている。芽吹、雀、しずくは中学2年生、弥勒は中学3年生。
防人と巫女の国土亜耶は、香川県綾歌郡宇多津町に実際に存在するゴールドタワーを改造して拠点としている。上里ひなたの末裔である巫女の大家・上里家では千景殿(せんけいでん)と呼ばれ、天の神襲来時には千景砲という武器まで登場した。その名は、300年前の戦いの最中に名前と存在を抹殺されたとある勇者に由来する。
- 楠芽吹(くすのき めぶき) - CV:田中美海
- 防人番号01、香川県出身。防人たちの隊長を務める。生真面目で、自分にも他人にも非常に厳しい性格。
- 2年前の戦いで戦死した三ノ輪銀の後継者となる勇者候補の中で、三好夏凜と勇者の座を激しく争い、最終的に落選する。自分が選ばれなかったことから大赦を激しく憎んでおり、防人となった後も大赦の無茶な命令に憤りを感じている。夏凜とは、今でも自他共に認めるライバルである。自分を男手ひとつで育てた父を尊敬しており、少々ファザコン気味。
- 加賀城雀(かがじょう すずめ) - CV:種﨑敦美
- 防人番号32、愛媛県出身。護盾隊担当。自分に自信が持てず、とても臆病で悲観的な性格。
- その小心ぶりから全防人中最弱とされているが、本能で生き残る手段を探す能力に非常に長けており、盾でバーテックスの攻撃を最低限に抑えて受け流す能力を持つ、ゆゆゆの異能生存体。いつも芽吹に泣きついているが、ここぞという場面ではその防御能力を生かして、幾度も芽吹を救っている。
- 山伏しずく(やまぶし しずく) - CV:石上静香
- 防人番号09、徳島県出身。銃剣隊担当。前髪で片目を隠した、一見大人しそうな少女だが、山伏シズクという、好戦的で粗暴なもう一つの人格を持つ二重人格者。
- 本来は命の危機などに瀕すると裏の人格が現れ戦闘能力が激増するが、乱暴な口調とは裏腹に意外と常識人であり、ドラマCDではツッコミを入れるためだけに裏人格になることもある。ゆゆゆいではある程度、裏表の人格の変化も調節できるようになった。上司である女性神官の正体が、安芸先生であることに気づいている。
- 弥勒夕海子(みろく ゆみこ) - CV:大空直美
- 防人番号20、高知県出身。神世紀72年に、赤嶺友奈と共に鏑矢として活躍した弥勒蓮華の末裔。
- 没落した実家を再興させるために功績を挙げようと躍起になるが、本人の実力は今ひとつで空回り気味。普段は高飛車なお嬢様キャラを演じているが、見えないところでは周りに追いつこうと鍛錬を欠かさぬ努力家でもある。毎回のようにいじられ役となっており、主要キャラ唯一の先輩の威厳はあまり無い。
大赦
- 国土亜耶(こくど あや) - CV:大野柚布子
- 防人たちと共に行動する唯一の巫女。中学1年生。
- 勇者であるシリーズ随一の心優しき少女で、雀曰く「国土亜耶は天使である」。いつも穏やかな笑顔を絶やさず、常に防人たちの無事を祈る献身的な性格。あまりにも純粋すぎて疑うことを知らないので、ゆゆゆいでは敵対していた頃の赤嶺友奈に騙されて誘拐されそうになった時も、素直に付いてきてしまい、赤嶺から逆に心配されたことも。
- 女性神官 - CV:佐藤利奈
- 防人たちに指示を出す、大赦の幹部。常に仮面を被っているため表情が読み取れず、高圧的な態度もあって芽吹に憎まれ、雀に怖がられている。
- その正体は、かつて「鷲尾須美は勇者である」にて、須美・園子・銀の担任教師を兼任していた安芸先生。2年前の戦いで教え子を失った悲劇から、わざと防人たちに嫌われるように冷たく接するようになった。しかし、神樹館小学校の生徒だったしずくからは、その冷徹な言動が本心ではないことを見抜かれていた。
この他にも、防人になる前の芽吹や、雀の回想などで「結城友奈は勇者である」でおなじみの勇者部の面々も登場している。
関連動画
関連項目
外部リンク
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