標準型戦艦とは、アニメ『銀河英雄伝説』(石黒監督版)において、会戦の主力として大量に建造される戦艦のことを指す。
この記事では銀河帝国の標準型戦艦について記述する。
※アニメ『銀河英雄伝説 Die Neue These』における帝国軍の「標準戦艦」については別記事を参照。
→「標準戦艦(銀河帝国)」
概要
標準型戦艦は、大量に建造される画一的設計、標準的能力の戦艦のことである。技術の進歩や時代の変遷に従って姿を変えながらも、長期にわたって大量に建造され、艦隊の中核として活躍した。
旗艦級戦艦のように特に秀でた能力があるわけではないが、戦艦として想定されるあらゆる状況に対応できる兵装を持つ標準型戦艦は、銀河帝国宇宙艦隊の戦闘を支える影の功労者といえよう。
そのバランスのとれた能力ゆえ、指揮設備を搭載して一個艦隊の旗艦として使用するといったような、さまざまな運用にも対応可能であるのも帝国の標準型戦艦の強みである。新帝国時代に至るまで諸提督、特に分艦隊司令の旗艦として使用された例は数知れない。艦の規模にも余裕があるため、被弾した場合などの生存性も高い。
銀河帝国の艦艇は自由惑星同盟軍との戦闘のみならず、領民に帝国や貴族の威厳を示す役割も併せ持っているため、外見は美しくデザインされ、内装の調度品も気を配られている(同盟軍艦艇は専ら戦闘を目的とした、実用一辺倒で機能的な設計である)。建造にあたっても、同盟艦よりコストと手間がかかるが、銀河帝国の国力が、人口的にも経済的にも自由惑星同盟を少し上回っている(ある経済学者の統計によると、同盟の国力は帝国の8割強程度である)ため、大きな問題にはなっていないとされる。
本編中の標準型戦艦
本編中、すなわち主に帝国暦487年から新帝国暦3年にかけての時期を舞台とするストーリーに登場する標準型戦艦。
帝国暦440年代に設計され、以来本編時間軸まで半世紀にわたり建造が続けられてきた。外観こそ変わらないままであるが、内部に使われている技術などは技術の進歩にともなって変わり続けている。
一個艦隊に配備されているだけでも数千隻に及ぶ標準型戦艦だけあって、その技術への信頼性や運用の自由度には相当なものがあり、同盟では特別な旗艦級戦艦を必要とした一個艦隊規模の指揮設備すら簡単に搭載できるほどで、実際に艦隊旗艦としても幾度と無く登場した。
艦型は四角く、エンジンが下と両舷に突出した帝国軍標準の構造である。艦首主砲は長距離ビーム砲6門。その他、側面副砲多数、機関上部に磁力砲などを搭載。戦闘艇ワルキューレは最大で48機を搭載できる。当然、大気圏突入能力も持っている。
ちなみに、ライバルである同時期の自由惑星同盟の標準型戦艦と比較すると、艦の規模の大きさから機動力や量産性において、そして伝統的に電子戦能力において同盟に劣るが、防御力と単座式戦闘艇(帝国軍ではワルキューレ)の搭載能力では帝国が勝っている。また、設計にゆとりがあるため様々な用途に対応できるなど、汎用性も高い(帝国艦は、良く言えば余裕がある、悪く言えば無駄が多い)。
破壊される標準型戦艦
何度も登場するだけあって、その破壊のされ方、被弾し方は様々である。
最も多いパターンとしては側面への敵ビーム直撃による轟沈が挙げられる。他にも、艦尾、艦首への直撃、敵スパルタニアンのビームで側面を「斬られ」て爆発などが多い。他にも、スパルタニアンの攻撃でエンジンを撃ちぬかれ漂流、トール・ハンマーの直撃で消滅、後背や側面から岩石に衝突される、太いワイヤーにぶった切られる、黒色槍騎兵の損傷艦に衝突する、果てはブラックホールに飲み込まれるなどというものまである。
こうして並べると標準型戦艦は破壊されるためのモブとして存在しているように見えてしまうが、戦場を支える主力としての標準型戦艦の活躍度に比例して破壊される艦が多く見えるだけで、断じて雑魚などではない。
また、「新たなる戦いの序曲」など単艦での戦闘シーンが細かく描写されているものを見れば判るように、正面からの砲撃であればアキレウス級の斉射に抗し得るほどのエネルギー中和磁場も備えており、断じて雑魚ではない。
旗艦としての標準型戦艦
前述のとおり、標準型戦艦は旗艦としても縦横無尽の活躍を見せている。その例を以下にまとめる。
艦名 | 座乗司令官 | 備考 |
---|---|---|
アウグスブルク オルデンブルグ |
シュターデン | 「新たなる戦いの序曲」登場 盾艦付き / 艦名は媒体によって異なる |
ヴィーグリース | グリューネマン | バーミリオン星域会戦で損傷 |
オストファーレン | グリンメルスハウゼン | 老朽艦 |
オッフェンブルフ※ | ナイトハルト・ミュラー | 一時的に旗艦となるも戦没 |
グングニル | ディートリッヒ・ザウケン | |
グルヴェイグ | ハンス・ディートリヒ・フォン・ゼークト | 第七次イゼルローン要塞攻防戦で戦没 |
グレンデル | ウォルフガング・ミッターマイヤー | 少将時まで |
ザンデルリンク | グーデ | 第二次ランテマリオ会戦で戦没 |
シェーンヘル | ホッター | 同上 |
シンドゥリ | ロルフ・オットー・ブラウヒッチ | 赤い斜め線が二本 |
ダルムシュタット | アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト | アスターテ会戦~リップシュタット戦役 |
タンホイザー | ラインハルト・フォン・ミューゼル | 中将時まで |
テオドリクス | イザーク・フェルナンド・フォン・トゥルナイゼン | |
ドンダーツ | シュラー | 第二次ランテマリオ会戦で戦没 |
ノイシュタット※ | ナイトハルト・ミュラー | 一時的に旗艦となるも戦没 |
エルラッハ艦 ハイデンハイム |
エルラッハ | ハイデンハイムは「新たなる~」での艦名 アスターテ会戦で戦没 |
バッツマン | フォーゲル | |
ブロックル | ウェルナー・アルトリンゲン | |
ブロムシュテット | レマー | 第二次ランテマリオ会戦で戦没 |
ヘオロット | カール・エドワルド・バイエルライン | “神々の黄昏”作戦まで |
ヘルテン※ | ナイトハルト・ミュラー | 一時的に旗艦となる |
ヘルメスベルガー | ヨッフム | 第二次ランテマリオ会戦で戦没 |
ヘルモーズ | カルナップ | バーミリオン星域会戦で戦没 |
モルオルト | オスカー・フォン・ロイエンタール | 少将時まで |
ランゲンベルグ | パトリッケン | 第八次イゼルローン要塞攻防戦で戦没/赤いY印 |
アイヘンドルフ艦 | アイヘンドルフ | 第八次イゼルローン要塞攻防戦で戦没 |
ジンツァー艦 | ホルスト・ジンツァー | ランテマリオ会戦時 |
バルトハウザー艦 | アレクサンデル・バルトハウザー | 第二次ランテマリオ会戦で戦没? |
ビューロー艦 | フォルカー・アクセル・フォン・ビューロー | 回廊の戦い時 |
ホフマイスター艦 | ホフマイスター | 黒い標準型戦艦 |
※付きは旗艦運用を想定されたわけではなく緊急に艦隊指揮をとったと考えられる臨時旗艦。
標準型戦艦のバリエーション
旗艦も務める標準型戦艦だが、特殊な用途や旗艦としての設備強化などによるバリエーションも多数存在する。
ネルトリンゲン
長篇「新たなる戦いの序曲」におけるウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツの旗艦。
艦体を上方向に伸ばすことで主砲を四門増設し、エンジンも強化している。両舷中央部に赤字でローマ数字の「Ⅵ」が書かれているのが特徴。
ヴィルヘルミナ級
司令長官、総司令官クラスの将官や門閥貴族が使用した巨大な派生型。その大きさは戦闘外の使用にも耐えるキャパシティだけでなく、帝国軍でも最高級の攻撃力、防御力を生み出し、門閥貴族の艦として相応しいものとなっている。
全体的にみて、標準型戦艦のレイアウトを引き継ぎそのまま大型化したというべき設計。大きさ以外での目立つほどの相違点は、機関部まわりの若干の形状の違いと主砲が大口径砲16門に強化されている程度である。
主な艦としては、<ヴィルヘルミナ>、<ベルリン>、<オストマルク>の三隻があげられる。後者二隻はそれぞれ帝国最大の権門オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク公爵、ウィルヘルム・フォン・リッテンハイム三世侯爵が座乗艦とした艦であり、それにふさわしく、両舷を護衛する盾艦が付随するほか、戦闘用設備を大幅に貴族の娯楽向けに転用している。
宇宙母艦・雷撃艇母艦
ヴィルヘルミナ級の設計をベースとした大型母艦。基本的なレイアウトはそのままに巨大な格納庫を上部に載せることで、多数のワルキューレや雷撃艇を搭載する宇宙母艦・雷撃艇母艦として活躍している。
格納庫部を除く全体的なレイアウトは標準型戦艦・ヴィルヘルミナ級にほど近いが、後方下部の主機関部の形状が両者とやや異なること、そして両舷の補助機関部が格納庫部との干渉を避けるため大きく後方にオフセットされている点が大きな違い。機関や搭載された兵装など各種装備も、旗艦級であるヴィルヘルミナ級よりずっと性能が低いものを使用しているとされる。
ヨーツンハイム
ヴィルヘルミナ級の発展型。カール・グスタフ・ケンプの旗艦。
ヴィルヘルミナ級を元にエンジンなどを徹底強化した超巨大艦で、上下対称の艦型と四基のエンジンが特徴。後にこの艦から更に発展した帝国最大の戦艦、<ガルガ・ファルムル>が建造された。
第二次ティアマト会戦期の標準型戦艦
外伝「螺旋迷宮」中の第二次ティアマト会戦シーンに登場する、帝国暦430年代まで使用された標準型戦艦。
まるで中世の短銃のような艦型をしており、両舷と下方向へのエンジン突出は本編時代の戦艦に受け継がれている。側面には短筒の金属部分のように広く銀色塗装された部分が存在する。第二次ティアマト会戦の後、本編登場タイプの標準型戦艦と入れ替わりに退役した。
帝国の標準型戦艦の例に漏れず艦隊指揮機能を有し、第二次ティアマト会戦においては以下の艦が登場した。
艦名 | 座乗司令官 | 備考 |
---|---|---|
ヴァーリ | パルヒヴィッツ | 第二次ティアマト会戦で戦没 |
ヴァナディース | ハウザー・フォン・シュタイエルマルク | |
エムブラ | カイト | 第二次ティアマト会戦で損傷 |
クーアマルク | ウィルヘルム・フォン・ミュッケンベルガー | 第二次ティアマト会戦で戦没 |
ダグダ | カルテンボルン | 第二次ティアマト会戦で戦没 |
旗艦用に大型化したタイプ
本編中の標準型戦艦に対するヴィルヘルミナ級のように、この時代の旧式戦艦にも大型化タイプが存在する。当時の標準型戦艦と比べ1.5倍の長さを持ち、全体的なレイアウトはあくまで標準型戦艦をそのまま拡大しているが、機関部がより大きく、かつ両舷だけでなく上部にも機関が追加されているのが最大の特徴。巨大化に伴い強靭な装甲と強力な攻撃力を持っていたと考えられる。
第二次ティアマト会戦にも、宇宙艦隊司令長官ツィーテン元帥の座乗する総旗艦アウドムラをはじめとする何隻かが参加していた。
作中には以下の三隻が登場する。
艦名 | 座乗司令官 | 備考 |
---|---|---|
アウドムラ | ツィーテン | 通常銀の部分が金色 |
ディアーリウム | コーゼル | 第二次ティアマト会戦で降伏 |
ベルゲルミル | シュリーター | 第二次ティアマト会戦で戦没? |
ダゴン星域会戦期の標準型戦艦
帝国暦331年のダゴン星域会戦で使用されたタイプの標準型戦艦。359年のコルネリアス1世の大親征時にも同タイプの艦が使用されていたかどうかは不明。作中には数カットのみ登場した。
艦首こそ本編時代までつながる形状であるものの、エンジンの両舷、下部への突出はなく、エンジンも一基のみ。艦橋も艦中央上部に箱型の構造物を載せる形で作られている。艦名がわかるのはゴッドリーブ・フォン・インゴルシュタット中将の旗艦でヘルベルト大公も座乗した帝国総旗艦<ゲッチンゲン>ただ一隻。
新帝国時代の新型標準型戦艦
新帝国に入り、既に就役から半世紀が経った標準型戦艦を代替すべく、<ブリュンヒルト>をはじめとする新時代の旗艦級戦艦で試行された新技術を搭載する新たな標準型戦艦の設計が開始された。本編中にその姿はないが、試作艦として建造された旗艦<キュクレイン>と<バレンダウン>にその原型を見出すことができる。
キュクレイン
ドロイゼン提督の旗艦。
シヴァ星域会戦の前哨戦に当たる亡命船“新世紀”号の追撃時に登場した。
艦型は簡易的な傾斜装甲の採用により三角形に近く、主砲は尖った前面に6門集中している。「超巡航艦」ことメックリンガーの旗艦<クヴァシル>の設計を元にしているとされ、それ故かダゴン会戦期以来標準型戦艦の伝統とすら言える艦体上下の細長い盛り上がりが存在しない。機関部も中央エンジンを廃し、両舷三基ずつの構造になっている。
バレンダウン
ヴァーゲンザイル提督の旗艦。イゼルローン共和政府最初の戦いである第11次イゼルローン要塞攻防戦で登場。
<キュクレイン>同様傾斜装甲を採用しつつも、従来の標準型戦艦をもとにしているため艦首の盛り上がりは健在。同じく中央エンジンも廃されたが、両舷のエンジンは<キュクレイン>と比べ張り出しが大きい。
最終的に、この<バレンダウン>が次世代型標準型戦艦の原型となったとされる。
関連動画
関連商品
関連項目
- 2
- 0pt