概要
広義で言うならば上記の意味であるが、一般的には旅客機で供される軽食以上の食事を指す。
空港近くのケータリング会社が準備をし、航空機にその日の搭乗人数分を搭載し、機内でギャレーと呼ばれている調理室で加熱なり冷蔵保管をし、決められた時間に乗客に提供する。
IATA(国際航空旅客協会)の取り決めにより国際線であれば片道1時間以上の国際線航路では機内食を提供しなくてはいけないとなっている。そのおかげで1時間以上のフライトを要する国際線に搭乗した場合は必ず機内食が供される。やったね!
国内においては長距離路線の上級座席では供されるが、エコノミークラスの場合は茶菓子と機内限定品のカップ麺ぐらいである。
また、搭乗前に持ち込んだ空弁などの飲食物はあくまで持ち込み品であり、機内食といわれることは無い。単純に持ち込んだ「弁当」に過ぎない。
カーテンの先は雲泥の差
機内食動画や、機内食レビュー投稿サイトなどを見るとわかるが、エコノミークラスとビジネスクラス以上とではすさまじい格差がある。酷い会社のエコノミークラスなどは温かいだけが取り柄の「餌」と言えるようなものが供されるが、ビジネス以上に関しては地上のレストランと遜色の無いものが供される。最上位のファーストクラスには有名料理人の監修した、レストランそのままのメニューを出す航空会社もある。
まずい!もういっぱい・・・は過去の話
機内食は往々にしてまずいと言われる。これには理由があり、コストカットという最大の理由と、航空機内という特殊環境で衛生面の配慮をするとどうしても味が落ちざるを得ないという理由がある。路線によっては着陸空港にケータリング会社が無いこともあり、その場合は往復分を積むせいでさらに味が低下すると考えられる。ただし、まずいのは一部海外の航空会社のミールだけで、最近では調理・保存技術の発展により味の面ではだいぶ改善が見られる(海外の航空会社は依然「餌」レベルからの向上が見られないという話も聞く)。
もっともこれらの要因以外に、気圧の変化により味の感じ方が変わる(飛行中は湿度10~20%と乾燥している為、味覚・嗅覚が鈍る)、機内食のメニューに対して過剰な期待をしそれが裏切られた結果まずく感じる、といったものもあり、これらが「まずさ」の根本原因だという見方もある。
Beef or Chicken or Kosher?
たいていの場合機内食のメインは二種類用意される。エコノミーでは乗客人数の半分ずつ用意し、後ろのほうの乗客はたいてい不人気の残り物になるが、それも運と思ってあきらめるしかない。ビジネス以上に関しては2種類であるが、事前予約で日本食にすることもできるし、ビジネスでもビジネスクラス乗客の半数を積み込む(日系キャリアなら)など航空会社によってまちまちである。ファーストに関しても航空会社によるが、ファーストクラス搭乗者に対してメニューの希望調査が、直接搭乗者あるいは手配している旅行会社経由で行われ、決められた数しか積み込まないようになっている。
特別食
宗教的戒律・医学的理由・信条などの理由で食べられるものに制限がある場合は事前にオーダーをすることで長い機内での滞在の際に食いっぱぐれることが無くなる。ただし、直前では用意できないメニューもあるため、72時間以上前、可能なら航空券購入時からオーダーすることが推奨されている。一例を挙げると、
- イスラム教徒向け・・・豚肉やアルコール類を使わない
- ヒンズー教徒向け・・・牛肉や豚肉を使わない、鶏肉中心
- ベジタリアン向け・・・肉や魚を使わない、野菜メイン
- 低塩食・・・調味用の塩を使わない
- チャイルドミール・・・いわゆるお子様ランチ
など様々である。
機内食ならではの調理
地上に比べ、機内食ならではの調理がいろいろ存在する。
前述のとおり、機内は乾燥している為、飛行中は味覚・嗅覚が鈍るのが一般的。その為、味付けもハッキリとした、地上滞在中より濃い目の味に仕上げられている。例えば焼く前に塩コショーをした肉に対して、焼いた後にもう一回塩コショーを振るといった具合である。
そして、納品後に機内で客室乗務員が温め直す為、肉の場合、工場出荷段階ではレアに焼き上げ、温め直し時の焼き過ぎを防いでいる。
一方、機内での調理には制約がある。テロ対策や事故防止の観点から包丁や火器類の使用は禁止(食器もナイフ・フォークは9.11テロ以降プラスチック製に切り替わった)。調理道具も専用のスチームオーブンしか使えない。加えて最終的な調理をする人は客室乗務員。メニューの切り替えや有名シェフとのコラボ機内食の開発では、これらの条件をクリアしながらの商品開発が求められている。
乗務員のメニュー
乗務員のメニューは運行の安全対策の一環として乗客とは別のメニューが用意される。これは乗務員が食中毒で全滅しないようする配慮であり、メニューは乗客とは同一ではなく、乗務員全員が同じものを食べるということがないようになっている。特に機体を預かる操縦士・副操縦士に関しては厳格になっている。内容はエコノミーの容器につめられたビジネスクラスのミールというなんとも役得なものである。しかし、航空会社によっては乗務員用を個別に用意せず、乗客に供されなかったファースト・ビジネスクラスのメニューを食べる会社もある。
貨物機・軍用機の場合
貨物便や長距離任務中の軍用機(海上哨戒機や輸送機や長距離偵察機の一部)は旅客機におけるエコノミークラス相当の内容のメニューを交代でセルフサービスで食べることになっている。但し客室乗務員は乗っていない為、貨物の関係で添乗している荷主の分も含めて手の空いているパイロットが用意しなければならない。当然、アルコール類は積まれない。
政府専用機の場合
各国の政府専用機も当然機内食は存在する。大抵の場合は自国または訪問先のケータリング業者やホテルに発注している。日本国政府専用機の場合は苫小牧市内のホテルに発注(過去にはJAL系列の業者に発注していた。機材交替時にANA系列に変更予定)。メニューは民間のエコノミークラスとほぼ同等。
但しこれには、アメリカ合衆国大統領専用機(通称エアフォース・ワン)という例外が存在する。毒物混入防止の観点から現地調達は一切禁止。食材調達から最終的な調理まで一貫して自前で行う。流れを示すと、
という流れである。
み、水・・・
機内食と同じくらい、いや場合によってはそれ以上に重要とも言える飲み物に関しては、昔はどんな飲み物(アルコール含む)もただで飲み放題であった。しかし911テロ以降の航空会社再編で企業体力とコスト意識が供給スタイルに如実に現れている。
上から順に
- 今でも何でも呑み放題(ビジネス以上は制限なし、エコノミーでも高い酒は有料で飲める会社もある)
- アルコールは有料・チケット制
- どんな飲料でも有料・チケット制(水も有料という会社もある。この場合はペットボトルのミネラルウオーター)
といった風に3段階になっている。
また、イスラム文化圏の国の航空会社のアルコール類については国の世俗化度合いにより、
と様々である。
ちょっとした豆知識
- 過去に日本航空は長距離国際路線のファーストクラスのために機内にすし屋のカウンターを設置していた。しかし安全性の問題や座席スペースの確保ですぐに撤去される。海外旅行が高嶺の花だった時代の話。
- 日系航空会社(J○L)ではビジネス以上で機内で炊飯器を用いて炊かれたご飯を食べられる。旨いのだろうか。
- 特別機内食は信者や該当する身体問題を抱えた人だけがオーダーできると思われているが、実はそんなことは無く、航空券やパック旅行の手配を依頼している旅行会社に頼めばユダヤ教徒でなくてもコーシャーミール(ユダヤの祈祷を受けたミール)を食べられるし、肉食女子でもストリクトベジタリアンを機内で食べることができる。注文できるからといって、行きはヒンズーミール、帰りはイスラムミールなどというやりすぎな場合は航空会社はおろか渡航国の当局にマークされる諸刃の剣という話もある。
- 同じメニューでも作っているケータリング会社によって雲泥の差だったりする。機内食は博打である。
関連動画
関連コミュニティ
機内食に関するニコニコミュニティを紹介してください。まじで。
関連項目
- 料理
- ニコニコ海外旅行
- ニコニコグルメ旅行
- エコノミー回避(メニュー的な意味で)
- Wikipedia - 機内食
- 日本航空の国際線搭乗クラス・機内サービス
(右側にある機内食検索を実施ください)
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