『機動警察パトレイバー』とは、クリエイター集団「ヘッドギア」が企画・原作を担当した、1988年に発表されたOVA・コミックをはじめとする一連のメディアミックス・シリーズ作品の総称である。
概要
ゆうきまさみが発案した「企画ごっこ」から生まれたアイデアを元に、出渕裕、火浦功の協力を得てアニメの企画を提出したがこの時は実現しなかった。後に伊藤和典、高田明美、押井守らが参加しヘッドギアを結成。再度アイデアを詰めた結果今度は企画が通り、OVAシリーズが制作された。
そしてOVA版が人気を博し、それに支えられる形で劇場版、漫画、TVアニメetc…と多角的な展開がなされていった。
初出となるOVAのリリースからすでに20年以上経過しているが、それでも細々とではあるが新作が発表されている息の長い作品である。
あらすじ
舞台は1998年の東京。
ロボット工学の発展により、多足歩行式大型マニピュレーター「レイバー」が誕生した。
レイバーの発展と普及、さらに東京湾護岸及び埋め立て工事「バビロンプロジェクト」により日本は好景気であったが、一方でレイバーを用いた犯罪行為も増加していった。
そこで警視庁は警備部内に「特科車両二課中隊(特車二課)」を設立。パトロール用レイバー、通称「パトレイバー」を配備し、レイバー犯罪の取り締まりに当たらせていた。しかし、レイバー犯罪の増加に対し、現在の特車二課では対抗しきれなくなってきたため、警視庁は人員と装備の増強を決定。最新鋭のパトレイバーを擁した「特車二課第二小隊」が新たに編成されることとなったのだが…。
OVA、劇場版、漫画版と各作品で微妙にあらすじや細部が異なっているが、基本的には上記のあらすじを把握しておけば作品を理解するのに大きな支障は生じない。どの作品から見ても大丈夫である。
メインのロボットが兵器ではなく車両扱いであったり、レイバーのメーカーが登場したり、それまでの作品ではあまりスポットが当たらなかった整備員が強烈な存在感を示したり、エピソードによってはレイバーが全く登場しない…等、発表当時は何から何まで異色のロボットアニメあるいはロボット漫画であった。
主要登場人物
- 泉野明(CV:冨永みーな)
- 篠原遊馬(CV:古川登志夫)
- 後藤喜一(CV:大林隆介)
- 太田功(CV:池水通洋)
- 進士幹泰(CV:二又一成)
- 山崎ひろみ(CV:郷里大輔)
- 香貫花・クランシー(CV:井上瑤)
- 熊耳武緒(CV:横沢啓子)
- 南雲しのぶ(CV:榊原良子)
- シバシゲオ(CV:千葉繁)
- 榊清太郎(CV:阪脩)
- 松井孝弘(CV:西村知道)
- 内海(CV:鈴置洋孝)
- バド(CV:合野琢真)
- 黒崎(CV:土師孝也)
- 福島隆浩(CV:小山真司)
- 実山剛(CV:辻村真人)
映像作品の一覧
- 初期OVA(後に「アーリーデイズ」と命名)
- 機動警察パトレイバー the Movie(本編のタイトルロゴには「the Movie」類の表記は無く「THE MOBILE POLICE」の副題となる)
- TVシリーズ
- 後期OVAシリーズ(DVDでは「NEW OVA」と呼称している)
- 機動警察パトレイバー2 the Movie
- WXIII PATLABOR THE MOVIE 3
- ミニパト
- THE NEXT GENERATION -パトレイバー-
製作・放映順に一覧にしている。また、「PATLABOR THE LIVE ACTION MOVIE」というパイロットフィルムが存在する。
旧OVA&劇場版
旧OVAおよび三作にわたる劇場版は世界観を同じにしており、押井守監督を中心とした「日常的な・作業機械的なロボット」を描いており、OVAは主役であるはずのイングラムがあっさり逮捕目標のレイバーに腕をちぎられたり、自衛隊のクーデターの際にはまったく出番がなかったり、イングラムが大幅強化された!と思ったら夢オチだったりと、主役メカが圧倒的に役立たずというアンチヒーロー的な作風に満ちている。さらに、往年の特撮番組や名作映画などのパロディも多く、これらの要素はTVシリーズや新OVAにも引き継がれる。
劇場版においてはそれがさらに加速し、濃密過ぎる人間描写・サブメカの描写にスポットが当る一方でイングラムの存在意義・描写は希薄化。2作目ではレイバー全体の存在意義が希薄になり、第二小隊の面々は脇役に。3作目のWXIIIに至っては特車二課含めレイバーに絡む全てが脇役にまわる有様である。
押井守監督の「人間と機械の係わり合いや、ギャグ・パロディなら出来る、でも単なるスタンダードな犯罪物・正義の刑事物はやりたくない」というスタンスがそのまま反映された作品郡であり、ロボットアニメとしてのパトレイバーの異質さを象徴している。
TVシリーズ&新OVAシリーズ
TVシリーズおよび新OVAシリーズは基本設定こそ旧OVAから引き継がれているものの、作風は大きく異なる。週刊少年サンデーに連載された漫画版(後述)の後追いで製作されたため、シナリオに共通点が多い(※ただし、漫画版が原作というわけではないので注意)。
ストーリーは、コングロマリットの大企業シャフトの犯罪組織「企画7課」との戦いを主軸においている。レーザー砲を持つ敵レイバー「ファントム」や、脅威の性能を有する「黒いレイバー」との戦いなど、全体的にTVアニメらしいケレン味がある。しかしやはりというか、人情味溢れるテロリスト、整備班たちが向かった下水道にひそむ謎の巨大生物、保険屋のおばちゃんの新事業とは?、どっかでみたような一兆度の火の玉を吐く宇宙怪獣...など独特のパトレイバー節は健在である。
ミニパト
パタパタ人形劇...ではなく、れっきとしたアニメ作品である。劇場版第3作「WXIII」と同時上映された劇場用短編作であり、特車二課の日常、装備、暗部を専門用語を交え徹底解剖する。1話10分程度で全3話、WXIIIひと上映につき1話ごとのシャッフル形式で上映された。
一見ライトファン&子供向けに見えるが、前述のとおりパトレイバーファン向けのディープな作品のため、間違っても初見の方がレンタル店で気軽に借りてはいけない(というかレンタルリリースされてない)。
PATLABOR THE LIVE ACTION MOVIE
1:40から
1998年に制作されたパイロットフィルム。竹内敦志によってデザインし直された3DCGのイングラムと実写の背景映像を合成している。押井守はデジタルエンジンプロジェクトで「G.R.M.」の制作を行っていたがこれは凍結され、その後押井は実写版「パトレイバー」と「AVALON」の二つの企画を提出したそうだが、この時に制作されたものと思われる。(最終的にAVALONの制作がスタートし、実写版パトレイバーは実現しなかった。)
尚、この映像はNHKの番組「ステージドア」(押井守と竹中直人の対談)で放送されたほか、PS版のゲームに特典映像として収録されている。 (映像のBGMはKenji kawai Cinema Anthologyの特典ディスク「Cat Nights」に収録)
THE NEXT GENERATION -パトレイバー-
漫画、アニメ版より後年の特車二課に焦点を当てた実写作品。シリーズ作品(48分×12話(+0話)を7章に分け、2014年4月より順次イベント上映)と長編映画(2015年5月1日公開)で構成されている。個別記事参照。
→ THE NEXT GENERATION -パトレイバー-
書籍(漫画&小説)
漫画版は旧OVA発売とほぼ同時に週刊少年サンデーにて連載された。作者はゆうきまさみ。全22巻。
原作と勘違いされることも多いが、氏も言っているように「あくまでメディアミックスの一環」である。
TV版と同じく、企画7課の策謀、犯罪行為を阻止すべく出動する第二小隊の活躍(失敗?)を中心にストーリーが展開するが、大企業の生々しい闇、子供の人身売買、外国人労働者の就労環境など、重いテーマを数多く内包しており、しかもそれらが嫌味になりすぎないような巧みなストーリー構成となっている。派手な戦闘描写や必殺技はないが、しかし不思議なほど爽快感にあふれた、正義と悪との戦いを描く少年漫画である。
小説には、劇場版の小説版(1作目&2作目)と、独自のストーリーを描いた「シンタックス・エラー」「サード・ミッション」「ブラック・ジャック」がある。世界観的には旧OVA&劇場版に順ずる。それぞれ登場人物の過去や出来事に触れ、彼らのキャラクターを掘り下げる内容となっている。
音楽
主題歌等一部の楽曲を除き、パトレイバーの映像作品の音楽は全て川井憲次が手がけている(ゲームについては不明)。氏はヘッドギアには所属していないが、パトレイバーの世界を作り上げた功労者の一人であることは間違いない。
旧OVAで6枚(劇場版1作目のサントラ含む)とCD-BOX、TV及びNEW OVAでサントラ5枚とCD-BOX、その他テーマコレクション、ボーカルコレクション、コンサートツアー、チケマガ、主題歌シングル、各劇場版のサントラ等々…と多くの関連CDが発売されている。
ゲーム
ウィキペディアによると、これ以外にファミコンディスクシステム、PC-98、PSP用のソフトが存在するようだ。
また、押井守著「注文の多い傭兵たち」には、実現しなかったパトレイバーのCD-ROM用ゲームの企画書が掲載されている。
また、プレイステーションポータブル用にDL販売されていた(※2016年現在では配信終了のため新規購入不可)「スーパーロボット大戦Operation Extend」 にまさかの参戦を果たし、ファンを沸かせた。
火力はさほどでもないが攻撃に付与されているデバフが優秀であったり、レイバーが宇宙用に改修されるなど、スパロボならではの見どころがあった。
どれから見ればいいの?
あまりにも多くの媒体で発表されているため、どれが本当(オリジナル)のパトレイバーなの?という疑問を抱かれるかもしれないが、それは間違いである。
前述した通り、各作品において設定やストーリー展開はそれぞれ異なっているので、実際に見て貴方が「一番好き」と思えたシリーズ、それが「貴方にとっての『これぞ』」なのである。
一応、初心者向きとしては漫画版がオススメ。
「『第二小隊の設立と泉野明の入隊』という、物語の取っ掛かりとなるエピソードから始まる」「シリアスとギャグの配分が丁度良い」「版を重ねているため古本屋などでよく見かけ、手に取りやすい(図書館に置かれていることも)」といった理由があるため。
次点で旧OVAとTVシリーズ。こちらも前述の条件を満たしているが、なにぶん古めの作品であるためレンタルビデオ店等で置かれていないことも多い。
なお、『ミニパト』はいわゆる「上級者向け」であるので、リボルバーカノンの口径が何mmかをソラで言える位の知識が身に着くまでは手をつけないように。
関連動画
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関連項目
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