機甲戦記ドラグナーとは、1987年に放送開始されたテレビアニメである。
概要
機甲戦記ドラグナーは、日本サンライズ(現:サンライズ)の製作したテレビアニメである。1987年2月7日から1988年1月30日まで、名古屋テレビ(テレビ朝日系)で毎週土曜日17:30~18:00に全48話が放送された。
後半の路線変更が仇となって商業的に失敗した前番組機動戦士ガンダムZZの反省に基づき、「明るく楽しく」をモットーに、「ガンダムを再構築する」ことを目標に本作機甲戦記ドラグナーは制作された。
監督は、1982年の戦闘メカザブングルから足掛け五年にわたって監督を努めてきた富野由悠季から、太陽の牙ダグラム(高橋良輔と共同監督)、銀河漂流バイファムの神田武幸にバトンタッチされた。神田監督はバイファムでメインキャラのバーツの死亡退場に強硬に反対したことで知られており、富野監督の殺伐とした世界に疲れ果てていたアニメファンの間では期待を持って迎えられた。
本作は、前年に大ヒットした映画トップガンを強く意識しており、大張正己の担当したオープニングアニメにもそれが顕著に現れている。
ちなみに、大張氏は大河原邦男デザインから大幅にアレンジした作画をしており、アニメファンからはバリグナーとして親しまれたが、あまりにも設定画に似ていないことがスポンサーのバンダイを怒らせてしまい、14話から設定画に近づけた作画に差し替えられている。
主役メカのドラグナーは三機登場したが、接近戦のD-1、長距離砲撃および後方支援のD-2の他に、索析、電子戦、レーダーを担当するD-3の存在が斬新であった。また、D-1専用の支援ユニットとしてキャバリアー0があるのだが(10話で退場)、放送前の時点ではD-1はキャバリアーを装着した状態しか公開されないというサプライズ演出が行われていた。
他にも特筆すべき点として、この三機より量産機であるドラグーンの方が高性能というものがある。ドラグーンの開発成功によりドラグナーの役目は終わったかに見えたが、D-1とD-2はカスタム化され再び戦線に復帰した(D-3は元々直接戦闘向きではないため、そのまま据え置かれた)。
番組後半は路線変更され、グン・ジェム隊登場など漫画的な展開になってしまうが、ガンダムZZのような陰惨な展開にはならず、メインキャラもほとんど死亡することなく終わった。
主題歌には、前期は重戦機エルガイム、機動戦士Zガンダムの鮎川麻弥が起用された。筒美京平が作曲を担当した夢色チェイサーは熱く盛り上がる青春ソングである。後期は、バラドルに転向する直前の山瀬まみが起用された。井上大輔が作曲を担当したスターライト・セレナーデもまた名曲である。
打ち切られることはなく一年間の放送を完遂したが、結局ドラグナーを最後にバンダイはスポンサーを降りしてしまい、リアルロボットアニメは本作終了をもってしばらく中断の憂き目を見てしまう。1クールの中断の後サンライズの新番組が同枠で始まったが、それはタカラがスポンサーの鎧伝サムライトルーパーであった。
物語
スペースコロニー「アルカード」に住む少年ケーン、タップ、ライトは地球連合軍と交戦中の「ギガノス帝国軍」の最新鋭機「ドラグナー」のパイロットに登録され、それを奪取。ギガノスとの戦争に身を投じることになる。
登場人物
連合軍
- ケーン・ワカバ(声:菊池正美)
- ドラグナー1型パイロット。リーゼントだったがベン軍曹に切られた。某作品に先んじて終盤ライバルキャラに喰われた。一時的ながら敵にもなってしまうが、ラスボスが双方にとって敵であり、ラスボスを倒すために共闘という形に落ち着いたため、一応の面目は保たれた。
当初から卓越した操縦センスを持っていた訳でも、覚醒して突然強くなる訳でもなく、強敵と出会う毎にそれを乗り越えて一層強くなる熱血主人公だった。だが被弾して追い詰められて奇抜な作戦で相手を撃退したり、強敵と出会い撃墜されてもそれを越える為に剣の師匠の下で命懸けの修行をして乗り切ったように、ただの短気で頭の弱い男という訳ではないのだろう。普段頭が回らないだけであって。 - 日本人の母と地球連合軍参謀である米国人の父を持つ混血児で、劇中日本にある母親の故郷・青森に立ち寄る事になるのだが、タップとライトは日本語が全く理解出来なかったが、ケーンは祖母等と普通に会話をしていた。
余談だが、33話がマイヨメインの話だった為、主人公なのにサブタイ前で出番が終った回があった(担当声優の方もその回は1時間で収録を終えたらしい)。 - タップ・オセアノ(声:大塚芳忠)
- ドラグナー2型パイロット。ケーンの友人である黒人。ニューヨークの大家族の息子。
陽気な上に心優しい性格で、自他ともに認めるフェミニスト。ローズの看病をしたあたりから少しずつ彼女と距離が近くなっている。
家族へ仕送りをしたり、大事なCDプレーヤーを犠牲にしたり、鈍重な機体故に被弾したりと結構な苦労人。 - ライト・ニューマン(声:堀内賢雄)
- ドラグナー3型パイロット。ケーンの友人で、隊の「知恵袋」としても活躍。実は英国貴族の家系。
尚、彼が乗るドラグナー3型は偵察・電子戦用に開発された機体で、高度な索敵能力とジャミング装置を持ち、二機のサポート的役割が強い。その活躍は後述。
が、能力をフルに生かせば敵の索敵を妨害しつつ攻撃範囲外から一方的に攻撃出来るのだが、それだと演出上困るとの理由でケーンの血気に逸る行動の尻拭いの役目にされ、サポートというよりは突撃隊の一員として強敵に挑み、度々被弾したり頭部の皿を破壊されたりしていた。 - リンダ・プラート(声:藤井佳代子)
- 輸送艦に乗り合わせていた難民であり、後にドラグナー隊のオペレーターとなる。
父はドラグナーの開発者であり、兄はギガノスのエースパイロットという複雑な立場に居る。 - ダイアン・ランス(声:勝生真沙子)
- 当初は難民として同行していたが、その正体は要人を護衛していた情報部所属の軍人。
途中で別の任務に就くために離脱。終戦後は結婚の様子が描かれている。メインキャラ女性陣の中で唯一三人組と関係を持たなかった。 - ローズ・パテントン(声:平松晶子)
- 戦災により家族と生き別れた難民であり、後にドラグナー隊オペレーターとなる。
その辿った経緯を感じさせないほどに明るく振る舞う少女。付きっきりの看病をしてくれたタップに徐々に惹かれていく。
キャラクターデザインの大貫健一によれば、当初はヒロインとしての案もあったようだ。 - ベン・ルーニー(声:島香裕)
- いわゆる鬼軍曹。しかし人情派。
- 当初民間人だったケーン達の教育係にされ、時には厳しく、たまに優しく、しかし厳しく叱咤していった。
劇中ケーン達が昇格した際に、彼より階級が上になった為に頭が上がらなくなるも、その信頼関係は揺るがなかった。 - ジェームズ・C・ダグラス(声:大滝進矢)
- 地球連合軍の中尉。
- 実は彼こそがD兵器の正式なパイロットになるべき人物だったが、ケーン達に奪われてしまった為に、彼等の兵法教育係となる。
- 後に量産機であるドラグーンとなるも、D兵器のパイロットになる事で約束されていたであろう出世の道を閉ざされてしまった上に、思いを寄せていたらしいダイアンも部下に取られた事を考えると、この戦争の最たる被害者ではないだろうか?
- ラング・プラート(声:千葉耕市)
- ドラグナーの開発者であり、リンダとマイヨの父。
もともとギガノスの技術者であり、かつてはギルトールとも親友であったが、連合に亡命した。
しょっちゅう饅頭をかじっている変なオッサンだが、敵軍にいる息子のことで心を痛める。
ギガノス帝国軍
- マイヨ・プラート(声:小杉十郎太)
- もう一人の主人公。「ギガノスの蒼き鷹」とも呼ばれるパイロット。リンダの実の兄。
元帥ギルトールに心酔しており、彼自身も若き将校たちの中心的存在となっている。
当初はドラグナー隊のライバルとして戦いを繰り広げていたが、ギルトール暗殺事件の場に居合わせたことで暗殺の犯人に仕立て上げられてしまい、ギガノスを追われる身となってしまう。
最終話のラストシーンにおいて、「完」の文字と共に全てを持っていってしまった。 - ダン・クリューガー(声:柏倉つとむ) カール・ゲイナー(声:島田敏) ウェルナー・フリッツ(声:竹村拓)
- マイヨの部下「プラクティーズ」の三人組。短髪の黒髪がダン、金髪がカール、目つきが悪いのがウェルナー。
お坊ちゃん気質であり、権威とプライドに固執する傾向がある。7話では己らの手柄の為に友軍を射殺している。
しかし話が進むにつれ、マイヨへの敬愛が強調され、忠臣として活躍するようになっていく。 - リー・スー・ミン(声:島津冴子)
- 「グン・ジェム四天王」の一人。搭乗機の主な武器がチェーンソー「ハイブリッドサージ」であるため、ケーンからはノコギリ女と言われている。
四天王の中で唯一生き残り、終盤ではマイヨに命を救われたことで、マイヨやプラクティーズに協力することに。終盤、偶発的な事態があったとはいえドルチェノフ打倒の立役者の一人となった。 - グン・ジェム(声:加藤治)
- 「グン・ジェム四天王」を配下に置くギガノス軍大佐。
ギガノスの汚物と呼ばれるほどに横暴で残忍かつ狡猾。
敵は勿論の事味方からも恐れられる存在だが、部下思いな面もあり、部下の死に慟哭したり、機体の損傷を顧みず弔い合戦に走ろうとしたことも。
右目は後にケーンの師となるヤム・ラオチュンとの決闘で失明し、眼帯をつけている。
この作品のラスボス的役割であろう機体、ギルガザムネを最初に操縦した人物だが、システムが原因で脳に多大な負荷が掛かった為に精神に異常をきたして暴走してしまう。 - ジン(声:島田敏) ゴル(声:島香裕) ガナン(声:笹岡繁蔵 外部出演代役:大友龍三郎)
- 「グン・ジェム四天王」の三人。
銀髪で顔立ちが整っているのがジン、理由は不明だが釘を常に加えている長身痩躯の男がガナン、大男で頭が回らないのがゴル。
当初はドラグナー隊を圧倒していたが、徐々に実力差を埋められ、次々戦死していった。
・・・が、ジン中尉は他の二人とは違いドラグナー隊ではなく、暴走して見境の無くなったグン・ジェムに殺された。 - ギルトール(声:大木正司)
- ギガノス軍元帥。小説版ではフルネームが「メサイア・ギルトール」であり、息子に「クレスタ・ラナ・ギルトール」が存在する。
理想高き男であり、地球の腐敗を憂いギガノス帝国を立ち上げた。その目的からか、マスドライバー攻撃は連合の主要都市に留めており、全面攻撃をよしとしなかった。
最終的にドルチェノフの凶弾を受けてこの世を去る。 - ドルチェノフ(声:飯塚昭三)
- ギガノス軍中佐。結果的にギルトールを暗殺し総統の座に着く。ラスボス。
マスドライバーでの地球に対する無差別攻撃を提言していた。
高々中佐の身分で自分の提言を受け入れないギルトール元帥を(はずみとはいえ)殺害しその勢いで軍部を掌握、ケーンの母親を人質とする卑劣な手を使い彼を投降させてかつての仲間達と戦わせたり、専用のギルガザムネを用意していたり、正にラスボスの鏡。
その最後はケーンとマイヨによってギルガザムネの脱出装置を破壊され、鉄の棺桶の中で酸欠により苦しむ中、ギガノス帝国の栄光と繁栄の幻想を見つつ、月へと落下した要塞と共に散った。
作品の評価・影響等
本作は前番組まで続いていた「ガンダム」のリニューアルを目標として制作された。
要所に洋画などの要素を取り入れつつ、ガンダムよりリアルに近づいた形で様々な要素が形成されたものの、放送時は既にリアルロボットブームが終焉に差し掛かっており、前半の内容や展開は丁寧でこそあったが当時の視聴者を引き付ける目新しさに欠け、中盤以降は路線変更を余儀なくされている。
前半は大貫健一が務めていたキャラクターデザインも後半のキャラクターは芦田豊雄がデザインしたより漫画的なものになっており、作風も先述の「剣の師匠との修行の結果、ロボットの操縦でも敵の動きを見切れるようになる」ことに始まりリアルロボットの描写からかけ離れたものとなっており、今でもこの路線変更は賛否両論である。
またストーリー面でも、ケーンらドラグナー隊よりマイヨやグン・ジェムなどのギガノス側にスポットが当たるようになってしまい、元々ドラグナー隊の「物語をけん引する要素が少ない」という弱点が明確になり、遂には終盤の何話かのスポットをマイヨ・プラート達に奪われてしまう。
これらの要素から評価は著しく低く、時期の影響もあり映像媒体も普及しなかったが、クロスオーバーゲーム作品「スーパーロボット大戦A」に登場。同作と「スーパーロボット大戦MX」の評価が高かったのもあり、ドラグナーの知名度は一気に上昇。ROBOT魂などで立体化の機会が多くなり、2005年にはDVDBOXも発売されるなど一気に知名度が上昇し、それに伴い本作も再評価を受けることとなった。
実際、当時の環境がリアルロボットにとって最悪だっただけであり、青春活劇の要素が強い堅実な作風やリアル性の強いロボット描写など見どころは多く、路線変更自体も好みに合う人間にとっては悪いものではなかった。時代に恵まれなかった作品というのが正直なところだろう。
後年まで続く本作の最大の功績は、それまでのロボットアニメではさほど重要視されていなかった「情報戦」の概念を大きくクローズアップしたことだろう。
ライト・ニューマンの駆るドラグナー3型の活躍は他のどの機体とも異なる異色の活躍であり、単なる偵察機に留まらず、ミサイルの誘導機能を書き換え逆に敵機を攻撃させる、敵の情報系統にハッキングをし誤情報で混乱を巻き起こすなどをやってのけた。これらの活躍によりロボットアニメ界に情報戦の概念が浸透し、ガンダムのみならずマクロスシリーズなどのリアルロボットにも電子戦の概念が取り入れられ、独自の活躍を見せている。
『機動戦士ガンダムSEED』の監督、若き日の福田己津央も演出として参加していた。そのため同作や続編『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』では、ドラグナーを意図的に意識した描写や設定が数多く見られている。悪いところまで受け継いでしまった気もするが。
関連作品・外部出演など
小説版
園田英樹によるノベライズ版が存在。元帥ギルトールの息子である「クレスタ・ラナ・ギルトール」が登場するなど、アニメと異なる部分も。
漫画版
コミックボンボンで半年間連載していた。途中からオリジナル展開が発生し、試作型メタルアーマー「ゲルニカ」にマイヨが登場する、ギガノス工作員「ピンク・J・フォックス」の登場などがあるが、残念ながら単行本化はされていない。
パチスロ
2015年10月後半よりサミーのスロット台が稼動開始。本機で追加された新楽曲「空の終わり」には、現在の作風で新規に書き下ろされたオープニング風映像が存在する。なお、専用映像の監督・絵コンテ・演出・メカ作画監督、ゲーム中の全メタルアーマーの3DCGモデルとアクションの監修、これら全てを大張正己が担当している。
主に原作後半の話をメインに扱っている。
収録されている前期OP映像以外の全てが、後年のDVDBOXの絵柄をベースとしたデザインのアニメカットと3DCGで構成されており、キャラクターデザインの変化を最も色濃く受けたであろうリンダの変わり方に驚いた人間も。
スーパーロボット大戦シリーズ
先述の「スーパーロボット大戦A」で初参戦し、「スーパーロボット大戦MX」で有名となる。
ソーシャルゲームを除き「基本的にはドラグナー隊が自軍入りし、1~2話だけ終盤ケーンが一時離脱する」「マイヨ&ファルゲンの加入はドラグナーシナリオ終了後」「ドラグナー3型が異常に強い修理機」というポイントが共通している。
「スーパーロボット大戦GC(XO)」以降は「スーパーロボット大戦Card Chronicle」にのみ参戦と動きが落ち着いていたが、ソーシャルゲーム「スーパーロボット大戦X-Ω」の第2期参戦作品として発表。2016年7月からのイベント「運命の騎兵隊」にて、先述の「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」との初共演となる。「CC」では実現しえなかった「SEED」シリーズとの明確なクロスオーバーは今回が初。
Another Century's Episodeシリーズ
参戦作品が一新された「Another Century's Episode R」を除き全作品に出演している。
シナリオに深く関わるのは「2」と「3」であり、さらに「3」ではファルゲンの強化型「ファルゲンカスタム」が公認要素として登場した。
関連動画
関連項目
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