正当行為とは、罪を犯しても刑を免れ得る行為の一つである。正当業務行為とも
概要
第35条
法令又は正当な業務による行為は、罰しない
刑法より
通常、人を殴ったり、人のものを壊したりすればそれぞれ暴行・傷害罪、器物損壊罪に問われる。しかし、その行為がやむを得ないものだったり、職務上のものであれば違法性が無いものとみなされ、罪に問われることはない。難しい言葉でいえば違法性阻却事由とよばれる概念である。
このことは刑法36条の正当防衛の方は、一般的にもよく知られている概念だが、その一個前の条文に記載されている正当行為もまた、等しく刑を免れうる要素として刑法に記載されている。
正当防衛が法令になくても、急迫不正の侵害があれば反撃しても罪には問わないよと言ってる条文ならば、こちらは法律に載ってたり職務として正当に行った行為だったら罪には問わないよと謳っているものなので、それぞれアプローチが少々異なっている。
どこまでが正当行為で、どこからが違法なのかは、正当防衛と同じく頭の痛い問題ではあり、議論の続いているテーマである。
正当行為の例
正当行為は条文に記載されてる通り、法令行為と正当業務行為に大別される
法令行為
- 警察官による逮捕(これは身柄確保に係る建造物の破壊なども該当し得る)
- 私人による現行犯逮捕
- 刑務官による死刑執行
- 消防士が救出・消火活動の為に行う、建造物破壊
- 公営ギャンブルによる賭博(競馬・競輪・競艇などそれぞれ対応する法律によって認められている)
- 監察医によって行われる司法解剖(当たり前ですが勝手に解剖したら死体損壊罪に問われます)
- 防衛出動発動後の自衛隊員による武力行使
など
正当業務行為
- 医師による投薬・外科手術(今日では患者への説明と同意を要するなどの厳しい要件が課せられている)
- プロレスラー、プロボクサー、力士などのルール範囲内での暴行及びケガによる負傷・死亡(稽古や練習なども範囲内ではあるが、不必要なしごきやいじめなどは当然正当業務行為とは認められず罰せられる)
- 弁護士による依頼人への弁護行為
- 記者による対象への取材(取材のために守秘義務を破ると秘密漏示罪に触れるおそれがあるため)
- 理容師や美容師による調髪(勝手に髪を切るのも傷害罪に触れるおそれがある)
- 労働者や労働組合による正当な労働争議(外形的には威力業務妨害罪などにふれるおそれがある)
など
なお、刑法35条における正当業務行為の「業務」は広く捉えられていて、必ずしも対価を得るプロである必要はないものと解されている。例えば運動部の練習や試合中におけるケガなどもこれにあてはまって、傷害や暴行罪は免れることがある。(治療費などの民事責任はまた別の話だが……)
正当じゃない行為
正当・正解っぽいが、それっぽい理由をつけて正当性を主張する悪質な事例もある。また正当・正義であると免罪符の代わりに好き勝手な横暴をしてくる場合もある。
- どこもこれが普通だから、お前は常識も知らんのか。(サービス残業・ノルマ買取など)
- 効率の悪い方法とかじゃなくて、これが美徳。(根性論)
- 私が正しいと思うからお前らは黙って従え、反論は許さん。
- 野生のクマが出没して大被害が出てる?知るか!熊を殺すな!(by 都会人)
- 献金?霊感商法?うちの宗教が正しいのだからあなたも入信すべき。(しつこい勧誘)
- ××は過去に○○に対して△△をしたのだから、我々も△△しても良い。(某国)
毒親、クレーマー、モンスターペアレント、動物愛護団体、ブラック企業、カルト宗教、老害、面倒な団体など。
これが当たり前、正当であるから黙って納得しろといった事例は多い。本人に言い返しても「それが当たり前だ」と言われ進展はないので、少しでも違和感を感じたら相談・検索する、現状を疑う、記録・通報するといった方法は非常に有効である。
(例)正当なクレームだからと30分も電話して仕事を妨害すれば、普通に業務妨害罪である。
(例)しつこい宗教勧誘など、退去を命じても立ち退かなければ不退去罪にあたる。
「人間は 自分は絶対に正しいと思い込んだ時に 最も残酷な事をする」
関連項目
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