歯磨き(はみがき)とは、歯を磨くこと。食事を食べた後に歯ブラシで歯に付いた食べ物を掃除すること。歯に付いた歯垢などを落として虫歯などを防ぐ作業のことなどを意味する。
概要
歯磨きの歴史は古く、チンパンジーのような人間以外でも樹の枝で歯を磨くといった行動が見られ、ネアンデルタール人も化石から堅い楊枝で歯をこすったりしていたと推測されている。
日本でも古くから歯磨きは行われていた。 江戸時代には現在とは違う歯磨きの方法が行われており、その道具は一方が毛筆のように房状になっている房楊枝で、もう一方の先は尖っている爪楊枝になっていて、さらに柄の部分がカーブしていてその部分で舌掃除をするようになっているという道具であった。
歯磨きの道具
市販の歯磨き粉を使う方法もあるのだが、その歯磨き粉に含まれている発泡剤や香料等によって歯磨きが不充分であるにも関わらず「綺麗になった」と錯覚してしまう場合がある(特に子供)ので注意が必要。
なお、歯磨きだけで虫歯を防げる訳ではない。歯間や奥歯は場所的に磨き残しが多いために歯垢がよく残るので、歯間ブラシなどを利用したり、定期的に歯科へ行ってフッ素で予防してもらったりするといいだろう。
また、磨きすぎても逆効果の場合もあるので歯磨きの時間はほどほどにしておくべきだと思われる。
歯磨きの方法・条件
研磨剤の入った歯磨き粉の使用の正否、磨く時間・時期については専門家の間でも意見が分かれている。
ここではあくまで、これは当然、と意見が大きく一致しているもののみを記す。
雑な3回より丁寧な1回
子どもへの歯磨き指導でよく提唱される「3食後・30分以内・3分間」というスローガンは突っ込みどころが多い。
もちろん毎食後に磨くのはベストだが、食後30分以内に歯を磨くと歯が(非常にわずかだが)削れてしまうという説もあるし、きっちり歯垢を除去するには、3分間の歯磨きを1日に何回繰り返しても無意味である。
10~20分をかけ、歯ブラシ以外の道具も用いた丁寧な歯磨きを1日に1回は必ず行うことを心がけよう。
別に時間さえかければよい訳ではないが、ただ磨けば良いと言うわけでもない。
逆に言えば丁寧に磨ければ3分間でも良いのだが、実際にやってみればとても不可能なことだとわかる。
就寝前には必ず!
毎食後が良い、毎食前が良い、朝食後が良い、実は食間が良い、などと、歯科医学会でも様々な意見が飛び交う話題である「歯磨きの時期」だが、ほぼ全ての意見に共通しているのは就寝前が最も有効かつ重要であること。
これは、睡眠中は唾液の分泌量が減り、虫歯・歯周病の危険が跳ね上がるため。
どれだけ日中に歯を磨いても、歯垢が残った状態で寝てしまっては意味が無いと言ってよい。
逆に言えば、虫歯予防に最も重要なのは、歯を磨いた状態で就寝することである。
では、夕食後に歯を磨き、全く間食せずにその6時間後に就寝したとしても同じことか、と言えばそうでもない。
どれだけ丁寧に磨いても、磨き残しはわずかながら必ずあることを考えれば、就寝までにプラークは増殖するからだ。
また、歯磨き粉に含まれるフッ素は、唾液の少ない睡眠中の方が、洗い流されてしまう恐れが無く、効果をより発揮できると思われるのだ。
もっとも、これは些細な違いであり、重要なのは食べかす・歯垢を残して就寝しないことなので、就寝の段になって歯を磨き、間髪入れずに寝る!……などと気合を入れすぎる必要は無い。
歯磨き後の飲食は厳禁
常識だが、問題は飲み物。
例えば、夕食後に丁寧に歯を磨いたにもかかわらず、就寝前にスポーツドリンク・ジュースを飲んでしまっては意味が無くなる。
この場合、歯垢・食べカスが除去されている分まだマシだろうが、食べカスが残らないとはいえ砂糖の入った飲み物を口に入れてしまうと、やはり寝ている間に虫歯が進行する。
就寝前に歯を磨いたとして、寝る前に飲んでいいのは水・茶・コーヒーなどの無糖のもののみである。
フロスを必ず使用
歯ブラシだけではどれだけ頑張っても50%しか歯垢を除去できない。
歯と歯の間……隣接面の歯垢・食べかすは思いの外多く、その割には歯ブラシでは除去できないからだ。
これらの歯垢は、『魔法の糸』=フロスを使用しないと除去できない。
これを使うことで、歯垢を70~80%除去できる。
日本ではよほど気を使っている人しか使っていないように思えるが、歯への意識が高い海外ではこの使用は常識であり、『歯磨き』と言う言葉はブラッシングとフロッシングを合わせたものを指すほどである。
歯ブラシは柔らかめ
歯垢染め出し剤を使用して磨けばわかるが、柔らかい歯ブラシで優しく磨いても歯垢は普通に取れる。
むしろ、その方が効率よく歯ブラシが当たると言われる。
本来は、『かため』という歯ブラシを購入する時点で間違いを犯しているとすら言える(『かため』が何が何でもおかしいというわけではない)。
力を入れすぎない
上述の柔らかい歯ブラシと合わせて、力を入れずに優しく磨くことが重要。
これは、歯茎へのダメージを防ぐため。
あまり知られていないが、歯茎はかなりあっけなく削れる割に、一度削れると再生する術はない。
硬い歯ブラシでゴシゴシ磨いていては、歯茎に傷がつき、やがて磨り減って行くのだ。
歯茎が磨り減ると、やがて歯の根元が露出する。
こうなると、虫歯でもないのに冷たいもので沁みるようになる上、露出した根は非常に虫歯になりやすいためリスクが跳ね上がることになる。
何より見た目が非常に悪くなる。
鏡で歯茎をチェックして、赤黒い色などの歯槽膿漏の気は無いものの、歯の根元がすこし盛り上がってタコのようになっている人、細かい皺のようなもの(=傷)がある人は要注意。歯磨きの力が強すぎる証拠である。
専門医にチェックしてもらい、適切な歯磨きを身につけよう。
専門医の指導を
間違った歯磨きをしていないか、どこが磨けていないか、などを一気に指摘・指導してくれる。
欲を言えば、上述の歯茎の傷などが無いように定期的にチェックしてもらうのが良い。
もっとも、虫歯・歯周病予防には定期健診、スケーリング、PMTC=衛生士によるクリーニングが必須なので、歯磨きだけのために行く必要もないかもしれないが。
歯磨きの詳細なテクニック
歯科医学の研究機関が提唱する様々な磨き方があるが、基本的には自己流(もちろん正しい指導を受けた上でのもの)+スクラビング法+バス法+縦磨きで、だいたいの歯垢は除去できる。
これを忠実に行えば、20分近くの時間が楽に飛んで行くだろうが、それだけしないと歯垢は除去できないと思って丁寧に行おう。
スクラビング法
歯ブラシの毛を歯に垂直に当て、小刻みに横に動かしつつ一歯ずつ磨いて行く。
ペンのように歯ブラシを持つと良い。
一歯当たり、歯ブラシを15往復させるつもりで磨いていこう。
全ての歯が生えた人なら、7~8分ぐらいかかるはずである。
力を入れすぎると容易に歯茎を傷つけるので、 気をつけるべし。
バス法
歯ブラシの毛を歯の根元に45°で当て、横に小刻みに動かし磨く。
歯と歯茎の間の歯垢・食べかすを除去するのに非常に有効な方法。
正しく行えば、歯茎を適切にマッサージしつつ、歯垢を効率よく除去できる。
ちなみに、アメリカの内科医であるバス博士が提唱したからこんな名前になったとか。
その他
イエテボリ法デンタルリンス
歯科医学の権威・スウェーデンはイエテボリ大学が提唱した歯のケア。
というもの。
日本で市販される歯磨き粉の多くにはフッ素が含まれているが、多量の水でぐちゅぐちゅとうがいしてはフッ素が流され、その予防効果はなくなってしまう。
この方法は、要はそれをやめるものであり、少ない水で口の中全体にフッ素をいきわたらせ、飲食を控えて、フッ素の予防効果を最大限発揮するものである。
この方法を用いれば歯の表面だけでなく、隣接面にもフッ素がいきわたる上、水で流されること無くフッ素が歯を守るため、虫歯予防に非常に高い効果を挙げている(具体的には虫歯の40%を予防した)。
これはあくまでデンタルリンスであり、ブラッシング法ではないことに注意。
関連動画
関連商品
関連項目
- 12
- 0pt