水上機とは
滑走路を使用する通常の航空機とは異なり
水上を発着する航空機のことである。
飛行機(固定翼機)に限らず、ヘリコプター(回転翼機)を含める場合もある。
概要
水上機は陸上ではなく水上を発着する機体で、滑走路の位置・幅・長さに縛られることなく
広大な海・水面をそのまま滑走路にできるという最大のメリットがある。
滑走路のように建設する手間やコストがなく、発見・破壊される心配もない。
今でこそ航空機といえば陸上機であるが、1930年代には長距離旅客輸送に大型飛行艇がよく用いられていたし、世界最速の乗り物が水上機と言う時代もあったのである。『紅の豚』の設定時代はこの時代である。
これは当時フラップなどの高揚力装置がなく、高速を発揮する飛行機が飛び立つには長大な滑走距離を必要としたため、陸上滑走路より長距離を確保しやすい水上を利用したほうが都合が良かったことや、エンジンの信頼性が低く大洋を横断する場合トラブルが発生した時に着水できる方が安全であったなどの要因がある。
レシプロ水上機の速度記録はイタリアのマッキM.C.72が記録した709.21km/hであるがこれは初期のジェット機よりも高速であった。
軍用としては第二次世界大戦中は偵察・観測用途として大型戦闘艦にはほぼ水上機が搭載されていた。また、特に太平洋戦域において離島に兵員物資を輸送したり、滑走路建設するまでの当座の戦力としてなど日米両国に盛んに利用された。
現在
現在では、高揚力装置が発達し陸上滑走路も整備されたことや、通常の飛行機の高速化(ジェット機など)、垂直離着陸が容易なヘリコプターが広く用いられるようになったり、レーダーの発達等によって上記のような用途での利用はほぼなされていない。
海上から離着陸する場合、空母や揚陸艦といった艦船から
直接離着陸・格納・整備が可能な機体を用いる場合も多い。(→艦載機)
では、現代の水上機はどのような用途に用いられているのかというと、滑走路の建設が難しいが水面は利用できる離島・地域への輸送、海難救助、また大規模火災での消火活動などである。
水上機の降着装置
水上機は降着装置によりフロート型と飛行艇型の2つにわけられる。というかこの二種しか実用化に成功していない。
フロート型
フロート型は機体下部にフロート(ポンツーンとも呼ばれる)と言う浮体を降着装置として付けている。主にフロート1つの単フロート型と2つの双フロート型がある。単フロート型はフロート1つだと安定性が悪いので通常主翼下に補助フロートが付けられている。
簡単に言うと通常航空機には降着装置として着陸脚が付いているところにフロートが付いているだけに近いので水上機への改造が簡単と言う利点がある。ただし、大型化すると欠点のほうが大きくなりフロート重量のせいでペイロードも削られ輸送効率も下がるといいことなしであり、基本的に小・中型航空機に限られる。
最大のもの
ちなみに最大のフロート水上機はアメリカのC-47(DC-3の軍用バージョン)の水陸両用型XC-47Cであるが画像検索してみれば分かる通り大きな機体を支えるためにフロートがでかいのでペイロードの大半を持って行かれ輸送量がガタ落ち、最高速度も低下といいことなしで試作1機で終わっている。まぁそもそも離島にも速攻で滑走路作れちゃう米軍には無用の長物なわけだが。
飛行艇型
『紅の豚』にいっぱい出てくるやつである。
一言でまとめれば、機体底部が舟形で直接着水するもの。
飛行艇型は浮力をフロートではなく機体そのものを艇体として得る形式で、着水時に必ず胴体着水をすることになる。そのため、機体下部が船舶のように造波抵抗を逃がす形、雑な言い方をすると船の形をしているのである。安定性向上のため主翼下に補助フロートを付ける、もしくは胴体側面下部にスポンソンと呼ばれる横に広がった張り出し部分を備えている。
(→飛行艇)
フロート型との違い
混同されやすく、同じと思われる場合も珍しくない。
飛行艇型はフロート型とは逆に小型で欠点が大きくなり、大型では利点のほうが大きくなる。
よって大型水上機は基本的に飛行艇である。また、大型なので収納式の陸上降着装置を仕込みやすく水陸両用型も多い。
なぜ飛行艇は小型で不利かというと、機体を水面につける関係上翼とエンジンの位置を上に上げなければいけないのだが、大型の機体の場合機体の上部に翼とエンジンを持ってくればいいだけなのに対し、小型の機体の場合主翼とエンジンを機体から持ち上げると言う見ただけでバランス悪いことまるわかりな形にならざるをえないからである。
最大のもの
ちなみに最大の飛行艇はアメリカのH-4ハーキュリーズであるが、こいつはそもそも翼幅(翼の端から端までの長さ)が世界最大というとんでもない代物で、第二次大戦中に世論の影響で軍が反対したのに戦時生産局の下部組織と契約がかわされて開発と言うgdgdっぷりからご想像の通り終始gdgdで滑水テスト中に高度25メートルで1マイル飛んだだけで二度と飛ばなかったと言う、珍兵器のページに名前が載ってるあたりお察しである。現在はエバーグリーン航空博物館で展示されているのを見ることができる。
試作など
他にもホバークラフトや、水上スキー型なども実験されたが実用化には至っていない。ちなみにまたアメリカだが水上スキー型の降着装置で緩降下時とは言え音速を突破したシーダートと言うものも開発されている。もっとも様々な技術的課題に直面したため計画は中止されたが。なお米軍の制式名称F番号の7はこのシーダートが持っている(制式名称YF-7A)。
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関連項目
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