水煮牛肉(シュイジューニューロー)とは、中華料理のひとつである。
概要
唐辛子や花椒や豆板醤を油で揚げ/炒め、高湯(中華スープ)、醬油などの調味料、白菜・ネギなどの野菜、そして薄切りにした牛肉を入れて煮た料理。「牛肉の唐辛子スープ煮」と表現できる。スープの中に大量に入っている唐辛子や花椒は全て食べると辛すぎるので、食べずに取り分けることが多い。
唐辛子や花椒をたっぷりと使用して熱い状態で供される料理であり、いくつかある四川料理の特色のうち「麻」(マー、花椒のしびれる辛み)、「辣」(ラー、唐辛子のヒリヒリする辛味)、そして「燙」(タン、 出来たてアツアツで食す)の三つを備えている、実に「四川料理っぽい四川料理」である。
中国の四川省、中でも自貢市と言う土地にルーツがあると言われる。この土地は井戸で岩塩の塩分を含んだ地下水を汲みあげてそれを元に塩を作る製塩業が古くから行われていた。この塩水を汲みあげる動力に牛を用いており、その労に使えなくなった牛を殺処分したときに肉が製塩業の労働者らに賃金代わりに提供され、塩水で煮て食べていたのが原型だ……という説も語られる。この地域の塩業に関連した郷土料理を「盐帮菜」(イェンバンツァイ)といい、「盐」は塩、「帮」は同業者組織(ギルド)や地下組織(ギャング)、「菜」は料理を指すので「塩ギルド料理」といったところか。「製塩のために使われていた牛の肉が、製塩業の労働者によって、製塩にも使われる塩水で煮て食べられていた」のが起源という上記の説が真実なら、水煮牛肉は「盐帮菜」の好例と言えるかもしれない。
上記のように元は一地方の郷土料理なのだが、人気があったため中国全土に広まっている。原型としては牛肉を使う料理なのだが豚肉を使う形にアレンジされることも多く、その場合は「水煮肉片」(シュイジューロウピェン)と呼ばれる。肉の代わりに魚を使った場合は「水煮魚」(シュイジューユイ)。
「水煮」と聞くと、日本人は「サバの水煮」などのあっさりとして味も色も薄い料理を思い浮かべがちかと思われる。だがこの料理は上記の作り方からも分かるように油たっぷり、スープの色は真っ赤で味も濃いという、「あっさり」とは対極的な料理である。名前の印象だけからあっさりした料理だと思い込んで注文してしまい、しかも「唐辛子や花椒は食べずに残してよい」という事を知らずに真面目に丸ごと完食しようとしてしまった人は泣きを見るであろう。
なぜ「水煮」という名前なのかについては、上記のルーツの話から「原型の料理では労働者が塩水で煮て作っていたから「水煮」というのだ」という説明と、「炒めたり揚げたりする料理ではなくスープで煮ることから「水煮」というのだ」という説明の二種類が存在しているようだ。なんとなく前者の方が説得力がある気がする。だって後者の方の説明だと「水」って付けなくてもいいじゃん。
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