汚名返上とは、近年になって汚名挽回のかわりに使われるようになった日本語である。
概要
かつて「汚名返上」は日本語の誤用ないしは違和感のある日本語とされがちな言葉だった。なぜなら「返上」という言葉は本来は勲章返上・御役返上・領地返上・位記返上・特権返上・タイトル返上などのようにポジティブな語と組み合わせて用いる謙譲語であって、伝統的な日本語においては「汚名」のようなネガティブな語と結びつける用法は一般的ではなかったからである。研究によれば「汚名返上」という言葉が日本語として一般に許容されるようになったのは比較的近年の現象とされている。
しかし1970~80年頃に従来の「汚名挽回」に誤用説を唱える者が現れだすと、汚名挽回にかわる新しい言葉として「汚名返上」なる言葉が使用されるようになり、いつしかTVドラマに「汚名は返上するもの」という台詞が登場したり過去のアニメ作品の「汚名挽回」が「汚名返上」に言い換えられたりするほどにまで一般化した[1]。こうした言葉の創造や変動は有史以来続いているもので「汚名挽回」「名誉挽回」「汚名返上」いずれにもそれなりの使用者がいる。どれか一つを誤用・正用と絶対視することなく柔軟に対応していきたいものである。
関連項目
脚注
- *とはいえ、こうした造語の普及にはそれなりの時間がかかっている。汚名挽回誤用説が流布されて20年ほどが経過した2004年の文化庁世論調査においても「汚名返上」の使用者は「汚名挽回」の使用者より少数派のままで、その使用者も誤用説流布後に義務教育を受けた10代の若者が中心だった。
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