沢村賞(さわむらしょう)とは、日本プロ野球における投手タイトルのひとつ。正式名称は「沢村栄治賞」。
概要
戦前、職業野球の黎明期に東京巨人軍のエースとして活躍し、戦争に散った剛速球投手・沢村栄治の功績を称えて設立された特別賞。表彰対象は、優れた成績を残した先発完投型の投手である。
元々は1947年に野球雑誌『熱球』の始めた企画であり、後に公式の表彰となった。1981年までは記者投票制だったが、1981年に投手五冠を達成した江川卓が「人格が沢村賞に値せず」と記者に言われ落選した(受賞は西本聖)のが影響して、翌年から基準を設けての選考委員による合議決定となった。
また、1950年にセ・パの2リーグ制になってからは長らくセ・リーグのみが対象で、パ・リーグが選考対象となったのは1989年からである(パで最初に受賞したのは1990年の野茂英雄)。そのため、稲尾和久や山田久志、村田兆治などパ・リーグの大投手は受賞していない。外国人選手は対象だが、受賞したのは1964年のジーン・バッキーと2016年のクリス・ジョンソンのみ。
選考基準は以下の7項目で、3つ以上を満たしていれば選考対象となる。選考基準全てを満たしていながら落選したのは、1982年の江川卓(受賞は北別府学)と2008年・2011年のダルビッシュ有(2008年の受賞は岩隈久志、2011年の受賞は田中将大)、2013年の金子千尋(受賞は田中将大)の3人。
また投手分業制の浸透によって21世紀以降「10完投」の達成率が非常に低くなったことから、2018年からはQS(通常のQSとは異なり、7回以上自責点3以内という独自基準)も考慮対象となった(正式な基準ではない)。
基本的に受賞は両リーグを合わせて1人だが、ごく稀に2人受賞となることがある。2003年には斉藤和巳と井川慶が揃って20勝を達成したため2人受賞となった。また、選考基準を満たした投手がいても選考会で相応しい投手がいないということになった場合は「該当者なし」となることがある(1971年、1980年、1984年、2000年、2019年の5回)。
大百科に記事のある受賞者(括弧内は受賞当時の所属)
- 1951年、1952年、1954年:杉下茂(中日)
- 1956年、1957年、1958年:金田正一(国鉄)
- 1959年、1965年、1966年:村山実(阪神)
- 1961年:権藤博(中日)
- 1962年:小山正明(阪神)
- 1964年:ジーン・バッキー(阪神)
- 1966年、1972年:堀内恒夫(巨人)
- 1967年:小川健太郎(中日)
- 1968年:江夏豊(阪神)
- 1969年、1973年:高橋一三(巨人)
- 1970年:平松政次(大洋)
- 1974年:星野仙一(中日)
- 1975年:外木場義郎(広島)
- 1977年、1979年:小林繁(77年は巨人、79年は阪神)
- 1981年:西本聖(巨人)
- 1982年、1986年:北別府学(広島)
- 1987年:桑田真澄(巨人)
- 1988年:大野豊(広島)
- 1989年、1995年、1996年:斎藤雅樹(巨人)
- 1990年:野茂英雄(近鉄)
- 1991年:佐々岡真司(広島)
- 1993年:今中慎二(中日)
- 1994年:山本昌広(中日)
- 1997年:西口文也(西武)
- 1998年:川崎憲次郎(ヤクルト)
- 1999年、2002年:上原浩治(巨人)
- 2001年:松坂大輔(西武)
- 2003年、2006年:斉藤和巳(ダイエー)
- 2003年:井川慶(阪神)
- 2004年:川上憲伸(中日)
- 2005年:杉内俊哉(ソフトバンク)
- 2007年:ダルビッシュ有(日本ハム)
- 2008年:岩隈久志(楽天)
- 2009年:涌井秀章(西武)
- 2010年、2015年:前田健太(広島)
- 2011年、2013年:田中将大(楽天)
- 2012年:攝津正(ソフトバンク)
- 2014年:金子千尋(オリックス)
- 2016年:クリス・ジョンソン(広島)
- 2017年、2018年:菅野智之(巨人)
- 2020年:大野雄大(中日)
- 2021年:山本由伸(オリックス)
関連動画
関連項目
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