河童とは、以下のことを指す。
- 日本の妖怪の一種。
- 芥川龍之介の小説「河童」
- ユーザー生放送の配信者「河童(生放送主)」
- ユーザー生放送の配信者「勝手に河童」
- ユーザー生放送の配信者「河童皇」
- はじめの一歩の登場人物「木村達也(現在のリングネームは木村タツヤ)」
本項では1.と2.について解説する。
河童(日本の妖怪の一種)
概要
河童とは日本の妖怪である。また、未確認生物や空想上の産物とも言われる。
鬼や天狗とも並ぶ、日本で最も有名な妖怪のひとつである。
特徴
時代や伝承の地方などによって差異が大きいことから共通点としてまとめるのは難しいが、代表的な特徴として以下が挙げられる。
- 体格は子供のようで、体の色は緑または赤。
- 頭の上には皿があり、背中には甲羅がある。皿が割れると死んだり、衰弱したりする。
- きゅうりが好き。
- 水の中を自在に泳ぐ。
これが転じて「河童の川流れ」、「陸へ上がった河童」という諺もある。どちらも河童が泳ぎの達人であるという共通認識を前提にして意味を成すものである。
尻子玉
伝承における河童は水の中に引き摺り込んだ人間の尻子玉や肝を抜き取るとされる。この尻子玉とは肛門付近にあるとされた架空の臓器で、これを抜かれると腑抜けになると伝えられている。
これは、人間が溺死すると肛門括約筋が弛緩して肛門が大きく開き、あたかも玉を抜かれたようにも見えることから、「河童が尻子玉を抜いた。河童が肛門から手を入れて肝を抜いた。」というエピソードが伝承に織り交ぜられたのであろうと言われている。
おかっぱ
おかっぱ、おかっぱ頭と呼ばれる髪型(所謂ボブカット)の由来も河童からである。
河童(芥川龍之介の小説)
概要
明治から昭和初期に活躍した小説家芥川龍之介が1927年(昭和2年)に雑誌「改造」誌上で発表した作品。
題名は「河童」。副題には「どうか Kappa と発音してください。」と付けられている。副題の真意については今日でも謎とされている。
あらすじ
精神病院に入院中の患者である男が誰にでも語った話として、それをインタビューするというシチュエーションで物語は始まる。
男は穂高山(穂高岳)登山の途中に梓川で河童と遭遇し、その河童を追ううちに河童の国に迷い込んでしまったという。
その河童の国で過ごし、見聞きした体験談を男が語って聞かせるという形で物語は進行する。
河童の国は人間社会(昭和初期当時の日本)と同程度のテクノロジーの恩恵を享受し、人間社会と同様に社会システムを構築し、様々な職業・職層の河童たちが生活している。しかし、常識や習慣、価値観や考え方は人間社会のそれと同じであったり、全く逆であったり異なっていたりと奇妙な相似関係も見て取れるものであった。
男は河童の国で暮らす中で親交を持った河童たちから見識を深め、人間社会や自分自身の生き方について考えるようになる。
それは生まれてくる子供の自由意志、戦争や軍隊、近代化や機械化で職を追われる労働者、罪と罰、芸術家のあり方と社会との齟齬など多岐に渡る。
やがて、ひとりの詩人の河童の自殺を切っ掛けに死生観や人生観に思いを巡らせた末に男は人間社会に戻りたいと望むようになり帰還に至る。
入院中の今でも月夜の晩に河童の友人・知人たちが見舞いにやってくると男は語るが、河童からの土産の花であると指差す先の花瓶は空っぽであり、河童から贈られた詩集であると手に取るのはただの電話帳であった。
内容
作品からは河童の社会や河童の登場人物の口を借りて語る言葉が当時の世相に対する皮肉や批判、あるいは風刺である面が目に付きやすいが、作品の書かれた時代背景と芥川龍之介の生涯とその最期を踏まえて読むとさらに深い意味が見えてくるように感じられる。
また、河童の特徴や生態についても柳田国男のまとめた民俗学的な考察も踏まえた上でさらに創作が施されており興味深いものがある。当作品の影響を受けた後の様々な作品の元ネタとしても一読の価値がある他、純粋に小説としても面白いので機会があったら読んでみることをお奨めする。
芥川龍之介は当作品を発表した同じ年の1927年7月24日に服毒自殺を図り35年の生涯に自ら幕を引いている。
現在でも、その謎の多き死については、作品の中に何某かの因果関係やヒントが見出せるのではないかと研究対象となっている。
なお、当作品は作者である芥川龍之介の死後50年以上経過し、著作権法の定める著作権の保護期間が既に終了しているため、下記のようにネット上で全編公開しているところもある。
現在のこのような状況と符合するように作中で「予の全集は三百年の後(のち)、――すなわち著作権の失われたる後、万人(ばんにん)の購(あがな)うところとなるべし。」と話す登場人物(河童)が出てくるが、当作品と同時期に執筆されていた小説「歯車」において「原稿は見る見る出来上つて行つた。僕はこの小説の世界を超自然の動物に満たしてゐた。のみならずその動物の一匹に僕自身の肖像画を描いてゐた」と記されていることから、この登場人物が芥川龍之介の分身として考えを代弁しているものと推察される。
ちなみに河童は我々人間が河童について知っているよりも人間のことをよく知っているという。河童の国にやって来た人間は「特別保護住民」として衣食住に不自由することなく暮らすことができ、雌の美人河童を妻に娶って一生暮らす人間もいるという。もし河童の国に行くことがあれば、我々とは言語が異なるため、まずは河童の言葉を学ぶところから始まることになるだろう。
東方Projectの楽曲「芥川龍之介の河童 ~ Candid Friend」との関連
東方ProjectのSTG「東方風神録」には、河童のキャラクターである「河城にとり」とそのテーマ曲として「芥川龍之介の河童 ~ Candid Friend」が登場している。
曲名は当作品が元ネタで、河城にとりの使用するスペルカードには当作品中の河童に関する記述をモチーフにしたものが散見される。
→ 「河城にとり」(東方Projectの登場キャラクター)
→ 「芥川龍之介の河童 ~ Candid Friend」(東方Projectの音楽一覧)
河童を題材にしたフィクションの作品
- 小説「河童」 芥川龍之介 1927年
- 映画「河童 KAPPA」 石井竜也(監督) 1994年
- 映画「河童のクゥと夏休み」 原恵一(監督) 2007年
- 漫画「カッパの飼い方」 石川優吾 2003年
- 漫画「はじめの一歩」 森川ジョージ 1989年~連載中
- 酒造メーカー黄桜のCM 1959年~1980年
関連動画
関連リンク
- 芥川龍之介『河童』
(青空文庫):1966年(昭和41年)発行、旺文社文庫「河童・或る阿呆の一生」版。テキスト・XHTML。新字新仮名で現在の文章に近く読みやすい。
- 芥川龍之介『河童』
(国立国会図書館デジタル化資料):1927年(昭和2年)発行、芥川龍之介の自筆原稿。画像データ。国立国会図書館古典籍資料室所蔵の貴重書・準貴重書からデータ公開されたもの。
- 芥川龍之介『河童』
(国立国会図書館デジタル化資料):1946年(昭和21年)発行、細川書店「河童」版。画像データ。新字旧仮名で振り仮名無し。
- 芥川龍之介『河童』
(国立国会図書館近代デジタルライブラリー):1946年(昭和21年)発行、岩波文庫「河童」版。画像データ。新字旧仮名で振り仮名有り。
関連項目
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