法務省とは、日本政府を構成する「省」のひとつ、日本政府の司法行政を担当する政府組織である。
英名表記はMinistry of Justice(MOJ)。
記事の正確性を求める方は入省するか、Wikipediaをご参照下さい。
概要
法務省とは、日本政府の法務全般を担当する省である。令和2年度の予算は下部組織も合わせた全体で8288億円ほど(一般会計)である。
財務省や経産省ほど目立つ官庁ではないが、国内の法秩序の維持のための重要なお仕事をしている。より具体的には、戸籍・登記の管理、法典改正のための審議会の設置、刑務所などの運営と刑罰の執行、外国人の出入国管理、刑事事件における被疑者の起訴、破壊活動団体の調査・取締などである。戦後から長い間、建制順で筆頭の省庁だったが、中央省庁再編の折に総務省に筆頭の座を奪われた。
1869年(明治2年)の刑部省(のちに司法省)設置から一貫して司法行政の全般を所管する。明治憲法下における司法省は本来行政権から独立運営されるべき裁判所・弁護士会の事務をも所掌に入れており、これは日本で今なお三権分立が徹底されない遠因の一つとなった。戦後はアメリカの司法省を範とした法務庁が設置され、その後の法務府と併せて政府の最高法律顧問として機能するはずだったが、1952年(昭和27年)の法務省設置の際、政府の統一的な法解釈を担う内閣法制局が総理大臣の直属となり、政府の法律顧問としての機能は失われた。
なお、特殊法人は傘下に存在しない。独立行政法人に該当する下部組織として日本司法支援センターのみが存在する。
人事
本省の事務方のトップである法務事務次官になる者は、基本的に行政組織上は法務省の下部機関である検察庁の出身者に限られている。検察を統制する組織でありながら省内の要職のほとんどを検察出身者が占めている現状である。その理由を理解するには法務省特有の人事システムを把握する必要がある。それは職員の局別採用である。一般の省庁のキャリア職員は通常ゼネラリストとして省全体を見渡す幅広さを求められ、いくつもの部署を経験する。逆を言えばキャリア職員であれば部署を渡り歩くことが多いのに対して、法務省では各局ごとの狭い職域でキャリア職員を採用している。
この人事システムは法務省においてキャリア職員が一定以上の役職に昇進することがほぼ不可能であり、検察庁出身の検事たちが法務本省の課長以上のポストを独占してきたという事実に由来している。これが司法試験合格者(検事)のみが法務省上位役職者に任官できるという極めて歪な構造を生み出したのである。
以上のように、法務省はほとんど検察に母屋を乗っ取られている状態なのだが、最近は法務省プロパーの官僚が局長職に就くなど多少の変化の兆しも見られるようである。
担当業務
- 司法制度の整備・維持、法制審議会の主催(法整備)
- 国籍・戸籍・登記・供託の管理(民事行政)
- 刑務所・拘置所・少年院・保護観察所などの運営、犯罪者の矯正・更生保護、刑の執行(刑事行政)
- 全国各検察庁の統制(検察行政)
- 出入国管理、外国人の在留許可(移民行政)
- 破壊活動団体の規制(公安調査)
他に、いじめ防止や犯罪被害者支援などの人権擁護、行政訴訟の国側を担当する業務などがある。司法試験の問題作成・試験実施も法務省の管轄だが、最近何かと批判の多い新司法試験制度(ロースクール制度)は大学と文部科学省が推し進めたものであり、この省はほとんど関与していない。
また意外かもしれないが、麻薬取締は法務省や警察ではなく厚生労働省の管轄である。
死刑執行
日本の死刑制度は、同様の先進国で死刑制度を維持しているアメリカに比べて執行が非常に閉鎖的であることが国内外で問題視されており、死刑の存否を別として批判に晒されることが多い。本来であれば、民主国家における政府の行政活動はすべて国民の監視を受けるべきだが、死刑執行に限っては行政の秘密主義が許されており、これを指して法務省の行刑密行主義とも言われる。
アメリカの死刑制度は州によって異なり、既に廃止されている州も多いが、存置州では少なくとも以下の点が共通している。
- 死刑執行の1ヶ月前には受刑者に知らされる
- 拘禁中の面会が比較的自由
- 執行が適正に行われているか確認するため家族、被害者遺族および報道関係者が執行に立ち会える
- 苦痛のより少ない薬物注射が主流であり、執行方法を受刑者が選択できる場合もある
- 執行方法の残虐性について訴訟が起きたとき、連邦最高裁の判断が下るまで刑の執行が停止される
これに対して日本では以下のようにほぼ真逆の運用がなされている。
- 受刑者は当日の朝に死刑執行を知らされる、外部には一切知らされない
- 拘禁中の面会は基本的に弁護士か家族・被害者遺族に限られ、記者の取材は許可されない
- 執行には家族や被害者遺族も立ち会えず、かつて一度も執行の様子が一般市民に公開されたことはない
- 人道的な側面がほとんど顧みられることなく、明治時代から一貫して絞首刑を続けている
日本における絞首刑の歴史は刑法典より古い(約140年前の太政官布告による)が、執行の様子が一切明かされて来なかったために、受刑者にどれほどの苦痛を与えるのか(残虐な刑罰の禁止)、死体がどれほど損壊するのか(死者の尊厳)を民間でほとんど検証することができず、死刑存廃問題に比べて執行現場の実態は全く国民的議論の議題に上らず看過されてきた。
さらに、死刑確定者の拘禁中の様子も、面会者や教誨師(精神的な救いを与えるために各宗教団体が自費で派遣する宗教家)を通した情報から極めて断片的にしか伺うことはできず、執行当日まで死刑を知らされない受刑者の恐怖や劣悪な拘置所の環境が与える精神的負荷を推し量ることも困難である。
日本では死刑の方法も含めた議論がとても活発とは言えず、国民多数の賛成によって制度が存続してはいるが、犯罪統計などを用いた刑事政策上の科学的な論拠などはむしろ乏しい現状で、凶悪犯罪者を殺さないでおく、または野放しにすることへの漠然とした恐怖感や応報感情・正義論によるところが大きい。
国際会議などの場において死刑存置国が死刑廃止国から批判された際、理路整然と死刑制度の正当性を主張する中国・シンガポールの代表や、国内で議論が尽くされているため国外の批判は受け付けないとするアメリカの代表に対し、国民的な議論が乏しく執行過程も不明な点が多いためだんまりを決め込むしかない日本の姿は余りにも情けない。死刑執行過程の公開は死刑制度の正当性・相当性・合理性の評価に直結する。法務省に対しては、死刑賛成派と反対派の垣根を越えた死刑執行手続の開示請求が必要であると思われる。
ついでだが、日本の死刑執行の最終決定権者は法務大臣である(刑訴法475条1項)。公正な裁判で刑が確定し、加害者本人が罪を認め死刑の覚悟ができていても、法務大臣のサインがない限り死刑が執行されることはない。刑訴法475条第2項本文は、死刑は判決の確定から6ヶ月以内に行われなければならないと定めているが、過去に幾度も法務大臣個人の主義信条によって長期間死刑が執行されなかったことがあり、法律を誠実に執行すべき行政府の人間として相応しくない、法の下の平等に反するなどの批判に晒されることが多い。
公安調査庁
法務省の外局である公安調査庁は破壊活動を行う団体の規制を目的とした一種の治安官庁だが、ヒューミントなどの純粋な調査をメインに行い、警察のような逮捕や強制捜査の権限は限定的な範囲でしか持たない。
戦後長らくは国内の極左や共産圏スパイ、暴力団(ヤクザ)が主な監視対象だったが、1995年の地下鉄サリン事件以降はカルト宗教が新しく監視対象に入り、2001年の同時多発テロ以降はイスラム系国際テロ組織、近年には排外主義的な極右団体も監視の対象となっている。この組織の存在が、各国治安系官庁のトップが集うG8司法・内務大臣会議にわが国の法務大臣が出席することの根拠の一つにもなっている。
しかしながら、公安調査庁と同様に国内外の諜報を任務とする警察庁・外務省・防衛省などの諸官庁に比べても同庁の調査・分析能力の低さは否めず(例として昨今の北朝鮮情勢の変化を全く察知できなかったこと)、さらには治安を脅かすような反社会的勢力の衰滅という時代背景もあり、一部では同庁の解体論が存在する。
所管の組織
- 検察庁
所管の外局
所管の法人
なお、日本弁護士連合会(日弁連)は行政府から独立して運営されている。
関連動画
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関連コミュニティ
削除状況
動画 | 侵害権利 | 対象物 | 備考 |
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史上初!朝鮮大学校前で在特会が抗議活動 | 人格権侵害 | 個人の名誉 | ヘイトスピーチを理由とした削除要請。なお、名義は東京法務局となっている。 |
関連項目
- 法務省のWEBサイト
- 法務省のチャンネル - ニコニコ動画
- 法務省のチャンネル - Youtube
- 法務省のTwitter
- 日本の中央官庁の一覧
- 日本国
- 公務員
- 国家公務員
- 民法
- 刑法
- 死刑
- 死刑存廃問題
- 法務局
- 警察
- 日本における死刑 - Wikipedia
- 国籍法の一部を改正する法律案
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