減資とは、企業の財務に関する言葉の1つである。反対語は増資である。
概要
定義
分類
減資は無償減資と有償減資に分けられる。
無償減資とは、企業が資本金を減らして資本剰余金を増やすことであり、企業が純資産の数字を維持するものであり、企業が保有資産を手放さないものである。本記事において無償減資の項目で解説する。
有償減資は、企業が資本金を減らして「その他資本剰余金」を増やしてから「その他資本剰余金」やそれの見合いとなる資産を両方とも減らしつつ株主に配当を払うことであり、企業が純資産の数字を減らすものであり、企業が保有資産を手放すものである。本記事において有償減資の項目で解説する。
減資に必要な意思決定
減資をするときは、株主総会の特別決議を必要とする(会社法第447条第1項、第309条第2項第9号)。
ただし、定時株主総会の日における欠損の金額以下を減資するのは、取締役会の決議のみを必要とする(会社法第447条第1項、第309条第2項第9号)。
また、資本金を減少させることと株式の発行で出資金の1/2以上の金額を資本金にすることを同時に行いつつ、資本金の減少額の絶対値が資本金の増加額の絶対値の範囲内であるのなら、取締役会設置会社なら取締役会の決議で足りるし、取締役会非設置企業なら取締役の決定で足りる(会社法第447条第3項)。
例えば、公開会社が取締役会の決議をして株主割当増資を行い1億円の出資を受け、1億円を資本金にしたとする。それと同時に資本金を1億円減らして資本剰余金を1億円増やすのなら、取締役会の決議だけで済む。これらの一連の流れでは、株主総会の普通決議・特別決議が一度も必要とされない。
減資の手続き
減資をするときは、債権者保護手続きと登記の変更をする必要がある。
債権者保護手続きは次の方法によって行う(会社法第449条2項、第939条)。①準備金の額の減少の内容、②最新の貸借対照表が掲載されている場所、③「債権者は一定の期間内(1ヶ月以上)に異議を述べることができる」という宣言、といった3つの事項を官報に公告し、知れている債権者がいる場合はその人に対して各別に催告するか、もしくは電子公告または新聞広告で公告するかのどちらかを行う[1]。
減資の限度
資本金を減らすとき、資本金の減少額を資本金の金額以下に抑える必要がある(会社法第447条第2項)。つまり、資本金は0になるまで減らすことができるがマイナス数値になるまで減らすことができない。
無償減資
無償減資の定義
無償減資とは、企業が資本金を減らして資本剰余金を増やすことであり、企業が純資産の数字を維持するものであり、企業が保有資産を手放さないものである。
仕訳その1 節税
資本金2億円の大企業が「資本金を1億円に減らして中小企業の仲間入りをして節税しよう」と思ったとする。
そのときは無償減資をして、1億円の資本金を「その他資本剰余金」に変換させる。「借方 資本金1億円(純資産) 貸方 その他資本剰余金1億円(純資産)」と仕訳する。
仕訳その2 欠損補填
企業がある期において100万円の赤字となり、税引後当期純利益がマイナス100万円となった。その場合、期末の貸借対照表で「その他利益剰余金」を100万円減らしたいところであるが、すでに「その他利益剰余金」と「その他資本剰余金」がどちらも0円であるのならそういうことができない。
そのときは無償減資をして、100万円の資本金を「その他利益剰余金」にまで変換する。企業は、まず100万円の資本金を減資して「その他資本剰余金」を増やすので、「借方 資本金100万円(純資産) 貸方 その他資本剰余金100万円(純資産)」と仕訳する。続いて「借方 その他資本剰余金100万円(純資産) 貸方 その他利益剰余金100万円(純資産)」と仕訳しておく。
期末において、税引後当期純利益がマイナス100万円なら、貸借対照表の「その他利益剰余金」も100万円を差し引く。先ほどの処理でその他利益剰余金が100万円になっているので、そこから100万円を引いて、その他利益剰余金を0円にする。
有償減資
定義
有償減資は、企業が資本金を減らして「その他資本剰余金」を増やしてから「その他資本剰余金」やそれの見合いとなる資産を両方とも減らしつつ株主に配当を払うことであり、企業が純資産の数字を減らすものであり、企業が保有資産を手放すものである。
仕訳
企業が100円の減資をして銀行預金100円を株主に配当として支払うとする。その場合、まず「借方 資本金100円(純資産) 貸方 その他資本剰余金100円(純資産)」と仕訳して資本金がその他資本剰余金に変換されたことを示し、続いて「借方 その他資本剰余金100円(純資産) 貸方 未払配当金100円(負債)」と仕訳して、さらに銀行預金振り込みの日になったら「借方 未払配当金100円(負債) 貸方 銀行預金100円(資産)」と仕訳する。
ちなみに企業が株主へ配当をするときは現金や銀行預金といった流動資産を配当することが多いが、手続きを経れば、土地・建物・パソコン・機械・自動車といった固定資産を配当することができる。これを現物配当という。
有償減資に非常に似た減資 銀行への担保差し出し
定義
有償減資と非常に似た減資として、企業が資本金やそれの見合いとなる資産を両方とも減らしつつ銀行に負債の担保を差し出すことが挙げられる。
有償減資と同じように、企業が純資産の数字を減らすものであり、企業が保有資産を手放すものである。
仕訳
企業Aが、資本金1億円の見合いとして「事業の運営の基礎となる固定資産1億円」を保有し、資本剰余金や利益剰余金をまったく持っていないとする。その企業Aが、銀行から銀行預金5千万円を借り入れつつ「事業の運営の基礎となる土地5千万円」を担保にしたとする。
企業Aが黒字を出せず、「その他利益剰余金5千万円とそれの見合いとなる銀行預金5千万円」を稼げなかったとする。そのまま銀行への返済期限が到来し、銀行に銀行預金5千万円を返済できなくなると、「事業の運営の基礎となる土地5千万円」が銀行の所有物になり、企業Aが貸借対照表に「資本金1億円、事業の運営の基礎となる固定資産1億円」と登録することは非常に不自然なことになり、企業Aが貸借対照表に「資本金5千万円、事業の運営の基礎となる固定資産5千万円」と登録することのほうが自然な状況になる。
企業Aは「借方 資本金5千万円(純資産) 貸方 土地5千万円(資産)」と仕訳し、「事業の運営の基礎となる土地5千万円」を資本金に登録することを中止することで、負債を返済しきれず「事業の運営の基礎となる土地5千万円」の所有権を失ったことを追認する。
関連項目
脚注
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