渡辺雄也とは、Magic: The Gatheringのプロプレイヤーである。
概要
現在、日本最強のMTGプレイヤーはと問われればまず真っ先に名前の挙がる人物であり、その実力はMTGの発売元であるWotC公式からも世界で最も強いプレイヤーの一人であると認識されている。
これまでの主な戦跡を挙げると
と世界トップクラスに名を連ねるに相応しいもの。
その戦績は世界が認めるところであり、2016年に満を持してマジック・プロツアー殿堂入り。かねてより殿堂入り間違い無しと目されていたが、殿堂選出条件の「初めてのプロツアー出場より10年以上経過していること」が引っかかっていたためこれだけ遅くなってしまった。
逆に言えば、いかにデビューから圧倒的速度でプレイヤーとして活躍してきたかの証左と言える。
ミスターPWC
世界を又に掛けて活躍する前は、関東圏で今も行われている老舗の大会である「 Planes Walker's Cup(PWC)」の常連プレイヤーであった。
この頃、PWCの第1回開催から50回開催までの全てのトーナメントの成績と、サイドイベントのドラフトの成績から、それぞれの総合順位を計算してみたところ、その両方で渡辺氏が1位になるという事実が明らかになり、彼を称える愛称として「ミスターPWC」という言葉が生まれた。
このあと、ミスターPWCはその年度内にPWCで最も活躍したプレイヤーに与えられる敬称として制度化され、この後渡辺氏は3年連続ミスターPWCを獲得する事になる。
3年連続ミスターPWCを獲得したと言えど所詮は草の根大会のトップ、と思われるかも知れないが、この頃のPWCは後にプロとして活躍するプレイヤーが毎週のように参加していたり、たまにこのPWC発祥のデッキが世界に伝播したりするなど、世界中のプレイヤーから注目されているという噂がある程の大会であった。
この環境の中で切磋琢磨した結果が、その後の世界での活躍の元となっているのは間違い無いであろう。
人類初の禁止候補
2012年当時トップメタに君臨していたデッキである「Delver-Blade」が、スタンダードのグランプリを2連覇した際、渡辺氏がチェコのプロプレイヤーのMartin Juzaに「禁止が出るとしたら、思案とデルバーどっちかな?」(どちらもDelver-Bladeの重要なパーツ)と問いかけたところ「もうお前自身が禁止で良いよ」と言われたエピソードをtwitterで披露した事がある。その際、彼の知り合いであるMtG関係者、プロプレイヤー達から次々と賛同の声が上がるといった出来事があった。
もちろんこれは渡辺氏に対する冗談交じりの敬意なのだが、このような反応が起きたのもそのはずで、何を隠そうDelver-Bladeがグランプリを2連覇した際のプレイヤーは当の渡辺氏本人だったのである。
因みに、Delver-Bladeは非常に強力なデッキではあったが、誰が使っても圧倒的な威力を発揮するようなデッキではなく、状況による呪文の選択肢の多さから生じがちなミスを最小限に抑える必要があったり、他のデッキに比べると勝ち筋が細いために、油断すると簡単に盤面を引っくり返されて頓死する可能性が高いなど、使いこなすのはとても難しいデッキであった。
また、トップメタであるが故の同系対決の多さもあって「デッキの完成度が高い方が勝つ」「プレイング技術が高い方が勝つ」と言った状況が生まれやすかった。つまり、プレイヤーの技量を最大限問われるデッキであると言える。
そういったデッキを使って、強豪ひしめくグランプリを2連覇するというのは最早デッキ云々というよりプレイヤーの技量の賜物であり、それを承知しているからこそ「禁止候補」発言がプロプレイヤー達の間で賛同されたという訳である。
ちなみにこのネタ、MtG-jpチームにも伝わっており、日本語公式サイトに掲載された「マジック20年の歴史」の中や、毎年発行されるMtG専門紙、マナバーンにも載ってしまっている。
デッキチューナー
本人も度々言及しているが、ゼロから新たなデッキを構築する「デッキビルダー」というよりは
既存のデッキの完成度を極限まで高める「デッキチューナー」としての性格が強いプレイヤーである。
そんな彼の代表的なデッキは以下のようなものとなる
「Delver-Blade」(グランプリクアラルンプール2012、グランプリマニラ2012)
2012年のGPクアラルンプール、GPマニラを連覇した際に使用した「Delver-Blade」は、
軽量ドロー呪文を駆使して土地を極限までそぎ落とすことによって無駄なドローをする確率を減らすなど
まるで研ぎ澄まされた日本刀のようなデッキに仕上がっていた。
デッキの中の土地を減らすと言う行為は、MtGによって最も避けたい事象である「事故」と隣合わせの行為であり、中盤以降のムダヅモを減らす効果と引き換えに、土地が伸びずに手札を抱えたまま負けてしまう可能性を高めるというリスクを負うことになる。
しかし、渡辺氏はそのリスクを自らの熟達したプレイング技術と卓越した判断力によって補う事により、GP連覇と言う栄冠を勝ち取った。
「Jund」(プロツアー「ラヴニカへの回帰」)
直前のエキスパンションで登場した強力クリーチャーである「死儀礼のシャーマン」を、当時のモダンのトップメタの一角であった「Jund」にいち早く搭載したデッキ。このカードの採用によってJundは完成度の高さを一段と高め、この大会での渡辺氏の準優勝を皮切りにJundがグランプリを連覇し続ける事となった。結果的にこの「死儀礼のシャーマン」入りJundは環境を支配するデッキと見なされ「死儀礼のシャーマン」はモダンの禁止カードとなった。
「黒単信心」(グランプリ北京2014)
この頃のスタンダード環境で、強力であったものの対抗として登場した赤白のバーンデッキに対してやや分が悪いと思われていた「黒単信心」デッキに対して、メインボードの完成度を極限まで高めつつ、サイドボードには赤白バーン対策として、当時誰も注目していなかった「死の大魔術師の杖」を投入したデッキ。
このデッキを使用した渡辺氏が、サイドボーディングの目論見どおり、本来やや苦手であったはずのバーンデッキを次々なぎ倒してグランプリの優勝を成し遂げた事で「死の大魔術師の杖」は一気に注目を浴びるカードとなった。
「ジェスカイトークン」(世界選手権2014)
当時のスタンダード環境でのジェスカイ(白青赤)系デッキはクリーチャー・火力によってビートダウンを仕掛けるテンポ系、ビートダウン戦略に「ジェスカイの隆盛」による無限コンボを仕込んだコンボ系などが存在したが、このデッキはコンボ要素を廃し、クリーチャーは「ジェスカイの隆盛」の能力を誘発させるトークン生成呪文によって賄っている。
トークン生成呪文を使用することにより、「ジェスカイの隆盛」を十二分に機能させると同時に「かき立てる炎」の召集に必要な頭数を確保する、「宝船の巡航」の探査の為に墓地を肥やす、といったシナジーを搭載した構成となっている。
渡辺氏はこのデッキを世界選手権という大舞台で使用するに際し、その前の大型大会参加時に大会運営にデッキリストの非公開をお願いする(賞金受取の放棄などの配慮により非公開となった)、MOでの練習時にもリストが公開されるイベントには参加しない、などの極めて慎重な情報戦略をとっていた。その甲斐もあってか、世界選手権で披露されたこのデッキは世界中から賞賛を受け、渡辺氏をトップ4という好成績へと導くこととなった。
「バント人間カンパニー」(グランプリ東京2016)
《集合した中隊》を核にした緑白青デッキ「バント・カンパニー」に人間クリーチャーのシナジーを組み込んだデッキ。奇襲性と爆発力に長け、《中隊》によって《サリアの副官》×2が飛び出そうものなら全体強化能力で一瞬にして相手を圧殺し得る。
デビュー戦であるグランプリ東京2016では10位入賞を果たし、その後も有力デッキの一角として存在感を示し続けた。
あずにゃん
余談だが、渡辺氏は大のアニメオタクであり、テレビで放映しているアニメは取りあえず片端から見ているそうである。
ニコ生で配信されているプロツアーやグランプリの生放送では、アニメの事を尋ねられて嬉々としながら答えると言うのが定番のやり取りになっている。
特に「けいおん!」のあずにゃんこと、中野梓の事が大好きであり、彼のtwitterアカウントのアイコンもあずにゃんである。→自画像に替わりましたが相変わらずなので御安心ください。
・・・そして所属チームである「Team Cygames」が主催した殿堂就任セレモニーにおいて、世界の先輩プレイヤーやチームメンバーからのお祝いサプライズムービーの最後に超シークレット・ゲストとしてあずにゃんが登場。あずにゃん本人から名前を呼ばれ、殿堂入りをお祝いされるという夢のような事態に。
このまさかの祝福に渡辺氏は喜びの涙を流し、後に「殿堂入りはMTGの目標だったが、人生の目標まで叶った」「好きなキャラに自分の名前を呼んでもらったら感動で立てなくなるぞ? 俺は今日身をもって知った」と語っていた。セレモニーの模様はこちら
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