満塁ホームランとは、野球においてすべての塁に走者がいるときに放たれるホームラン(本塁打)の事である。グランドスラムと呼ばれることもある。
概要
- 野球の1打席で獲得できる得点で最高の物がこれである。打者、1塁走者、2塁走者、3塁走者の4人が本塁を踏む事になるため、満塁ホームランでは4点入る。
- また、あらかじめすべての塁に走者が存在している必要があるため、通常の野球では先頭打者で満塁ホームランを記録する事はできない(全盛期のイチローを除く)。
- 最速で達成できる可能性があるのは、先頭打者、2番打者、3番打者がそれぞれ出塁したあとの4番打者である。
- 成立しにくく、また大量得点の攻撃であるため、野球において記録的な出来事の一つである。
初回に満塁本塁打を放ったNPBの4番打者一覧
上述の通り、試合開始から最速で満塁ホームランが打てるケース。理論上は初回に先頭打者から3者連続で出塁し、4番がホームランを打つことで記録できる。しかし初回に先頭打者から3者連続で出塁すること自体が少なく、また4番が打つまでにホームランやタイムリーなどで得点した場合も達成できない。初回に無死満塁で4番打者を迎えたとしてもホームランが出るとは限らないので、非常に珍しい記録である。
セ・リーグ(12人、14回)
- ルー・ジャクソン(サンケイ)1967年10月15日
- ウィリー・カークランド(阪神)1968年8月7日
- ロジャー・レポーズ(ヤクルト)1976年5月27日
- 山本浩二(広島)1978年5月31日
- カルロス・ポンセ(大洋)1988年5月3日
- 原辰徳(巨人)1988年6月9日
- ラリー・パリッシュ(阪神)1990年4月21日
- 西田真二(広島)1991年6月1日
- 原辰徳(巨人)1992年7月16日
- 新庄剛志(阪神)1996年10月9日
- 村上宗隆(ヤクルト)2021年9月21日、
- ライアン・マクブルーム(広島)2022年5月20日
- 村上宗隆(ヤクルト)2022年6月23日
- 岡本和真(巨人)2023年7月5日
パ・リーグ(20人、21回)
- ジョージ・アルトマン*(ロッテ)1969年9月21日(2試合目)
- 大杉勝男(東映)1972年9月13日
- 野村克也*(南海)
- 山本功児(ロッテ)1987年7月10日
- マイク・ディアズ(ロッテ)1992年5月5日
- ケビン・ミッチェル(ダイエー)1995年4月1日(開幕戦、来日初打席)
- 吉永幸一郎*(ダイエー)
- ジェリー・ブルックス(日本ハム)
- 中村剛也(西武)2009年4月30日
- 今江敏晃(ロッテ)2013年9月18日
- 浅村栄斗(西武)2014年4月17日
- ブランドン・レアード(ロッテ)2019年7月24日
- 中村剛也(西武)2021年8月22日
- 今川優馬(日本ハム)2022年7月24日
- グレゴリー・ポランコ(ロッテ)2023年8月4日
- *印:@PacificleagueTV
- マリーンズの記事[3]
- ファイターズの記事[4]
満塁ホームランに関する主な記録・エピソード
NPB
- 通算最多満塁ホームラン:中村剛也(22本)
- 2022年終了時点。2位は王貞治の15本、3位は藤井康雄・中村紀洋の14本。
- シーズン最多満塁ホームラン:西沢道夫(5本)
- 1950年に達成。西沢はこの年満塁で21回打席に入り、4.2打席に1回、満塁本塁打を放つという恐るべき勝負強さを見せた。
- 代打監督逆転サヨナラ満塁ホームラン:藤村富美男(阪神)
- 1956年6月24日の広島対阪神の一戦において、9回裏2死で0-1の状況から、当時阪神の選手兼任監督であった藤村富美男(故人)によって記録された。代打逆転サヨナラ満塁弾としては日本史上2例目、監督による記録達成としては現時点で唯一の例である。
- 代打逆転サヨナラ満塁優勝決定ホームラン:北川博敏(近鉄)
- 2001年9月26日、マジック1で迎えたオリックス戦。5-2の9回裏、無死満塁で代打北川がオリックス守護神・大久保勝信から代打逆転サヨナラ満塁優勝決定ホームラン。もちろん史上初(MLBにおいても類例なし)。しかも3点差を逆転する釣り銭無しのホームランだった。関連動画参照。
- 二死からの代打逆転サヨナラ満塁ホームランお釣りなし:藤井康雄(オリックス)
- 何の因果か、上記の優勝決定ホームランからわずか4日後、2001年9月30日に記録された。二死、代打、3点差(お釣りなし)の3つを持ったサヨナラ満塁ホームランとしてはNPB史上唯一の記録。
この年は北川の1発といいボーリックナイトといい、3本ものお釣りなしサヨナラ満塁ホームランが飛び出したことになる。また藤井はこの年に代打満塁ホームランのシーズン記録(3本)を樹立した。 - 日本シリーズで代打サヨナラ満塁ホームラン:杉浦享(ヤクルト)
- 1992年、西武-ヤクルトの日本シリーズ第1戦、その年既に引退を決意していた杉浦が、12回裏一死満塁から代打でサヨナラ満塁ホームラン。これにより杉浦は引退を撤回する。
- プロ初打席満塁ホームラン:駒田徳広(巨人)
- 1983年4月10日、大洋戦で記録。日本人選手では史上唯一。駒田は以降も満塁で無類の強さを誇り、歴代4位の通算満塁本塁打13本を記録するなど「満塁男」として有名に。
- 開幕戦で初回に四番打者が来日初打席満塁ホームラン:ケビン・ミッチェル(ダイエー)
- 1995年4月1日の西武戦で記録。無死満塁で西武先発・郭泰源の2球目をレフトスタンドにはじき返した。いきなり4点を先取したダイエーだったがその後一時逆転され、延長戦の末11-10で辛くも勝利した。なおミッチェル自身は問題行為などで球団との関係が悪化し、シーズン途中で帰国している。
- 投手でプロ初安打が満塁ホームラン:米田哲也(阪急)
- 1956年4月11日の高橋ユニオンズ戦で記録。プロ2回目の登板となった米田は9回を3失点で完投し、初勝利をあげた。ちなみに18歳1か月での満塁ホームランは現在もNPB最年少記録となっている。
- 3試合連続満塁ホームラン&4試合連続被満塁ホームラン:広島・巨人
- カープは2022年7月15日の巨人戦延長11回に磯村嘉孝の勝ち越し満塁ホームランが出ると、翌16日は長野久義が、17日には堂林翔太が代打逆転満塁ホームランを放ち、球団では31年ぶり2度目の3試合連続満塁ホームランを記録した。
- いっぽう初めて3試合連続で満塁ホームランを打たれたジャイアンツは、18日のヤクルト戦でも初回に満塁ホームランを打たれてしまう。この日の試合には勝ったものの、史上初の4試合連続被満塁ホームランという不名誉な記録を生み出してしまった。
- 1番打者が初回に満塁ホームラン:田中幸雄(日本ハム)
- 1990年8月7日のオリックス戦に1番遊撃手で先発した田中幸雄は、1回裏に先頭打者として二塁打を記録。その後打者一巡して満塁の場面で再び田中の打席となり、今度はホームランを放った。日本ハムは初回に9点をあげ、最終的に2-19で勝利した。
- 2打席連続満塁ホームラン(プロ野球):二岡智宏(巨人)山川穂高(ソフトバンク)
- 2006年4月30日、中日戦にて記録。1試合2満塁本塁打は史上2人目だが、2打席連続は史上初。この試合の二岡の1試合10打点も歴代2位タイの記録。
- 2024年4月13日には、FAで移籍した山川穂高が古巣・西武戦の6回と8回に上述の二岡以来となる2打席連続満塁ホームランを記録した。
- 1イニング2本の満塁ホームラン、打たれた投手は自責点0
- 2007年4月1日、楽天-オリックスの試合で生まれた珍記録。3回裏、オリックス先発・吉井理人からホセ・フェルナンデスと山崎武司が満塁ホームランを放つ。1イニング2満塁本塁打は史上3度目、同一投手からは史上2度目だった。しかし両方とも、二死からの失策の後だったため、打たれた吉井は8失点しながら自責点は0というおまけがつく珍記録に。なおこの年、山崎武司は11年振りの本塁打王を獲得した。
- プロ初登板で最初の打者に満塁ホームランを被弾:津森宥紀(ソフトバンク)
- 2020年6月21日、ロッテ戦で記録。ソフトバンク先発・二保旭が2回表、ノーアウト1・2塁の場面で中村奨吾に頭部死球を当ててしまい危険球退場。緊急登板でプロ初登板した津森は、第1打者の井上晴哉に、8球目をバックスクリーンに叩き込まれた。プロ初登板で最初の打者にホームランを打たれた例は多数あったが、それが満塁ホームランなのは史上初。
- 満塁ホームランで通算最多安打記録に並ぶ:イチロー(シアトル・マリナーズ)
- 2009年4月16日(日本時間)、イチローが張本勲の記録に並ぶ日米通算3085安打目を満塁ホームランで飾った。ちなみに張本の通算試合数は2752試合だが、イチローは2232試合目で達成と500試合以上少ない。
MLB
- 1イニング中に2打席連続満塁ホームラン(MLB):フェルナンド・タティス(カージナルス)
- 1999年4月23日のドジャース戦に4番で先発したタティスは、3回表に無死満塁から朴賛浩の3球目を捉えて自身初の満塁ホームランを放つ。チームの勢いは止まらず、3点を追加して二死満塁の場面で再びタティスの打席に回り、今度は朴の6球目を捉えてこれもホームラン。一人で1イニング2満塁本塁打/1イニング8打点を記録した。
- 投手が1試合で2本の満塁ホームラン:トニー・クロニンガー(ブレーブス)
- 1966年7月3日のジャイアンツ戦に9番投手で先発したクロニンガーは、初回に二死満塁からホームランを放つ。2打席目は遊ゴロに倒れるが、4回には再び二死満塁で打席が回りこの日2本目の満塁ホームランを打った。クロニンガーは5打席目にもタイムリーを放ち、3失点で完投勝利。投手としてはMLB最多となる1試合9打点を記録した。
- 投手でプロ初安打が満塁ホームラン(MLB):Daniel Camarena(パドレス)
- 2021年7月8日のナショナルズ戦で記録。2番手として登板し、4回裏2死満塁で打席が回り、相手先発のマックス・シャーザーから満塁ホームランを放った。これが自身のメジャー初安打で、「初安打を満塁ホームランで記録した投手」は1898年の初打席で満塁ホームランを記録したビル・ダグルビー以来123年ぶり2人目となった。
高校野球
- 2打席連続満塁ホームラン(高校野球):松本哲幣(敦賀気比)
- 2015年3月31日の第87回選抜高等学校野球大会準決勝第1試合、大阪桐蔭との試合で生まれた大記録。1回表、大阪桐蔭の投手田中誠也から大会15号となる満塁ホームランを放った。続く2回表、再び満塁で松本に打順が回り、大会16号となる満塁ホームラン。高校野球100年という長い歴史の中で2打席連続満塁ホームランは初めてのことであり、1試合1人8打点はそれまでPLの桑田、星稜の松井などが保持していた1試合7打点の記録を塗り替えた。また松本は翌日の決勝でも試合を決める2ランホームランを放った。
- 延長戦で逆転サヨナラ満塁ホームラン(高校野球):矢野功一郎(済美)
- 2018年8月12日の第100回全国高等学校野球選手権記念大会・2回戦、星稜との試合で記録。タイブレークに入った延長13回表に2点を失った済美だったが、その裏に先頭打者がスクイズで出塁し無死満塁に。続いて打席に入った矢野は右翼ポールに直撃する、甲子園史上初となる逆転サヨナラの満塁ホームランを放った。
関連動画
関連項目
脚注
- *【データ】新庄以来だ!セ25年ぶりヤクルト4番村上宗隆が初回満塁本塁打
(2022年1月15日閲覧)
- *残り6名は編集者の調査範囲では不明。ただしパ・リーグで複数回記録しているのは中村剛也のみで、ライオンズの選手で記録しているのは中村、浅村の二人だけ。
- *ロッテ・レアードが今季3本目の満塁弾「ホームランテラス大好き!」
(2022年7月7日閲覧)
- *日本ハム・今川 プロ初のグランドスラム出た!4番打者の初回満塁弾は球団史上24年ぶり3人目の快挙
(2022年7月24日閲覧)
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