いづれの御時にか、女
いとやむ
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源氏物語(げんじものがたり)とは、平安時代中期に成立した長編物語である。また日本最古のレディースコミック、ポルノ小説、ハーレクインロマンスでもある。作者は紫式部、全五十四帖。
概要
作品情報 | |
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タイトル | 源氏物語 |
作者 | 紫式部 (むらさきしきぶ) |
形式 | 小説 |
ジャンル | 文学 |
発表日 | 長保三年(1001年) |
巻数 | 全54帖 |
- 主人公光源氏を通して当時の貴族の様々な恋愛模様を(道義的にアレな恋愛も)描いた作品で、帝を中心とした権力闘争も語られる日本を代表する物語のひとつ。
- 作者は紫式部。彼女の唯一の作品。
- 「源氏物語」と言っているが実は正式なタイトルがわかっておらず「光源氏の物語」や「紫の物語」「紫のゆかり」と様々な呼ばれ方をする。「更級日記」などには「源氏の物語」と書かれているため早い段階でこの通称だったと思われるが、紫式部本人はなんとつけたのかはわからない(そもそもタイトルをつけてないのかもしれない)。
- 約100万文字(原稿用紙2400枚分)に及びおよそ500名近くの人物が登場し、800首弱の和歌を詠まれている。
- 絵巻化もされており(今で言うコミカライズ)、現存するもののいくつかは国宝となっている。
テーマ
ストーリー
通常、ストーリーは三部に分けられると考えられている。
- 第一部 (第一帖『桐壺』~第三十三帖『藤浦葉』) 主人公源氏の生誕、めくるめくハーレム生活、順調な出世などイケイケの四十年間。
- 第二部 (第三十四帖『若菜上』~第四十一帖『幻』) 諸行無常の響きあり、それまでの人間関係が大きく変化していく悩みの十四年間。光源氏の子どもたち世代が活躍する。
- 第三部 (第四十二帖『匂宮』~第五十四帖『夢浮橋』) ニューヒーロー薫と、恋のライバル匂宮を中心に展開する新世代(ニューエイジ)の十四年間。「宇治十帖」とよばれる。光源氏の孫世代が活躍する。
主なキャラクター
女性は赤色、男性は青色で示す。また、光源氏と関係を持った女性には★マークあり。
登場人物のほとんどはあだ名で呼ばれており本名はわからない。また役職で呼ばれている人物もいるため呼び方が重複する場合もある。
主要人物
- 光源氏 (ひかるげんじ)
- 第一部、第二部の主人公。天皇の皇子、言い方を変えれば王子様であり光り輝く超絶イケメン。このことから幼少期は「光の君(ひかるのきみ)」と呼ばれる。
- さらに天下の秀才、運動神経抜群、芸術の才能に恵まれた上、金・地位・名誉も手に入れるという完璧超人。
- 帝の第二皇子であるものの父の判断により皇族からは外される。
- 皇族でないため割とフリーダムな生活を送り、多くの女性と関係を持つが、時にはそんな奔放な性生活が仇となることも。父親の妻・人妻・幼女とも関係を持つ。ロリコンとか言われるが年上相手もかなり多い。
- 亡き母に似てるとして父親に嫁いだ藤壺の宮に恋してしまったことから彼の人生は決定付けられる。
- 冷静に見えるがわりと感情豊かな男である。
- 兄の妻と不倫したことにより須磨に流される。
- 出世街道を驀進し最終的に太政大臣に。さら実際の歴史上には1人しかいない「准太上天皇」という特例階級となり再び皇族に戻る。ここから六条院と呼ばれるようになる。
- 正妻は2人。子供は3人(正確に言うと血の繋がった親子だが表向き兄弟が1人、表向き親子だが実は血のつながっていないのが1人、なので血がつながっていて表向きも親子なのは2人のみ)。養子が一人。朱雀帝は異母兄。
- ★紫の上 (むらさきのうえ)
光源氏の最愛の妻。実質的に源氏物語のヒロイン。藤壺中宮の姪っ子。8歳位の時に源氏に見つかってしまう。将来有望な幼女を自分好みのレディに育成する、いわゆる「光源氏計画」の語源ともなった美幼女。葵上の死去後は正妻同様に扱われるものの、寄る辺ない愛人としての気苦労をその身に背負い込む事になる。彼女の死とともに光源氏編(第1部-第2部)が終わっていく。 - ★藤壺中宮 (ふじつぼのちゅうぐう)
源氏物語における最重要人物。桐壺帝の妻の一人。冷泉帝の母。源氏の亡き母の桐壺更衣に生き写し。こともあろうに光源氏はこの美貌の義母と関係を持ってしまう。禁断の関係はずるずると続き、やがて藤壺は源氏の子を宿す。表向きは桐壺帝の子としながらも、ふたりは長い間罪悪の念に苛まれることに。
光源氏の両親
- 桐壺帝 (きりつぼてい/きりつぼのみかど)
- 光源氏の父。物語の最初の帝。
- 身分のさほど高くない桐壺更衣を他の妃を差し置いて周りが引くぐらい偏愛。このことから「桐壺帝」とよばれるようになる。彼女との間に主人公・光源氏を生む。
- 光の君を実家のバックアップがないことから臣籍降下させ源氏にする。
- 桐壺更衣の死後、彼女に似てるということで藤壺の宮を妻にしたことがすべての元凶。
- 当時からしてもかなりの子沢山。男の子だけで10人いる(実は1人は孫だが)。女の子も少なくとも3人はいる。
- 后妃は弘徽殿女御(右大臣の娘・朱雀帝の母)・桐壺更衣(光源氏の母)・藤壺中宮・麗景殿女御(花散里の姉)等など。
- 兄弟姉妹に大宮(女三の宮・左大臣の妻・頭中将の母)・前坊(前の東宮・六条御息所の夫)・桃園式部卿宮(朝顔の斎院の父)がいる。
- 10男が生まれたのを機に朱雀帝に譲位。桐壺院となる。
- 光源氏が23歳の時に崩御。冷泉帝が実の子で無いと知っていたかどうかはわからない。
- 光源氏が明石に流されたときはブチ切れ、亡霊となって光源氏と朱雀帝の元に訪れている。
- 桐壺更衣 (きりつぼのこうい)
桐壺帝の妻の一人。源氏の母。大納言の娘だが後ろ盾の父親も他界し身分は大して高くはないが、その美貌と性格で桐壺帝のお気に入りの座を射止める。しかし、それが原因で周囲の女性からの陰湿なイジメに遭い、心身ともに衰弱。源氏が三歳の時にこの世を去る。
光源氏の女たち
- ★葵の上 (あおいのうえ)
源氏の最初の正妻。夕霧の母。当初、お嬢様育ちの葵と年下のマザコン夫・源氏とは反りが合わず、冷え切った夫婦仲だった。気晴らしに出かけた祭で牛車担当の部下が六条御息所の牛車に無礼を働く。この事件が御息所の内的抑圧を壊すきっかけとなってしまう。夕霧を産んだ直後に他界。 - ★空蝉 (うつせみ)
地味目な人妻だが、その身分をわきまえた立ち居振る舞いやセンスの良さで、慢心モードだった源氏を虜にする。
紫式部の自己投影キャラとの噂あり。 - ★軒端荻 (のきばのおぎ)
空蝉の義理の娘。源氏の夜這いに対して空蝉が用いた空蝉の術の、いわば身代わり。 - ★夕顔 (ゆうがお)
市井に暮らす知性的な女性。その正体は、一人娘をもうけながらも本妻の嫉妬を恐れて姿をくらました頭中将の元愛人。物の怪に取り憑かれて命を落とす(六条御息所の生霊説もある)。 - ★末摘花 (すえつむはな)
- ★六条御息所 (ろくじょうのみやす(ん)どころ)
源氏の愛人の一人。元東宮妃。年上の未亡人であり、地位も教養も申し分ない美人であったが、そのプライドの高さゆえに源氏に距離を置かれてしまう。彼女もその気位ゆえ素直になれず、その抑圧はいつしか生霊と化し、葵上をとり殺してしまう。
元祖ヤンデレとされる事が多いが、葵上を殺したのが自分の生霊と気付いた時には、自分の嫉妬深さと犯した罪に恐れおののく描写がある。源氏の愛がもはや叶わぬと悟った彼女は伊瀬にいる娘の元へ身を寄せ、京を去り、その後に娘の後見人を(娘に手を出すなという忠告つきで)源氏に頼んでいる。死後も紫の上や女三宮に取り憑いており、内に秘めた女の執念を物語るキャラクター。ヤンデレではなくヤン化けと言った方が正しいだろう。 - ★朧月夜(おぼろづきよ)
右大臣の娘。弘徽殿女御の妹。奔放な性格。朱雀帝(源氏の兄)の女御になる予定だったが、源氏にかっさらわれる。その後尚侍になっても源氏と関係を持ってしまう。 - ★明石の御方 (あかしのおんかた)
明石の受領の娘だったが源氏と結婚、娘が後の帝と結婚、さらに孫が東宮になるという本作随一のシンデレラだが、その成功は彼女の賢さと忍耐力によるところが大きい。明石の中宮の母。源氏をめぐるライバルである紫上との関係もそつなくこなし、彼女の死後は年齢を経た源氏の心の慰めになった。 - ★女三宮(おんなさんのみや)
光源氏編のラスボス的存在。源氏の2番目の正妻。藤壺中宮の姪っ子。源氏の兄朱雀院の娘。彼女が源氏と結婚したためにいろいろな人の人生の歯車が狂っていく。 第3部主人公・薫の母。
その他の人物
- 頭中将 (とうのちゅうじょう)
- 一貫したあだ名がなく便宜上最初に中心人物となった第4帖『夕顔』で「頭中将」だっため固有名詞的に読者にこう呼ばれる。
- 作品内では彼はどんどん出世していくのでそのときの官職で呼ばれる。引退後は「致仕の大臣(ちしのおとど)」とよばれる
- 光源氏の親友にして義兄(葵の上の兄)。また、政敵でもある男。血縁的には従兄弟でもある(母親が桐壺帝の妹)。
- 光源氏に女遊びを教えた張本人。彼と友達との会話で中流の女性が良いという話になり源氏は中流の女性を相手にしていく。
- 左大臣藤原家の長男。
- 子供は10人以上いる子沢山。というか本人も全員は把握してない。男の子が多く、娘は4人ほど。
- 妻は右大臣藤原家の四の君(弘徽殿女御の妹・朧月夜の姉)。政敵の娘と結婚してるのは両家の緊張緩和のため。
- 光源氏の後を追うように出世して太政大臣まで上り詰める。
- 光源氏のライバルキャラだがかませ犬ポジションにされる事が多い。
- 光源氏と並ぶイケメンで背が高く、学問にも詳しくまた芸術、運動神経にも恵まれている。
- 甥っ子である夕霧を可愛がっていたが雲居の雁との仲が知れると激怒し疎遠に。のち和解し結婚を認める。
- 陽気な性格だったが、長男の柏木の死後は激しく落ち込む。
- 一貫したあだ名がなく便宜上最初に中心人物となった第4帖『夕顔』で「頭中将」だっため固有名詞的に読者にこう呼ばれる。
- 朱雀帝(すざくてい)
桐壺帝の第一皇子。弘徽殿女御の息子。源氏の兄。彼自身は優しいいい人なのだが母親・祖父が源氏を恨んでいてる。物語後半、何を血迷ったのか自分の娘を源氏に嫁がせてしまう。 - 弘徽殿女御 (こきでんのにょうご)
桐壺帝の妻の一人。朱雀帝の母。強大な権力を持つ女帝的存在。アンチ桐壺更衣から始まり、その子である源氏や桐壺帝の新しい妻、藤壺に対しても激しい憎しみを抱く。『源氏物語』の舞台、平安時代の宮廷での女性の権力を表す重要人物でもある。一度は源氏を失脚させる事に成功するが…。 - 蛍兵部卿宮(ほたるひょうぶきょうのみや)
- 光源氏・朱雀帝の異母弟。
- 桐壺帝の皇子ではあるのだが何番目の子なのかはわからない。
- 「蛍」兵部卿宮と呼ばれているのは第25話「蛍」で源氏が宮に蛍で明かりをつけて玉鬘の姿を見せたことから。
- 当代きっての風流人。絵やお香の判者を務めている。
- 兄弟の中では光源氏と一番仲がよく不遇の時代も交流を続けその後も親しくしている。
- 最初の正妻は右大臣の娘(弘徽殿女御・朧月夜の姉妹)。しかし早くに死別。夫婦仲はよかったらしくその後も想い返している。
- 後妻は真木柱(髭黒の娘、式部卿宮の孫)。が、歳が離れすぎていてうまくいかなかった。
- 風流人ではあるが女人に問題あるとされ、玉鬘や女三宮に求婚したときもこれを理由に断られている。また最初の妻がいたときも女がけっこういたらしい。
現存する源氏物語
現在に伝わっている源氏物語で確実に紫式部自身が書いたもの、もしくはオリジナルを忠実に写本した(とされるもの)ものは一切残っていない。
元々同人小説として書かれ始めた源氏物語であるため、読者は気に入った物語を手元に残しておくために写本をしたのである。その過程で部分的な加筆やオリジナル展開を混ぜたりされた。
紫式部 「ねぇねぇ今度オリジナル小説書いたんだけど、読んで感想きかせて」 オリジナルを渡す
友人A 「いいよー」
「あ、この話好きかも。手元においておきたいから写本しておこっと。
ついでにこの表現と文章をちょこっと変えちゃえ」 写本Aが発生。オリジナルは紫式部に返却
↓
友人A 「友人(の紫式部)が書いた小説が面白いんだけど見てみる?」 写本Aを渡す
友人B 「見る見る。貸して」
「あ、この話好きかも。手元においておきたいから写本しておこっと。
ついでにこの表現と文章をちょこっと変えちゃえ」 写本Bが発生。写本Aは友人Aに返却
↓
友人B 「友人から借りた小説が面白いんだけど見てみる?」 写本Bを渡す
友人C 「見る見る。(以下ループ・・・・
というようなことが頻繁に起こった。
さらに藤原彰子の女房になりある程度管理された同人小説となっても、下書き草稿を藤原道長が黙って持ち出すというようなこともおこり紫式部の生存していた時点ですでにカオスな状態になっていたとされる。
また源氏物語は54帖だけではなくいくつかの話が出まわるうちに失われたのではないかとか、いくつかの話は紫式部ではない誰かがつくったオリジナルの話ではないかとも言われている。つまり2次創作の公式化
現在残っている源氏物語は54帖完全版「だけ」でも百種類以上がある。大きく分けて「定家本系」「河内本系」「その他」である。これらの分類だけでも源氏物語研究の一分野として成立するほどである。
また現在一般的に出版されているものは藤原定家がオリジナルの再現を目指して編集した定家本の「写本の一つ」である。
ああもうややこしい!!
あさきゆめみし
- 現代版のコミカライズ。大和和紀による漫画。
- 累計1700万部突破のベストセラー。海外でも翻訳されている。
- 非常にわかりやすく描かれており、古典入門にもピッタリ。
- ほぼ原作通り忠実に描かれているがいくつか変更点がある。
- 宝塚歌劇団により2000年に舞台化・映像化。
- ノイタミナでアニメ化もされたが出来がイマイチで原作者が原作を引き上げたため、源氏物語本体のアニメ化になった(まあこの長大な物語を11話に収めろというのは無理な話ではある)。
- UULAでムービーコミック化された。
関連動画
(左)「…ただのロリコン?」 (右)「源氏物語にリアリティなんて必要ないのよ、所詮ブスの妄想なんだから!」
生放送
関連項目
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