演歌の女王とは、2007年冬クールに放送された日本のテレビドラマである。
概要
2005年夏クールに放送されて、好評を得た『女王の教室』のスタッフが再集結して制作された人情コメディドラマ。脚本の遊川和彦、主演の天海祐希はもちろん、演出陣や脇役のキャストも多くが横滑りして再登壇している。
内容は『女王の教室』のシリアスな要素をほとんど排除しており、むしろギャグや遊び心をふんだんに盛り込んだ演出・ストーリー展開になっている。しかし、CG、テロップ、唐突な演歌歌唱などの演出は少々突飛な印象を与え、少なからず当時の視聴者を戸惑わせていた。
また主題歌は平井堅が担当しているが、彼は劇中で使用されるオリジナル楽曲『女のわかれ道』の作詞作曲も兼ねて担当しており、なおかつエンディング映像にも出演している。なぜここまで彼が協力してくれていたのかは不明だが、彼のバックアップはドラマの大きなアピールとなっていた。
局も異なり、関連性も全く無いが、今作の『女王』のように、タイトルに同一の単語を入れてシリーズ化にしてしまう手法は2003年から2006年にかけてフジテレビが草なぎ剛主演で『僕の生きる道』『僕と彼女と彼女の生きる道』『僕の歩く道』と近い時期に行っていた。
しかし、『女王』名義の場合、この『演歌の女王』で途絶えてしまったため『女王シリーズ』と言えるかどうかは微妙なところである。ちなみに遊川和彦脚本・天海祐希主演・日テレ系連続ドラマという布陣は2015年秋クールに水曜22時に『偽装の夫婦』として復活を遂げている。
あらすじ
主人公、大河内ひまわり(天海祐希--本名 信友幸子)は売れない演歌歌手。一度『女のわかれ道』というシングルが5万枚のプチヒットを飛ばしたきり、新曲を出しても売れずにいた。以降、泣かず飛ばずの歌手活動を続けている。主な収入源は弁当屋のパートである。
そんな中、ついにマネージャーから引退話を持ちかけられるひまわり。そのきっかけとしてマネージャーは見合い話を持ってくる。自分でも見切りをつけたい、と思う反面、まだ歌手活動を続けていたいという思いで葛藤しながらもひまわりは渋々見合い話を承諾する。
会場でぎこちないお見合いを続けているとふと見知った男がひまわりの前に現れる。彼の名は田丸ヒトシ。(原田泰造)ひまわりの元恋人。この男はひまわりの人生を狂わせたダメ男であった。
彼と再び関わる事でひまわりはさらに不幸な人生を歩み始めていく...。
主な登場人物
- 大河内ひまわり(天海祐希)
- 子供時代のひまわり(福田麻由子)
- 田丸ヒトシ(原田泰造)
- 五味貞子(成海璃子)
- 花田信(武井証)
- 一条真佐美(酒井若菜)
- 田丸道代(池内淳子)
- 温水啓司(温水洋一)
- 信友星江(高畑淳子)
- 信友勝也(黄川田将也)
女王の教室との対比
メインスタッフが共通。タイトルにも『女王』という単語が含まれ、主演は天海祐希、また放送枠も日テレ系土曜21時枠、という事もあり『女王の教室』と対比した要素が様々な箇所で見受けられる事が出来る。
脚本
基本的な作風は人情コメディであり、『女王の教室』とは真逆のタッチで作られている。
『女王の教室』はあまりにも過剰なシリアス展開や先の読めないストーリーを1つの売りにしていた。しかしこちらは【過剰なシリアスさ】は【過剰な程の笑いを意識したギャグ演出】と対比。また【先が読めないストーリー】は【型が決まった脚本によるお決まりの展開】と対比されている。
『演歌の女王』のお決まりの展開は主に次の要素で成り立っている
- 【前回のおさらい】:2話から最終話まで冒頭に登場するシーンであり、子供時代のひまわり (福田麻由子) による前回のおさらいと今後の展開の予言めいた一言がある。毎回 子供ひまわり は様々な衣装を着こなし、無駄に福田麻由子のコスプレ要素にもなっている。
- 【女のわかれ道】:主人公のひまわりが重要な決断を下さなければならないとき、CG合成で『女のわかれ道』が出現し、その道のどちらかを歩むことで決断を表現する。1つの道は『楽だが非情な選択肢』もう1つの道は『面倒くさいが情のある選択肢』である場合がほとんどである。
- 【妄想】:基本的に人の良いひまわりが、激怒して大暴れする様子が展開される。が、全てひまわりによる妄想である、というオチがつく。
- 【漢字の成り立ち】:その回によって一つの漢字が取り上げられ、その成り立ちを説明することによってひまわりが説教をする。ちなみに妄想の中で行われる。
- 【意識不明のひまわり】:少しだけ、しんみりした展開の後、なぜか必ず事故に遭うひまわりは毎回意識不明の重体になり病院のベッドで生死をさ迷うが、「私、死んでないから」の一言と共に不死身の身体で起き上がり、そのままストーリーが展開される。
- 【演歌歌唱】:ひまわりの心境を表した演歌を別カットでひまわりが歌唱する。
- 【ひまわりのテロップ】:ひまわりのその時の想いが毛筆のような達筆テロップで画面に現れる。
- 【次回のメインキャラクターとの絡み】:次回スポットが当たる登場人物と、ひまわりが会話して「次回へ続く...」となる。
これらのお決まりの展開は中盤から少しずつ崩され、ストーリーが予想外の展開に進み始めた、またひまわりの心境に変化が表れている、という示唆になる。
色彩
基本的に教室が舞台で、真っ黒な衣装に身を包んだ「阿久津真矢」(女王の教室の主人公、天海祐希が演じている) と色味は地味であった『女王の教室』であったの対し、画面作りがカラフルであるように意識がなされている。象徴されているのが、ドラマのシンボルとなるひまわりの着物姿である。赤地に大きなひまわり模様が複数、というインパクトのある着物になっている。
また、ひまわりの自室も着物、トロフィー、ポスター、その他生活用品など、とにかく物で溢れかえっており賑やかでゴチャゴチャした画面作りに一役買っている。しかしこの部屋は3話でとある人物によって全くの別風景となってしまうのだが...。
ヒロインの性格設定
『女王の教室』の阿久津真矢と『演歌の女王』の大河内ひまわりは、同一の思想を持ちながら表現の仕方が真逆である、という点で対比となっている。
簡単に言えば阿久津真矢は「基本的に周囲に冷徹でありながら、根底に優しさを持つ」であったのに対して大河内ひまわりは「基本的に周囲に優しさを表すが、内面では少しは冷徹でなければならない、という自制心を持つ」という性格設定となっている。
しかし、自分の事は後回しになってでも周囲の人間に幸せになってほしい、という思想は概ね一致しており例えるならばスケッチが同一でありながら塗り立てている絵の具の色が全く違うため別のものに見える絵、とでもいえるヒロイン造形となっている。
エピソードリスト
- オーマイガッ!こんな不幸な女がいたの!?大河内ひまわり登場
- 不幸を食べ、幸せを生む不死身の女
- いま、イジメられている君へ
- 好きな人にうまく告白する方法
- 家族が危ない!!最後の救出作戦
- 初の生熱唱が奇跡を起こした!!
- サヨナラあなた東京を捨てます
- アンタを殺して、ワタシも死ぬ!
- 死ぬか生きるか?女のわかれ道
- 天まで響く歌声が起こした奇跡
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関連項目
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