火炎直撃砲とは、「宇宙戦艦ヤマト」シリーズに登場する架空の兵器である。本項では、火炎直撃砲を装備する戦艦『メダルーザ』についても記述する。
また、リメイク版である「宇宙戦艦ヤマト2199」劇場版「星巡る方舟」に登場した火焔直撃砲と、装備艦『メガルーダ』についても記述する。
概要(火炎直撃砲)
白色彗星帝国「ガトランティス」が運用する艦隊決戦兵器。バルゼー艦隊の旗艦『メダルーザ』に装備されている。土星星域おける、土方竜が率いる地球艦隊との決戦で威力を発揮した。なお、メダルーザは劇場版「さらば」には登場せず、TV版「ヤマト2」にのみ登場するため、火炎直撃砲も「ヤマト2」にしか登場しない。
特徴
簡単に言えば、高エネルギー弾を瞬間エネルギー移送装置でワープさせ、ターゲットに撃ちこむ兵器、いわばガミラス戦法(デスラー戦法、ドメル戦法とも)の砲撃版である。一説には、瞬間エネルギー移送装置の技術は、ガトランティス帝国の同盟国ガミラスからもたらされたものであるという(PSゲーム版では、明確にその設定が採用された)。
ワープで空間を跳躍してくるため、弾道というものが存在せず、回避は事実上不可能である。ただしその原理上、攻撃側がワープアウト地点(着弾点)に設定した場所から離れれば、命中はしない。そのためPS2ゲーム版で、土方提督は「狙いをつけさせない」よう、艦隊に動き回るように指示を下すシーンがある(ただし、そのために波動砲の使用は、事実上封じられた)。
その凶悪さ
宇宙戦艦ヤマトには、波動砲という有名な「切り札」が装備されているが、「切り札」を持っているのは、地球側だけではない。敵対勢力にも数多くの「秘密兵器」や「新兵器」と言うべき物が登場している。具体的には、この火炎直撃砲の他に、ガミラス帝国の反射衛生砲やデスラー砲、白色彗星帝国の破滅ミサイルや潜宙艦(ステルス艦)、暗黒星団帝国の重核子爆弾やプレアデス級戦艦、ボラー連邦のブラックホール砲やワープミサイル、ディンギル帝国のハイパー放射ミサイル、などである。
これら敵対勢力の「切り札」の中でも、火炎直撃砲の脅威度・危険度はトップクラスであると評されることが多い(誤解が無いように言っておくと、他の兵器も十分に危険で凶悪な代物である)。以下に、どれだけ凶悪な兵器であるかを記載しておく。
火炎直撃砲の脅威の一つは、非常に射程が長いこと。「ヤマト2」では、地球のアンドロメダ級戦艦が搭載する拡散波動砲の2倍の射程があった。しかも、どうやらそれが最大射程ではなく、有効射程であったようなので、実際の射程距離はもっと長いかもしれない。
威力も高く、戦艦1隻や、巡洋艦・駆逐艦を数隻程度であれば、一撃で撃沈できるほどの威力がある(上記のゲーム版では、着弾点の温度は約7万度と超高温で、アンドロメダ級でもやはり一撃で撃沈できる)。つまり、ほとんどの艦は命中したら撃沈である。
そして、発射までにある程度の時間を要する波動砲とは異なり、火炎直撃砲は連射できるのである。回転型速射砲に代表されるように、兵器の発射速度を重視する白色彗星帝国の性格が表れていると言える。
これらの特性を活かした、アウトレンジからの強力な連続攻撃のため、土方提督が率いる地球艦隊は大苦戦を強いられた。初見殺しとは、火炎直撃砲のためにある言葉かもしれない。ただし、どんな強力な兵器にも弱点や制限はあるもので・・・。
戦艦『メダルーザ』
メダルーザは、塗装は淡緑色という一般的な白色彗星帝国の艦と同じカラーリングだが、艦形については双胴型でエンジンは双発という、やや特異なデザインとなっている。双胴型となった理由は、その双胴の部分に瞬間エネルギー移送装置を装備しているためである。全長、全幅、全高などの詳細は不明(ただし、画面上では大戦艦よりは小さく、駆逐艦よりは大きく描かれている)で、火炎直撃砲以外の武装は、艦首に装備された連装ビーム砲のみが確認できる(PSゲーム版では、対空砲等の他の装備も充実している)。
概要(火焔直撃砲)
劇場版宇宙戦艦ヤマト2199「星巡る方舟」では、火炎直撃砲ではなく「火焔直撃砲」、瞬間エネルギー移送装置が「転送投擲機」と、名称が微妙に変更されているが、長射程、高威力、連射可能、という(凶悪な)基本的性質は「ヤマト2」と同じ。帝星ガトランティスのグタバ遠征軍(小マゼラン遠征軍)が使用する。「星巡る方舟」の冒頭では、バジフ・バンデベルが指揮するガミラス艦隊を、文字通り全滅させた。特に、ヤマトの主砲が全く通用しなかったゼルグート級の正面装甲すら一撃で貫通して撃沈するなど、その威力は凄まじい。もはや「命中したら撃沈」どころの話ではなく、「かすっただけで撃沈」というレベルである。
本作での火焔直撃砲は、ガトランティスがガミラスから技術提供を受けて完成させた兵器ではない。転送投擲機は、捕虜として捕まえたガミラス人技術者(科学奴隷)に開発させたもの、砲自体は異星文明から盗掘した技術を使用しているとのこと。他文明の知識や技術、資源を奪いながら、自国の国体維持と勢力拡大に邁進する、宇宙戦艦ヤマト2199における『蛮族』ガトランティスの性質を体現した兵器と言える。2199におけるガトランティスは「ヤマト2」とは異なり、(少なくともグタバ遠征軍は)とにかく野蛮な連中、という設定らしい。
メダルーサ級殲滅型重戦艦『メガルーダ』
グタバ遠征軍(小マゼラン遠征軍)の大都督ゴラン・ダガームの旗艦。「メダルーサ級」とあるように、「メガルーダ」は個艦名であり、あくまでメダルーサ級の1隻という位置付けである。火炎直撃砲を搭載した艦が複数存在するという恐怖だけで、「なぜメダルーザでは無いのだろうか?」という疑問は消し飛びそうである。
オリジナルと比較して、火力が大幅に増強されている。艦前部甲板には五連装大砲塔を搭載し、さらにその下部には魚雷発射管を9門備えているなど、正面火力は絶大。また、艦後部には主砲として回転砲塔を3基装備し、さらに中小火器を多数装備しているなど、正面以外へも火力を展開できる。
また、装甲といった防御力も低くはなく、ヤマトの主砲が船体に直撃しても、艦それ自体の損傷は軽微であった(ただし、転送投擲機は損傷した)。
加えて、航空戦艦としての性質も持ち、ガトランティスの主力攻撃機『デスバテーター』を12機搭載できる。
これらの装備の中で、特に脅威なのが五連装大砲塔であろう。これは、火焔直撃砲(というより転送投擲機)を使うまでもない距離の敵に対して、火焔直撃砲へ供給するエネルギーをそのまま撃ちだす兵器である。つまり、5門まとめた威力は、火焔直撃砲と同等と考えて差し支えない。実際、小説版では1発がヤマトのカタパルト付近の艦尾を貫通している(あと少し狙いがズレていたら、波動エンジンを撃ち抜かれていた可能性がある)。火焔直撃砲が使用不能になっても、艦の火力は落ちていないのである。
このように殲滅型の名にふさわしい強力な戦艦であるメガルーダに対し、ダガーム大都督は大きな信頼を寄せて溺愛しているらしく、
と、発言している。・・・とは言うものの、戦艦もつまるところは道具であり、道具や技術は使う人次第であることは、作中でも様々な人が言及していることである。
丞相閣下「お前に火焔直撃砲を持たせたのは間違いであったな」
余談
「星巡る方舟」など、イスカンダルからの帰路では、ヤマトは波動砲を封印された状態で敵との戦闘を強いられることになる。波動砲という「切り札」を封じられたことについて、砲雷長の南部康雄は不満とも不安とも言えるような、微妙な感情を抱いていた。
だが、火焔直撃砲と戦うにあたっては、むしろ波動砲が使えなかったことが幸いした、と言って間違いないであろう。火焔直撃砲への対処法は、「星巡る方舟」の劇場版や小説版では細部が異なっているものの、着弾点から如何にして逃れるか、という点が重要であることは共通している。そのためには、素早く動き回ることが欠かせない鈍足なゼルグートには対応不能だろう。一方、波動砲を発射しようとするならば、発射時には重力アンカーで艦を安定させて、その場に静止させる必要がある。これは、素早く動き回るのとは真逆である。
すなわち、火焔直撃砲はに対処しようとするならば、結果として、波動砲の使用は諦めざるをえないのである。これはちょうど、「ヤマト2」やPS2ゲーム版で火炎直撃砲に狙われないようにするため、結果としてアンドロメダが拡散波動砲が封じられた状況と同じである。
ヤマトの波動砲が使用可能であったら、火焔直撃砲の格好の標的になってしまう状況を、自ら作り出してしまっていたかもしれない。「波動砲が無くても、ヤマトはやれる」ではなく、「波動砲が無かったからこそ、火焔直撃砲に対処できた」のではなかろうか。
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