炭化ケイ素(シリコンカーバイド/Silicon Carbide、カーボランダム)とは、無機化合物の一種である。
概要
炭素とケイ素の化合物。
炭素とケイ素が1:1で結合している。
人呼んで「ダイヤモンドの親戚」。
ダイヤモンドとシリコンの中間の性質を持つ。
硬度、耐熱性、化学的安定性に優れることから研磨剤や耐火材、発熱体などに用いられる。
また半導体としての性質も持ち、次世代半導体、特にパワーエレクトロニクス方面での活用も期待されている。
なぜここまで硬いのか
炭化ケイ素は地球上に存在する物質の中では最硬(モース硬度15)のダイヤモンドに迫る、モース硬度13という数値を誇る。
なぜここまで硬いのかというと。
炭素とケイ素、相性が抜群
炭化ケイ素を構成しているのは炭素とケイ素。
どちらも14族に相当する、言わば兄弟分の元素であり、どちらも共有結合性を持つ。
その上電気陰性度の違いによりイオン性も持つため、相性は抜群なのである。
漫画やアニメで言えば2人一組で戦う兄弟キャラのような性質なのだ。
結晶構造が理想的
炭化ケイ素の結晶構造は正四面体が大量に連なった構造をしている。
Splatoonのスプラッシュボムが大量に敷き詰められている、と考えればいい。
で、この正四面体、最も安定した結晶構造と言われている。
つまり最も安定した=最も硬いフォーメーションを取っている。
一行で言えば「理想のタッグが理想のフォーメーションを取っている」。
そりゃ硬いわ。
製造法
純度が高くなくてもいい代わりに工業的にトン単位で製造するのなら、やることは意外にシンプル。
黒鉛の粉の「芯」を中心として、その周りに珪石やコークスの混じったもので覆って、芯の黒鉛に電気を流す。
そうすると芯の黒鉛が発熱し、珪石の中のケイ素と反応をして炭化ケイ素ができる。
やることはシンプルだが、鬼のように電力を要するので生産工場の近くには水力発電のできる環境があるとベスト。
用途
素材・加工
上記の通り炭化ケイ素はとにかく硬い。
しかも純度が高くなくてもいいならダイヤモンドよりも製造が容易=安い。
「量産型工業用ダイヤモンド」的に使える素材である。
ショットブラスト(素材の表面に何らかの投射材を吹き付け錆落としや表面加工などをする加工法)の投射材、ファインセラミックスの一つとして扱う、さらには炭化ケイ素繊維なんてのも開発されている。
ちなみに開発したのはおパンツで有名なグンゼとエネティック総研。
その他には原子力関連や宇宙開発にも応用が期待されている。
特に原子力においては熱伝導性の良さ、耐熱性、水との反応性の低さなど、理想とも言える条件が揃っている。
半導体
恐らく今最も熱い分野。
シリコンの次の半導体材料として、特にパワエレ方面でGaN(窒化ガリウム)と並んで注目されている素材である。
シリコンよりもバンドギャップ幅が大きいことから、大電力・高耐圧・耐熱性・耐放射線に優れた半導体材料として注目されている。最初は青色LEDの素材として期待されていたが、発光が弱くて使い物にならないと判断されたとか
特に耐熱性や放熱性に於いては、一部では窒化ガリウムよりも優れているとも言われており、数百~数千キロワット級のパワー半導体でじわじわと普及している。
山手線の新型車両のE235系など、鉄道分野でも普及が始まっている。
一方でスイッチング速度に関しては窒化ガリウムの方に分があるとも言われており、小型化には限界があるという話もある。
電子工作を嗜む方は秋月電子にも炭化ケイ素材料を用いたダイオードなどが入荷されているので、使ってみるのもいいかもしれない。
装飾
適当な炭化ケイ素結晶を「モアッサナイトダイヤモンド」と言って高額で売りつけるという事例が起こっているとか。詐欺じゃん
まあ一応、大粒の結晶は装飾に使えないこともないし、上で書いたように「ダイヤモンドの親戚」とも言われる物質なので間違いでもないのだが…。
それに本物のモアッサナイトは天然物は地球上で産出するのは稀(主に隕石由来)、宝石グレードのものを人の手で合成するとなると下手すると…は不要で相当なハイコストになる物質である。ダイヤモンドは永遠の輝きなんてレベルじゃない。
ダイヤモンドに負けず劣らずの高級品なのである。
関連動画
関連項目
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