孤立せよ・・・
無頼伝 涯(ぶらいでん・がい)とは、福本伸行の漫画作品である。週刊少年マガジンにて2000年16号~2001年8号まで連載、単行本は全5巻。
あらすじ・概要
児童養護施設を飛び出し、空き家暮らしで孤立無援の日々を過ごす中学生・工藤涯(主人公)はある日、資産家・平田隆鳳に対する強盗殺人の濡れ衣を着せられ、民間の矯正施設『人間学園』に収容される。
だが、時の権力者によって離島に建設されたこの人間学園は、地獄のような虐待が日常的に行わる治外法権地帯であった。自身への執拗な迫害にも屈せず、脱走の機会を窺い続ける涯は、己の無実を証明すべく人間学園に最後まで闘いを挑み続ける。涯の大願は成就するのか。そして人間学園の正体とは――
1999年まで週刊ヤングマガジンで連載されていた大ヒット作、『賭博黙示録カイジ』の作者が執筆する、「熱いぜ天馬!」(1990年)以来の週刊少年マガジン作品ということで福本ファンからは大きな注目を集めた。
脱走や格闘などのアクションシーンが多く描かれ、カイジやアカギのようなギャンブルの描写を得意とする福本伸行の作品の中でも異色を放つタイトルの一つである。
残念ながら掲載媒体が少年誌であることで、非行と矯正がテーマの軸に含まれている本作品は児童にとっては難解な心理描写も多く、1年未満であえなく打ち切られてしまった。
しかし「ざわ・・・ざわ・・・」に代表される福本節は健在で、とりわけ登場人物・澤井は「アカギ」の鷲巣、「銀と金」の蔵前を凌駕するほどの狂気に満ち溢れた人物像で描かれており、読者に強烈な印象を残した。
福本伸行の紛れもない代表作品の一つである。
登場人物(※ネタばれが多分に含まれます)
- 工藤涯(主人公)
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14歳の少年。中学生生まれた直後に両親から捨てられ、13歳まで施設で育つ。顔面に火傷の跡(稲妻状)が大きく残っているが、作中でその理由が明らかにされることは無かった。自立意識がきわめて強く、そのため親の脛齧りでぬるま湯に浸かるだけの同級生とは相容れず、学校生活では常に孤立していた。そんな折、池田貴行という男と出会い涯の生活は一変する――
- 澤井
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私立の矯正施設「人間学園」の課長。実質的な責任者であり、収容した少年(寮生と呼ばれる)の更正教育を自ら担当する。無抵抗の寮生に対してゴム弾を浴びせたり、電撃棒で電撃を与えるなどの懲罰は茶飯事で、時には薬物による拷問を行うなどサディズムの限りを尽くす。懲罰房の機能を備える犬の部屋(DogRoom)では、涯たち寮生に対し、四つん這いの生活を余儀なくされる天井の低い空間へ押し込め、数週間放置するという迫害に及んだ。やがてその拷問から開放された寮生たちに贈られたとある言葉は、今なお読者の間では名セリフとして語り草となっている。本作におけるもう一人の「主人公」と言って差し支えないほどの存在感を読者に与えた福本ワールド屈指の名キャラクターである。
- 安部守宏
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飯田橋警察署生活安全課の不良刑事であり涯の協力者。殺人犯の濡れ衣を着せられ逃げまとう涯を、職務として捕まえはしたが、当初から涯の無実を確信していた。借金まみれで汚職に手を染めるほどにまで落ちぶれいていた安部は、資産家の殺人事件が絡んだ冤罪劇に莫大なカネの臭いを嗅ぎ取り、涯に協力することに。
- 石原
- 小川
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涯の協力者。カイジにおける三好のような気弱で頼りなさそうな性格だが、やがて涯の行動に呼応するように自分の意思で脱走を決断する。
- 平田
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鳳臨グループの会長・平田隆鳳の息子。平田隆鳳を殺害し、涯を犯人に仕立てあげ人間学園に追いやった張本人。平田の息子は涯の同級生であり、これも冤罪工作に加担し涯を陥れた。
- 陽気な外国人
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関連項目
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