煙幕とは、自らの存在や意図・行動を遮蔽するために発生させる煙のことである。
単純に「スモーク」と呼ばれることもある。
その他、目印や目標指定、合図、囮(デコイ)、自己防御に用いられる場合も多い。
銃撃戦から長距離・空中の味方への目標指示など用途も様々。
映画撮影・演劇などにおける特殊効果・演出技法として用いられる場合もある。
(単純なものでは、発煙筒や水に入れたドライアイスが用いられる)
概要
人間は外界から受ける情報の多くを視覚に頼っている。そのため、古来より戦いを優位に進める手段として敵の視覚を妨害・欺瞞する手段が考案されてきた。迷彩、夜襲、囮、陽動、遮蔽、閃光による目くらましなどその手段は多様であるが、煙幕もその中の一つである。
特に肉眼で透視不可能な濃密な煙を意図的に広範囲展開するものを指す。
(前述・後述の様々な用途もあるが、本来の用途は敵の視覚情報の妨害のため)
- フィクションで忍者や怪盗の投げるような煙玉。
- 近代においては手榴弾・砲弾・ロケット弾など様々なものから展開できる。(発煙弾)
- 装甲車などの防護用に装備され射出するもの、化学的に放出するものもある。
- 広義には敵の視界を遮れば良いため、必ずしも専用の装備品が必要な訳ではない。
赤・黄・オレンジ・緑・青・紫といった着色されたバリエーションもあり、色彩に意味を持たせ、同時展開時においても指示や識別を容易するといった手段にも用いられる。(緑色で味方の位置、赤色で敵や支援攻撃の位置を指示するなど)
基本的に発煙弾に毒ガスや催涙ガス(催涙弾)は含まないが、煙が強く充満した空間ではガスマスク等がないとむせる。暴動などにおいては濃度の高い催涙ガスが疑似的に煙幕に見える場合もある。
デメリット
- 展開位置を間違えると自身や味方の視界や行動に支障が出るなど逆効果。
- 広範囲に展開されやすく、敵味方問わず遠くからでも目立ちやすい。
- 煙幕を展開した時点で何らかの存在・意図・異常があると分かるため、敵や警戒態勢や防御態勢に入る。
- 風向きや風速によって意図した範囲に充満してくれない場合もある。
- 一度発煙を始めてしまうと瞬時に展開終了できない。
- 発煙手榴弾の大きさでもジュース缶くらいはあるので割とかさばり、携行数にも限度がある。
- 煙幕自体は非殺傷兵器なため、逆を言えば攻撃に利用できない場合がほとんど。
軍事における煙幕
かつては駆逐艦が煙幕を張ることもあったが、現代においてはほぼ陸上戦においてのみ用いられる。現代戦において海や空の戦いではレーダーによる電波誘導が主に用いられるのに対し、陸上戦では未だに有視界戦闘が基本であることが主な理由である。日中だけでなく暗視装置を用いた夜間での戦闘でも妨害効果を発揮する。熱源や燃焼を伴うものは可視光だけでなく赤外線(熱源映像装置)をも妨害できる。主な使いどころとしては以下のようなものが挙げられる。
- 敵の視覚情報を妨害し、味方の存在や位置を遮蔽、次の行動や移動先の予測を困難にする。
- 歩兵突撃の前に迫撃砲による榴弾と発煙弾の弾幕を敵部隊に浴びせ、狙い撃ちにされないようにする。
- 主に市街戦で発煙手榴弾を使用し、敵の視界や射線を切りつつ一気に移動する。突撃時・撤退時や援護といった様々な用途に使用できる。
- フルメタル・ジャケットのクライマックスではこの使用法で煙幕を張っている。
- 煙幕自体に赤外線(熱情報)を透過しない成分の添付や、燃焼(熱源)を伴うものもある。
- 対戦車ミサイルに対する防御手段。発煙弾発射機(スモークディースチャージャー)
- 発煙弾発射機とは別に、化学的に生成するものもある。
- 鮮やかな色の煙幕は遠くからでも目立つため、目印としても用いられる。
- あえて展開することで視線を集める、行動を起こすと誤認させるなど陽動にも利用できる。
フィクションにおける煙幕
ゲームにおいて
特殊装備品や手榴弾の一種として装備できたりスキル・アイテムで展開する事が可能な場合もあり、敵やモンスターからのヘイト、攻撃目標をリセットできる場合もある。
変な場所に煙幕を展開してしまい自身や味方を妨害する、煙幕を通り抜けた先で集中砲火を受けるといった経験はFPS・TPSなどではあるあるかもしれない。
狭い対戦マップなどの接敵地点において皆考える事は同じで、大人数や敵味方で煙幕を投げ合い長く展開されてしまい、「どうすんだこれ…」と晴れるまで/晴れてもお互いに飛び出せず膠着状態になることも。
類似するもの
煙ではないが、タコが獲物に襲われた際に目くらましとして吐く墨(タコスミ)は煙幕に非常に近い。なおイカが吐く墨(イカスミ)の場合は、目くらましというよりもむしろデコイ(囮)としての役割を果たす。
隠蔽に使用せず、煙の本数や長短でメッセージを伝えるものは狼煙(のろし)と呼ばれる。
ただし空高く立ち上り、広範囲の味方以外にも読まれてしまうといった欠点はある。
(→狼煙)
信号弾
煙でなく光を主とし上空へ発射するものは彩光弾・信号弾(シグナルフレア)とも呼ばれる。煙では視認しづらい夜間でも機能し、周囲に敵襲や異常を知らせる、着陸地点の指定、遭難などの救難捜索時など。各種合図として白色・赤色・緑色といった種類が用意される場合もある。
「信号拳銃」とも呼ばれるが、特に狙う訳でなく上空へ発射するものは拳銃型でなく使い捨ての筒型の場合もあるし、発光しない煙弾といった弾種もある。拳銃型の場合は再装填が可能な場合も多い。
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関連項目
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