爆発反応装甲(Explosive Reactive Armour、ERA)とは、爆発することで敵弾のダメージを軽減、あるいは無くす装甲である。要するに戦車とかに張り付いている弁当箱もどきのアレである。
概要
既存戦車の防護性を向上させるために使用されるモジュール化された装甲キット、すなわち付加装甲の一種で、ATGMやRPGなどの成形炸薬弾頭に対して高い威力阻止性能を持つ。一般的には二枚の薄い鋼板の間にシート状の爆薬をサンドイッチした構造になっており、成型炸薬弾頭から発生したジェットによって爆薬が起爆すると二枚の鋼板が前後に飛翔、これらの鋼板が進行してくるジェットに干渉して進行を乱し、ジェットの威力を阻止する。[1]
- 利点
- 欠点
- 随伴歩兵に危害が及ぶ
当然爆発物であるから着弾時には周囲に盛大に金属片をぶちまけることになる。これにより随伴歩兵を傷着ける恐れがある。
…とはよく言われるが実際には戦車の主砲発射時の衝撃波や、敵のHEAT弾の命中・起爆時の破片も随伴歩兵には十分危険であることなどを考慮すると、そこまで大きな欠点とは言い難い。 - APFSDSやタンデムHEAT弾頭に脆弱
着弾時に爆発、メタルジェットを形成するHEAT弾に対してERAは効果的だが、高速でカッ飛んでくるただの金属の矢であるAPFSDSには効果が薄い。また弾頭を二重化し、最初の弾頭がERAを起爆後に本命の弾頭が装甲を貫くタンデムHEAT弾頭には無力。ただしどちらもERAをタンデム化することによって対策可能。
- 随伴歩兵に危害が及ぶ
上記のようにERAとは一長一短の要素が強い。しかし利点である格安で簡単に防御アップが狙えるという利点は非常に大きく、世代が古くなったり装甲の劣る戦車でもある程度実戦に耐えるようにできるため世界中で大人気である。
特によく目にするのが、世界中にばら撒かれた装甲貧弱なパットン系列やモンキーモデルのソ連製戦車にERAを山盛りにし、場合によっては電子機器などのアップデートをも行う近代化である。時に整然と、時に乱雑にERAが貼り付けられたそのゴテゴテした姿はなんともいえない独特な雰囲気を漂わせている。
登場当初は装甲の貧弱な旧式戦車の防御力の水増し程度に考えられていたが、近年では非対称戦の増加による死角部分からの対戦車ロケット・ミサイルによる攻撃・被弾が増え、主装甲では補いきれない側面の防御に効果的であることから今までERAを軽視しがちだった西側でも搭載事例が増えている。特に最近は西側対戦車ミサイルのロングセラーであるTOWが西側3世代戦車相手に猛威を振るい、ERA搭載のロシア戦車がそれらに対して高い生存性を誇ったことから見直しが急速に進められている。そのため、これからもあちこちで利用され続けることだろう。
複合装甲の種類
イスラエル
アメリカ
フランス
イギリス
ロシア
- コンタークト1 よく見る中古のソ連製戦車に貼り付けてある弁当箱がこれ。
- コンタークト5 T-80Uから搭載されたERAの決定版。従来のERAと比べ、タンデム弾頭やAPFSDSにも高い防御効果を発揮する。
- レリークト コンタークト5の改良型。T-72BMから搭載。
- カクトゥス T-80UM2(チョールヌイ・オリョール)で試作されていた複合装甲とERAのハイブリッド。
- マラヒート T-14から搭載された最新型。車体に埋め込まれる形で搭載されるため従来のゴテゴテ感が無くなっている。
ウクライナ
ポーランド
- エラヴァ1/2/3 PT-91に搭載。コンタークト5に匹敵すると言われている。
チェコ
中国
関連リンク
- TOW vs. Shtora active protection system on T-90 tank. TOW wins. (Youtube 2016.2.26)…シリアの反政府ゲリラがT-90にTOWを命中させている。T-90のアクティブ防御システム「シュトーラ」はレーザー誘導ミサイルに効果を発揮するもので、有線誘導のTOWを妨害できなかったが、車両は撃破されなかった。おそらく爆発反応装甲が設計通り作動したものと思われる。
関連項目
脚注
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