狙撃銃とは、遠距離からの精密な射撃によって対象を攻撃するための銃器である。身も蓋もない言い方をすれば、「狙撃手が狙撃に使うための銃」。
最初から狙撃用に作られているものを指す場合が多いが
通常の銃から精度の良いものを選び出し、狙撃用にカスタムされたものもある。
(選抜射手用のマークスマンライフルなど)
概要
以上。
誤解のないように言えば、最高の狙撃銃だけあっても意味がなく
それを扱う人間と高い技量も必要である。(後述)
狙撃銃の一覧
こちらを参照 → 銃の一覧
「狙撃銃」の発達
ダヴィンチがどうのこうのとかいう初めて物語はウィキペディアに丸投げする気満々なので割愛。
戦術としての狙撃はアメリカ独立戦争の頃から注目され始め、南北戦争、ボーア戦争を経て第一次世界大戦あたりで大々的に使用されるようになった。私物の猟銃が戦場に持ち込まれたケースも多かったが、このころは歩兵用の小銃も精度のよいボルトアクション式が主力であり、歩兵用の小銃から出来がよいものを選抜して改造し(またはそのまま)狙撃兵に使用させていた。こうした流れは現代も続いているが、歩兵銃を小改造した狙撃銃は「選抜射手ライフル」(マークスマン・ライフル)などと言って区別することもある。
第二次世界大戦後、ボルトアクション小銃が歩兵のメインウェポンから外れると、一部の旧式な小銃ベースの狙撃銃は残ったが、狙撃銃の主力はセミオートマチック(半自動式)やボルトアクションでも新規設計のものへと移った。しかし専用設計の狙撃銃と専門の狙撃兵を重視しない軍隊も多い。
陸上自衛隊も64式小銃にスコープを付けて運用していたが、2002年度から対人狙撃銃を調達するようになっている。[1]
冷戦後期、テロリストによる人質事件が脅威になると、警察など治安機関の対テロ部隊による狙撃の重要度が増し、これに答える形で対テロ任務を想定した狙撃銃が設計されるようになった。
現在では警察用、軍用とも狙撃戦術が重視される傾向にあり、各メーカーが様々な種類の狙撃銃をマーケットに提供している。中には専用の弾薬を使用する消音狙撃銃や大口径弾薬を使用する対物狙撃銃等のゲテモノニッチ製品もあるが、おおむね7.62mmNATO弾クラスを使用するものが中心である。
ハンドガンやアサルトライフルほど数が売れない割に、加工精度や独特のノウハウなどが必要なため価格も高くなりがち。しかし逆に大量生産が得意でないが技術には自信のある中小メーカーが参加しやすいともいえる。
ボルトアクションとセミオートマチック
現代の狙撃銃は基本的にこのどちらかである。
ボルトアクション | 命中精度(集弾性能)が極めて高い。 一発撃つごとに手動でボルトハンドルを操作し、排きょうと再装填を行う。セミオートに比べると構造が簡素なため、安価で軽量、堅牢かつ信頼性が高く精度も出しやすい。 反面、手動操作の手間がかかるぶん連射力に劣る。 (→ボルトアクション) |
セミオートマチック | 発射時の反動や燃焼ガスを利用して自動的に排きょうと再装填を行う。手動操作不要で連射が可能なため制圧力・即応力が高い。 反面、構造が複雑で内部に動作部品を持つ関係上、重くなりがちでジャム(弾詰まり)のリスクも伴う。 ボルトアクションと同等の命中精度を出す場合、価格は跳ね上がる。 |
とまあ、こんなかんじに一長一短があり、どちらを選ぶかは、選ぶ組織の考え方(ドクトリン)と予算による。
従来セミオートは内部に動作部品を持つ関係で精度を出しづらいといわれてきたが、近年ではセミオート狙撃銃の精度に関する評価も高まりつつあり、採用も増えている。
単純に精度の良い通常のライフルに「そのままスコープを載せただけ」のものは
部品・弾薬・弾倉が共用できるためコスト面や補給面で有利だが、各性能は狙撃設計のものに劣る。
設計アプローチによる分類
- 独自設計の狙撃銃
- 既存の歩兵用小銃や猟銃の設計を流用せず、一から新規設計した狙撃銃。流用できる銃の設計経験を持たない場合や狙撃銃としての性能を追求する場合などは、完全に独自設計で作ることがある。
- ドラグノフ、WA2000、L96A1など
- 民生品の流用
- 狩猟用、射撃競技用などの民生品を流用した狙撃銃。精度に関する限り、技術的に成熟した民生用の銃器は軍用に引けをとらない。また狙撃戦術自体狩猟や射撃競技の影響を大きく受けていることもあって、猟銃や競技銃ベースの狙撃銃は少なくない。
- M40、M24、ゴールデンベアーなど
- 軍用小銃の流用
- 一般歩兵が使用する小銃を再設計した狙撃銃。単に精度のよいものを選んでスコープをつけただけの場合もあるが、より狙撃に使いやすいようフレームなどを全般的に再設計して、専用狙撃銃にする場合もある。
- PSG-1、SG550スナイパーなど
ニッチ製品
対物狙撃銃 (対物ライフル) |
日本語訳では「狙撃」の語がつけられることが多いが、「Anti-Material Rifle」なので特に狙撃専用と言うわけでもない。12.7mm~20mmの重機関銃/機関砲弾薬を使用する。当然バカでかく、反動も発射ガスの衝撃も強力。通常弾では困難な遠距離の狙撃や、堅固な物体の破壊に用いられる。さすがに戦車の正面装甲とはやりあうには力不足。 [2] 「対物」と呼ばれているが、国際法においては明示的に対人使用が禁止されているわけではない(「敵の装備品を破壊するために狙撃した」などの言い分が通じたり、そもそも同じ弾薬を使用した重機関銃や、これらより強力な機関砲、榴弾、爆弾などが対人使用されているのに、今更この銃だけ対人使用禁止というのもおかしな話である)。 なお、WW2以前の対戦車ライフルと使用弾薬や構成が極めて似ているため同一視されがちであるが、対戦車ライフルは戦車の装甲を貫通するために大威力の大口径弾を必要とし、対物狙撃銃は遠距離狙撃のために長距離でも良好な弾道特性を示す大口径弾を選んだのであって、元となる思想は全くの別物であると言える。 実際、「狙撃なら、戦車を撃つのでもない限り、そんなに大層な火力は必要ないだろ」というのは尤もな発想であり、各国の軍隊も同じ発想によってこのクラスの口径の銃砲を一時期は退役させていた。ところが、「重い弾なら遠くまで飛ぶし、風とかにも負けないんじゃね?」というのは現場レベルでは従来より言われていた事であり、フォークランド紛争やミュンヘンオリンピック事件の戦訓からその有用性が見直され、現在では専用の兵器として進化改良が続けられるに至っている。 |
消音狙撃銃 |
既存の狙撃銃に消音器/制音器を取り付けただけのものはともかく、消音狙撃銃を専用設計で組み上げるには、銃本体に制音器を組み込んだり、弾丸の発射速度を音速以下まで遅くして衝撃波を発生しないようにするなどの配慮が必要になる。 例によってこの辺に力を入れているのがロシアで、消音狙撃銃VSSは分解して持ち運び、組み立てて使用可能。他の国でも消音狙撃銃やライフル用の制音器など生産している。おそロシア。 (→サプレッサー) |
マグナム弾薬 |
ライフル(小銃)弾にもマグナム弾が存在する。通常の7.62mm弾より弾丸が重く、初速が速い。そのため威力が大きく射程も長い上、風の影響を受けにくい、弾道の落差が少ない(直線に近い飛翔軌道を描く)など狙撃の精度にもメリットを与える。 ただしメーカーが想定するよりも強い反動を銃に与えるので、銃の耐久性に悪影響を与えるというデメリットもある。通常弾を使用する銃のオプションとして用意されるほか、マグナム弾専用に設計された銃も存在する。 |
取り扱う人間も重要
本項目においては狙撃銃に着目して記述されているが
最高の狙撃銃だけあっても意味がない。それを扱う人間(射手)と高い技量も重要である。
もちろん銃弾自体がミサイルのように標的を認識し、能動的に追尾してくれる訳ではない。[3]
- ゲームのように、スコープの十字のど真ん中に必ず命中するわけではない。
- 射手自身の技量はもちろん、脈拍・呼吸・その他様々な要素が邪魔してくる。
- 狙撃銃自体が長く重く取り回しが悪く、一度に大人数を同時に相手にするのは至難の業。
- 「射撃の腕」だけではなれない。
- 初弾を外してしまえば、二発目のチャンスがあるとは限らない。
実際はかなり地味で、長期的に危険な敵地で行動するなど自由もなく
体力や忍耐力・度胸やメンタルほか様々な素質が要求される割に、華々しさとは無縁な場合が多い。
戦場ではなく民間人の射撃競技においても、脅威となる敵が居ないだけで一部は同じ。
競技が終われば家に帰れるし、失敗しても死なないし、落ち着いて狙えるだけマシである。
関連動画
関連商品
関連項目
脚注
- *あの国の特殊部隊を迎え撃つ、世界一の陸自スナイパーが手に握る「対人狙撃銃」
2016.10.5
- *センサーや主砲、履帯を破壊して無力化することは可能かもしれないが、そんなことするなら対戦車ミサイルでも撃ち込むか十分な対戦車能力のある味方を呼ぶべきである。
- *誘導してくれる銃弾も、開発中・試射済のものはあるが、現段階では実戦配備されておらず広く普及している訳ではない。https://dailynewsagency.com/2014/07/13/now-the-military-has-homing-ada/
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