独白するユニバーサル横メルカトルとは、平山夢明の短編小説。また、それを表題作とした短編集。
第59回日本推理作家協会賞短編部門受賞、このミステリーがすごい!2007年度版第1位。
概要
表題作
申し遅れまして相済みません。私は建設省国土地理院院長承認下、同院発行のユニバーサル横メルカトル図法による地形図延べ百九十七枚によって編纂されました一介の市街道路地図帖でございます。内訳は五千分の一の都心拡大図五枚を始めと致しまして、一万分の一が百六十八枚、十万分の一が十二枚、二十万分の一が十一枚、其れ以外に鉄道総合案内、首都高速道路案内図を網羅いたしております。また道路地図帖の分際で最大縮尺一千万分の一などという豪勢な東京都島嶼部位地図をも一枚、手挟む仕儀となりまして恐縮でございます。是は一センチあたり百キロを表し、図法も正距方位図法というユニバーサル横メルカトルよりも任意の一点と中心からの方位・距離が正確なものを採択してございます。御存知のように地球は球体でございますのでユニバーサル横メルカトルでは有効投影範囲が任意点の緯度八十五度上下内であり、其れ以外では歪みが生じます。航海図などでは有効投影範囲を全世界にしなければならない必要上、このような選択となったのでございます。
私は小は道路地形から大は島の位置までを網羅した単なる地図なのでございます。――『独白するユニバーサル横メルカトル』P225-226より
初出は、井上雅彦監修のホラーアンソロジー『異形コレクション』の第32巻『魔地図』(2005年4月、光文社文庫刊)。
第59回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。
タクシー運転手に長年仕える道路地図が語り手となって、ひょんなことからシリアルキラーに変貌した主人と、その連続殺人を受け継いだ息子の所行を、淡々と端正な文体で綴った作品。後半にはあっと驚く展開が待ち受けている。
京極夏彦の『南極(人)』には、「毒マッスル海胆ばーさん用米糠盗る」という作品が収録されている。よくもまあこのタイトルをもじろうと考えたものである。
短編集
上記の表題作のほか、著者が『異形コレクション』で発表した短編を中心に8編を収録した短編集。
2006年8月、光文社刊。現在は光文社文庫で読める。
2007年度の『このミステリーがすごい!』で第1位を獲得したが、中身はミステリーではなくスプラッターホラーである。どの作品にも、目を背けたくなるようなグロテスクで悪趣味で凄惨な描写や展開がこれでもかと登場する。シリアルキラーを描いた表題作が一番ソフトな内容という時点でお察しいただきたい。
『このミス』第1位の冠はミステリ小説にとっては格好の売り文句であり、書店も『このミス』の経済効果に期待を寄せている中で、こんな一般受けなど絶対にするはずもない作品が何を間違ったか第1位を獲ってしまったため、当時の書店関係者は頭を抱えたとか何とか。また『このミス』1位の冠に騙されてミステリーだと思って手にとってしまう被害者も多かった。
無論のこと、収録作はミステリー寄りの表題作から、暗黒童話やSFまでバラエティに富んでおり、グロテスクさは主題ではなくただの手段であると理解すれば、グロ描写が苦手な人でも楽しめる……かもしれない。積極的にオススメはしないが。グロ描写どんとこい、ぶっ飛んだ作品が読みたいという諸氏には迷わずオススメである。
収録作のうち、「卵男」が「Egg Man」のタイトルでCGアニメーション化されている。
収録作
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関連項目
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