理論値とは、理論の上で与えられた値のことである。
概要
「理論」という名詞が付く通り、基本的には計算などではじき出された値の意味を持つのだが、様々な分野で使われており意味が転じてきているので以下で解説する。
科学の分野における理論値
既存の公式やデータなどを用いて計算した値を理論値と呼ぶことが多い。反対にその場の実験で得られたデータは実験値と呼ぶことが多い。さらに例を示していく。
例1:オームの法則
電気回路の2点間について、Vを電位差、Iを電流、Rを電気抵抗とおくとき次の式が成り立つ。
V = RI
例えば、9Vの電池を用いて2Ωの抵抗に対して電流を流すことを考える。ここでオームの法則を用いると「9÷2=4.5」より4.5Aと計算できる。この値を理論値という。
ただし、実際に回路を組んで電流計で測定すると4.5Aでないことは珍しくない。このときの値を実験値と呼び、多くの場合はなぜ理論値と異なる値が出たのか考察する必要がある。
例2:単振り子と重力加速度
上記の式は運動方程式より導かれる式であるのだが、実際に振り子を作りこの式に代入して重力加速度を求めていくことを考える。
重力加速度については、過去の膨大な実験から精度の良い値がとられている。具体的な値は地球の場所などによっても異なるが、標準重力としては9.80665[m/s2]が与えられておりこの値を理論値として扱うのが普通である。このように過去の精度の良いデータを理論値として扱うこともある。
なお、この方法で重力加速度を求めたときの実験値は理論値とは大きくかけ離れている。理由としては運動方程式から2階微分方程式を経る際に振り子の振動角が微小であることや、空気抵抗や紐の重さなどが無い理想の状態であったりすることを前提とするからだ。
ゲームにおける理論値
ゲームの分野においては意味が変わっており、理論上「最も良い」値として扱うことが多い。例えば無限ループしないゲームならば、最初から最後まで理想通りの動きをしたときの得点が理論値になる。もちろん正規プレイの範疇で理論値を超えることは不可能である。
また、音楽ゲームの分野においては「満点」の意味で扱われる。beatmaniaシリーズのボーダークリアやGuitarFreaksの遅延ワイリングなどの例外もあるが、基本的には全てのノートを完璧なタイミングで処理した際のスコアが理論値となる。また、ゲームによっては理論値がキリのいい値に設定されている場合もあり、プレイヤーやゲームによってはその値を目指していくことになる。
さらに、格闘ゲームや対人シューティングにおいては、キャラクターや武器の強さを語る際に用いられ「プレイヤーが完璧なプレイングを出来た際の強さ」というような意味合いになる。しかし、これは現実的な実現性を無視した理想論でもあり、「実際の人間同士の対戦での現実的な強さ」を表す言葉として「実戦値」という言葉用いられ、対の概念となっている。ただし「どこまでが理論値でどこからが実戦値なのか」などの認識・感覚は明確ではなく、曖昧な概念と言える。
リアルタイムアタックにおける理論値
ゲームクリアまでの実時間を競うリアルタイムアタック(RTA/Single-segment speedrun)においては意味がさらに分かれていく。
一つはTAS(Tool-Assisted Speedrun)による、ツールでの検証を用いた理論上の最速タイム。基準がTASであるため、さらなる最適化や革新的なバグ技の発見などで理論値は変動することになる。
もう一つは、それぞれの区間の最良タイム[1]を足し合わせた時間。この意味の場合、プレイヤーそれぞれに対して理論値が異なることになる。また、LiveSplitなどのラップタイムが計測できるソフトではこの意味の理論値は「Sum of Best Segments」といった表現をする。ただし、ゲームによってはギミックの周期のズレがあったり、あるいは単純に記録するタイミングの微妙なズレもあるので、この意味の理論値が参考にならないこともある。
関連動画
関連項目
脚注
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