瑞雲(航空機)とは、日本海軍の航空機である。開発記号はE16A、米軍でのコードネームは「Paul」 総生産数は約220機
瑞雲という言葉の意味は吉兆の時に見られる紫色や五色の珍しい雲の意。
概要
愛知航空機が生産した日本海軍の水上偵察機(一応)である。制式名称こそ偵察機となっているものの、実態としては偵察機というよりは戦闘爆撃機として計画されていた。このことに付いては後に記す。
海軍の要求指示として最大速度463km/h以上、最大航続力2,500km以上、格闘性能良好で急降下爆撃が可能という海軍の無茶ぶりに基づいて十四試二座水上偵察機(後に十六試二座水上偵察機に改称)を開発、1942年3月に試作1号機を完成し性能試験の結果同年11月に内定、その翌年の1943年8月に瑞雲一一型として制式採用される。
速度面を中心とした高性能を実現するため、胴体や主翼はスリム化し、最高速度は448km/h
水上機としては世界初のフロート支柱部分に急降下爆撃用のダイブブレーキを備えていた。支柱のダイブブレーキが左右に開く形で展開される。これにより25番爆弾(250kg)を担いで急降下爆撃が可能となった。
また格闘性能においても主翼には空戦フラップを装備、これに至っては水上爆撃機どころか急降下爆撃にすら異例の装備となる。主翼内装型20mm機銃2門、13mm後方機銃1門を搭載。
当初の予定とされていた機動部隊の艦爆を補填するという目的は実用化に手間取った間に空母機動部隊の壊滅によって実現の機会を失った。
航空戦艦を母艦として運用する変則的水上機・艦上機部隊として整備された第六三四海軍航空隊に配備、伊勢・日向に搭載して訓練を積んでいた。しかし実戦投入前にフィリピン方面に転出したため、航空戦艦搭載機としての実戦参加できていない。だが、六三四空はその後フィリピン・沖縄方面で偵察・夜襲・襲撃任務などに従事し、大戦末期の劣勢の中で特攻によらない通常攻撃で一定の戦果を挙げた。
ほとんどの生産型は金星54型搭載の一一型だが、エンジンを金星62型に換装した一二型が試作されている。
構想
日本海軍が実用化した「艦隊用水上偵察機」は二つのタイプが合った。一つは操縦士・電信員・航法員の三名が乗組み、長距離進出して「敵艦隊の捜索・触接、夜戦誘導に当たる三座水偵」と、長距離進出を考えず「戦艦の弾着観測や爆撃、場合によっては空戦にも使う、二人乗りで機動性抜群の二座水偵」である。昭和五年~十年頃は水偵の細分化された役割にそれぞれ特化した機種を作るほうが有利ではないかとして三座水偵から夜間偵察専用機が、二座水偵から弾着観測専用機が作られたものの、十二年頃にはまた二座水偵、三座水偵それぞれ統合機種が要望されたようである。
日本海軍は日清戦争の黄海海戦、日露戦争の日本海海戦で「格上相手の完勝」を経験しており、米国/米艦隊が次なる脅威となっても決戦による勝利を追い求め続けていた。それを具体化した計画が「漸減邀撃作戦」である。
海軍軍縮条約で八八艦隊計画は断念されて艦船数で対米不利、それも海戦の帰趨を決める戦艦数で劣るのをどうリカバリーすべきか。どうやって「せめて戦艦数で対等、なおかつ味方が制空権を握り、弾着観測機を一方的に飛ばせる状況下の戦艦決戦を実現させるか」を模索することになる。
日本海軍が出した答えは、「航空戦力で制空権を握って敵艦隊の目を塞ぎ」「第二艦隊(重巡/水雷戦隊)の夜襲雷撃で敵戦艦を減らし」「制空権下で戦艦等(第一艦隊)決戦を行う、残存水雷戦力もこれに加勢する」というものである。折しも、アメリカで急降下爆撃のデモンストレーションがさかんに行われていた。
- 空母の数と搭載機数という形で能力差があった為、戦闘機同士の空戦で悠長に制空権を争うのは最初からシナリオになかった。そんなの負け確定だからである。敵空母に先制で急降下爆撃をしかけて甲板を壊し、一方的に殺らなければ勝機がない。その為には急降下爆撃機が鍵で「敵の迎撃網を無力化できるほどの飽和数量」が欲しい。っていうか現状は艦爆不足気味ですらある。
- 先制を実現するためにはいかに早く敵艦隊を見つけるかも大事だが、水上機の回収には静水面を作る手間がかかるし、時化れば回収不能で再出撃できなくなる。回収中は潜水艦にも空襲にも無力になる。敵艦隊を探す目とするには水偵は「まったく向いていない」。艦隊の目は艦攻が行うべきであって、水上機は打撃力に振り向けるべきである。
こうして三座水偵で偵察とかオワコン、二座水偵に艦爆の補填させるべという判断を下し、九九式艦爆と同等の性能を持つ水上急降下爆撃機、十二試二座水偵を愛知と中島に作らせたがどっちも安定性不良で失敗に終わった。その後継機プランに零観後継案も相乗りして汎用二座水偵、瑞雲が生まれることになる。
艦これにおける瑞雲
艦これにおいて図鑑表記は水上爆撃機として分類されている。実際にゲーム内においても爆撃もするし空戦にも参加するし、偵察機としてはまた違った運用方法になるものの確かに水上偵察機と爆撃機の統合した急降下爆撃可能な機体であり、水上偵察機の発展型として取り扱われている。
瑞雲も六三四空所属の瑞雲や瑞雲一二型、一二型六三四空所属といった六三四空に縁のある装備が見られる。
関連作品
関連商品
関連項目
- 1
- 0pt