生活福祉資金とは、新型コロナウイルス感染症が社会に与えた影響のせいで急にお金に困った人を助けるための制度である(元来の制度の対象・目的は異なるのだが、ひとまずこの記事では新型コロナウイルス感染症関連を中心に扱う)。
とりあえず一息ついて生活を立て直すまでのお金を無利子・無担保で借りることができ、場合によっては返済を免除してもらえ、生活を立て直すための相談支援にも乗ってもらえる。
借りることができる資金は大きく分けて2種類あり、「緊急小口資金」として10万円(場合によっては20万円)を、または「総合支援資金」として月15~20万円を3か月、のどちらかになる。
カードローンなどを利用して金融機関からお金を借りようかと考えていた人は、利子がかからないこの制度を利用することをお勧めする。
なお、以後この記事内に青字で記したことは参考程度の情報であるため、新型コロナウイルス感染症のせいでお金に困っているあなたは読み飛ばしてよい。いちいち読んで頭を混乱させる必要はない。
もともとは新型コロナウイルス感染症の蔓延以前から存在した制度であり、本来の姿は「低所得世帯・障害者世帯・高齢者世帯に対して、その経済的な状況を支えるために無利子または低利で資金を貸し付ける制度」である。
しかしこの記事では現在、まず新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延によって急遽「特例」として制定された制度について記載し、その後に本来の制度について記載している。新型コロナウイルス感染症の経済的影響が終息した後には、本来の制度を中心とした記事に修正されたい。
2つの資金のどちらを利用するべきなのか
あなたが、以下の「1.」と「2.」のどちらに該当するかによって、利用するべき資金は異なる。
- 「新型コロナウイルス感染症の影響によって緊急にお金に困ったが、一時的なものであってこの場をしのげば何とかなる」場合(「本来入ってくるはずとあてにしていた一時収入が急に入らないことになった」「自分や家族が感染してしまって一時休業を余儀なくされたが、幸い回復した」とか) → 「緊急小口資金」を利用
- 「新型コロナウイルス感染症の影響によって失業するなどで、日常生活の維持も危ぶまれ、根本的に生活を再建させなくてはいけない」場合 → 「総合支援資金」を利用
「緊急小口資金」制度では、10万円以内の貸付を受けることができる。特例として20万円以内の貸付を受けることができる場合もある(「世帯内に新型コロナウイルス感染者がいる」「世帯内に要介護者がいる」「世帯員が4人以上」「臨時休業した小学校等に通う子がいて、世帯内の労働者がその世話を行わなくてはならなくなった」など)。
「総合支援資金」制度では、2人以上の世帯では月20万円以内、単身の世帯は月15万円以内の貸付を、原則3か月以内の期間受けることができる。
返済できない場合はどうなるのか
本来は返済(正確には「償還」という)するべき「貸付」制度、つまり借金ではある。
しかし償還の期日になってもかなり生活に困窮していた場合(「住民税非課税世帯相当」とのこと)、償還が免除される。
つまり、もし返済の時期になってもお金に非常に困り続けていた場合は、返さなくてもよくなる。
返済時期は
「緊急小口資金」「総合支援資金」のどちらも、1年間の「据置期間」が設けられている。この1年間は返そうとしなくてよい。
そして1年間を過ぎると返済を始める「償還期間」となる。「緊急小口資金」は2年間、「総合支援資金」は10年間と設定されており、この期間をかけて返済していくこととなる。
期間を過ぎると延滞利子が付いていくようだが、上記のようにそもそも返済が無理なくらい困窮し続けている場合は返済自体が免除されるようだ。
相談支援とは
この制度を利用する場合、自立相談支援機関による「生活の立て直しに向けた相談支援」を利用できる。
というか、基本的には相談支援を利用することが貸付の必要条件になっている。
「生活を立て直す道筋を立てることで、返済できないままになってしまう人を減らしたい」という意図があるものと思われる。
どこで、どうやって申請すればよいのか
住んでいる(住民票がある)市区町村の「社会福祉協議会」で申請する。「社会福祉会館」という建物に入っていることが多いようだ。
グーグルやヤフー
などのインターネット検索エンジンで、「住んでいる市区町村の名前」と「社会福祉協議会」で検索すれば住所と電話番号がわかるはずだ。
ただし、かなり混んでいる恐れがあるので、まずは電話相談をして比較的空いている時間を聞き(ついでに持参するべきものを聞き)、「マスクをする」「他の利用者や担当職員とも、必要以上に近づかない」など、新型コロナウイルスへの感染対策に注意して訪問しよう。
申請時に持参するべきもの
- 住民票(※「世帯全員記載のもの」「発行後3ヵ月以内」などの条件を付けるものも)
- 借入申込者の身分証明書(※健康保険証、運転免許証など)
- 新型コロナウイルス感染症の影響で収入が下がったことを証明できる書類(※新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前と後それぞれの、収入が分かる書類。例えば預金通帳、給与明細書など。所得証明書、所得税の確定申告書、源泉徴収票などでもよいようだ)
- 介護保険被保険者証(※世帯に要介護者がいる場合)
- 印鑑(※実印と印鑑証明書を求める社会福祉協議会も)
- 振込先口座がわかるもの(※預金通帳など)
ただし、それぞれの社会福祉協議会によって微妙に異なり、ある社会福祉協議会で要求されたものが別の社会福祉協議会では要求されないこともあるようだ。社会福祉協議会を訪問する前の電話相談のときに、何を持参すればよいのかを事前に確認しよう。
市区町村の「社会福祉協議会」を統括する、都道府県や大都市の社会福祉協議会のホームページで必要書類が掲載されていることもある。以下のリンク集から自分が住んでいる都道府県/大都市の社会福祉協議会のホームページを事前確認しておくのもよいだろう。
住民票や印鑑登録証明書は、グーグルやヤフー
などのインターネット検索エンジンで、「住んでいる市区町村の名前」と「住民票」や「印鑑登録証明書」で検索すれば発行してもらう方法や場所がわかるはずだ。
なお、「生計の中心者(世帯内で所得が高い人。いわゆる家計の大黒柱)」が申請することが原則となっていて、窓口に来て申請する人が生計の中心者ではない場合は生計の中心者の「委任状」(その形式も指定有り)の持参をお願いする社会福祉協議会もあるようだ。
相談コールセンター
「検索しても住んでいる地域の社会福祉協議会の場所がわからなかった」「そもそも検索の仕方がよくわからない」という方は、この制度についての相談コールセンターが2020年4月11日から厚生労働省によって開設されているので、そちらに電話して相談してもよいだろう。
<個人向け緊急小口資金・総合支援資金相談コールセンター>
電話番号:0120ー46-1999
受付時間:9:00~21:00(土日・祝日含む)
ツイートを読み込み中です
https://twitter.com/MHLWitter/status/1249934502421344256
その他の支援策
日本政府が展開している、新型コロナウイルス感染症の影響で困窮した人への支援策は、この生活福祉資金制度のみではない。
例えば、2020年4月12日現在はまだスタート時期が未定であるが、1世帯当たり30万円が予定されている「生活支援臨時給付金(仮称)」制度を、この生活福祉資金制度に重ねて利用できる可能性も大きい。
関連資料
この、新型コロナウイルス感染症に関する特例制度に関する資料のリンクを紹介する。
ただし、制度を利用するにあたって必ずしも目を通しておく必要はない。「念のために公式の資料も見ておきたい」という場合のみ参照されたい。
- パンフレット(緊急小口資金等の特例貸付【一般向け】)
(厚生労働省、PDFファイル)
- 新型コロナウイルス感染症を踏まえた生活福祉資金制度による緊急小口貸付等の特例貸付について
(全国社会福祉協議会、PDFファイル)
- 新型コロナウイルス感染症を踏まえた生活福祉資金制度による緊急小口貸付等の特例貸付について(Q&A)
(全国社会福祉協議会、PDFファイル)
- 社会福祉・雇用・労働向けの情報一覧(新型コロナウイルス感染症)|厚生労働省
(「生活福祉資金」でページ内検索をすると、制度の運用に関する資料PDFファイルが多数確認できる)
本来の制度について
冒頭でも述べたように、もともとの「生活福祉資金」とは「低所得世帯・障害者世帯・高齢者世帯に対して、その経済的な状況を支えるために無利子または低利で資金を貸し付ける制度」である。
根拠法は「社会福祉法」であり、その第二条の第七項に定める「生計困難者に対して無利子又は低利で資金を融通する事業」が相当するようだ。
大きく「総合支援資金」「福祉資金」「教育支援資金」「不動産担保型生活資金」の4種類に分類されるが、さらに詳しく分類すると以下のようになる。
これらの制度の中で、「総合支援資金」(のうち「生活支援費」)と、(「福祉資金」のうち)「緊急小口資金」を、新型コロナウイルス感染症の蔓延と言う緊急事態に際して条件を緩和したのが上記の特例制度と言うことになる。本来の貸し付け条件である「低所得世帯・障害者世帯・高齢者世帯」に限定されなくなっているほか、本来連帯保証人が居なければ有利子となるはずの「総合支援資金」が無利子となっているし、据置期間や償還期間も延長されている。
その他、本来の「生活福祉資金」制度については以下のリンク先を参照されたい。
関連項目
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