田中啓文(たなか ひろふみ)とは、日本の小説家兼ミュージシャンである。
ミステリとライトノベルでデビューし伝奇・ホラーを経由してSFで賞を獲りミステリでも賞を獲り、現在は時代小説とホラーと伝奇とミステリとSFと児童書を舞台に主に文庫書き下ろしで活躍中。
概要
1962年大阪生まれ。1993年に短編「落下する緑」が鮎川哲也編のアンソロジー『本格推理』に入選。本格推理作家として売り出したはずが、その2日後に『凶の剣士』で第2回ファンタジーロマン大賞に佳作入賞して、集英社スーパーファンタジー文庫からライトノベル作家としてデビューする事となる。
1998年には『水霊 ミズチ』でホラー作家としても名を売り、SF界からも注目され日本SF大賞候補に。2002年にはSF短編集『銀河帝国の弘法も筆の誤り』収録の表題作で星雲賞日本短編部門を受賞。
21世紀に入ってからは一番最初のジャンルであるミステリも本格的に書き始め、2009年、短編「渋い夢」で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。
小林泰三、牧野修、田中哲弥と合わせて「まんがカルテット」と呼ばれる。これに我孫子武丸が加わると
「まんがクインテット」となる。
特に小林泰三とは親友で、2020年に小林が急逝した際にはその訃報を公表する役を担うことになった。2024年に出た小林の傑作選『五人目の告白』の解説でも、未だ親友の死を引きずっている心情を吐露している。
全体的にネタ、ダジャレが非常に多い。そしてだいたいは地口(ダジャレ)オチ。これは田中が上方落語の愛好者であるため。短編集の『蹴りたい田中』に至っては帯広告にまでふんだんにギャグがちりばめられている。ホラー系の作品では強烈なグロ描写も展開されるが、その先に待っているのがとんでもないダジャレオチだったりするので色んな意味で油断ができない。
その作風からどちらかといえばマニアックな評価を集めるポジションの作家だったが、落語ミステリーの『笑酔亭梅寿謎解噺』シリーズがヒットしたことで読者層を広げた。近年は文庫書き下ろしの時代小説を中心に、ホラー、伝奇、SF、ミステリも書き続けている。
ミュージシャンとしてはTHE UNITED JAZZ ORCHESTRAのバンドマスターも勤める(担当はテナーサックス)。『永見緋太郎の事件簿』や『ウィンディ・ガール』のようにジャズをテーマにした作品もいくつかある。
作品リスト(小説のみ・刊行順)
- 背徳のレクイエム 凶の剣士グラート (1993年、集英社スーパーファンタジー文庫)
- 青い触手の神 凶の剣士グラート2 (1993年、集英社スーパーファンタジー文庫)
- SHADOWS in the SHADOW 陰に棲む影たち 十兵衛錆刃剣 (1995年、集英社スーパーファンタジー文庫)
- DANCING in the SHADOW 喉を鳴らす神々 十兵衛錆刃剣 (1995年、集英社スーパーファンタジー文庫)
- FIRE in the SHADOW 爛熟の媚獣 十兵衛錆刃剣 (1995年、集英社スーパーファンタジー文庫)
- 神の子はみな踊る 神の子ジェノス (1997年、集英社スーパーファンタジー文庫)
- 神の子は来りて歌う 神の子ジェノス (1997年、集英社スーパーファンタジー文庫)
- 緊縛の救世主 蒼き鎖のジェラ (1997年、集英社スーパーファンタジー文庫)
- 水霊 ミズチ (1998年、角川ホラー文庫)
- 蒼白の城XXX (1998年、集英社スーパーファンタジー文庫)
- 慟哭の城XXX (1999年、集英社スーパーファンタジー文庫)
- 異形家の食卓 (2000年、集英社→2003年、集英社文庫)
- 銀河帝国の弘法も筆の誤り (2001年、ハヤカワ文庫JA)
- 禍記 マガツフミ (2001年、徳間書店→2008年、角川ホラー文庫)
- ネコノメノヨウニ… (2001年、集英社スーパーダッシュ文庫)
- 鬼の探偵小説 (2001年、講談社ノベルス)
→ オニマル 異界犯罪捜査班 鬼と呼ばれた男 (2013年、角川ホラー文庫[改題・再構成]) - 星の国のアリス (2001年、祥伝社文庫)
- ベルゼブブ (2001年、トクマノベルズ)
→ 蠅の王 (2008年、角川ホラー文庫[改題]) - UMAハンター馬子1 湖の秘密 (2002年、学研M文庫)
- 蓬莱洞の研究 私立伝奇学園高等学校民俗学研究会 (2002年、講談社ノベルス→2008年、講談社文庫)
- UMAハンター馬子 闇に光る目 (2003年、ウルフ・ノベルス)
- 忘却の船に流れは光 (2003年、ハヤカワSFシリーズJコレクション→2007年、ハヤカワ文庫JA)
- 邪馬台洞の研究 私立伝奇学園高等学校民俗学研究会 (2003年、講談社ノベルス→2009年、講談社文庫)
- 陰陽師九郎判官 (2003年、コバルト文庫)
- 蹴りたい田中 (2004年、ハヤカワ文庫JA)
- 笑酔亭梅寿謎解噺 (2004年、集英社)
→ ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺 (2006年、集英社文庫[改題]) - UMAハンター馬子 完全版1 (2005年、ハヤカワ文庫JA)
- UMAハンター馬子 完全版2 (2005年、ハヤカワ文庫JA)
- 天岩屋戸の研究 私立伝奇学園高等学校民俗学研究会 (2005年、講談社ノベルス→2009年、講談社文庫)
- 落下する緑 永見緋太郎の事件簿 (2005年、東京創元社→2008年、創元推理文庫)
- ハナシにならん! 笑酔亭梅寿謎解噺2 (2006年、集英社→2008年、集英社文庫)
- ハナシがはずむ! 笑酔亭梅寿謎解噺3 (2008年、集英社→2010年、集英社文庫)
- 辛い飴 永見緋太郎の事件簿 (2008年、東京創元社→2010年、創元推理文庫)
- チュウは忠臣蔵のチュウ (2008年、文藝春秋→2011年、文春文庫)
- あんだら先生とジャンジャラ探偵団 (2009年、理論社)
→ あんだら先生と浪花少女探偵団 (2015年、ポプラ文庫[改題]) - 元禄百妖箱 (2009年、講談社)
- ハナシがうごく! 笑酔亭梅寿謎解噺4 (2010年、集英社→2011年、集英社文庫)
- ミミズからの伝言 (2010年、角川ホラー文庫)
- 郭公の盤 (2010年、早川書房) ※牧野修との共著
- 獅子真鍮の虫 永見緋太郎の事件簿 (2011年、東京創元社)
→ 真鍮のむし 永見緋太郎の事件簿 (2014年、創元推理文庫[改題]) - 罪火大戦ジャン・ゴーレ 1 (2011年、ハヤカワSFシリーズJコレクション)
- ハナシはつきぬ! 笑酔亭梅寿謎解噺5 (2011年、集英社→2013年、集英社文庫)
- こなもん屋馬子 (2011年、実業之日本社)
→ こなもん屋うま子 (2013年、実業之日本社文庫[改題]) - 茶坊主漫遊記 (2012年、集英社文庫)
- 猿猴 (2012年、講談社文庫)
- ウィンディ・ガール サキソフォンに棲む狐 (2012年、光文社→2014年、光文社文庫)
- 鍋奉行犯科帳 (2012年、集英社文庫)
- シャーロック・ホームズたちの冒険 (2013年、東京創元社→2016年、創元推理文庫)
- 道頓堀の大ダコ 鍋奉行犯科帳 (2013年、集英社文庫)
- オニマル 異界犯罪捜査班 結界の密室 (2014年、角川ホラー文庫)
- 浪花の太公望 鍋奉行犯科帳 (2014年、集英社文庫)
- オニマル 異界犯罪捜査班 鬼刑事vs殺人鬼 (2014年、角川ホラー文庫)
- ストーミー・ガール サキソフォンに棲む狐2 (2014年、光文社→2017年、光文社文庫)
- こなもん屋うま子 大阪グルメ総選挙 (2014年、実業之日本社文庫)
- 京へ上った鍋奉行 鍋奉行犯科帳 (2014年、集英社文庫)
- お奉行様の土俵入り 鍋奉行犯科帳 (2015年、集英社文庫)
- イルカは笑う (2015年、河出文庫)
- 大魔神伝奇 (2015年、創土社)
- アケルダマ (2015年、新潮文庫)
- お奉行様のフカ退治 鍋奉行犯科帳 (2015年、集英社文庫)
- 猫と忍者と太閤さん 鍋奉行犯科帳 (2016年、集英社文庫)
- 地獄八景 (2016年、河出文庫)
- 落語少年サダキチ (2016年、福音館書店)
- 漫才刑事 (2016年、実業之日本社文庫)
- 風雲大坂城 鍋奉行犯科帳 (2016年、集英社文庫)
- 超・少年探偵団NEO (2017年、ポプラ社) ※ノベライズ
- 浮世奉行と三悪人 (2017年、集英社文庫)
- 宇宙探偵ノーグレイ (2017年、河出文庫)
- 落語少年サダキチ に (2017年、福音館書店)
- 俳諧でぼろ儲け 浮世奉行と三悪人 (2017年、集英社文庫)
- 警視庁陰陽寮オニマル 魔都の貴公子 (2018年、角川ホラー文庫)
- シャーロック・ホームズたちの新冒険 (2018年、東京創元社→2021年、創元推理文庫)
- 鴻池の猫合わせ 浮世奉行と三悪人 (2018年、集英社文庫)
- 力士探偵シャーロック山 (2018年、実業之日本社文庫)
- えびかに合戦 浮世奉行と三悪人 (2018年、集英社文庫)
- 警視庁陰陽寮オニマル 鬼刑事VS吸血鬼 (2018年、角川ホラー文庫)
- 落語少年サダキチ さん (2019年、福音館書店)
- ジョン万次郎の失くしもの 浮世奉行と三悪人 (2019年、集英社文庫)
- 貧乏神あんど福の神 (2019年、徳間文庫)
- 大塩平八郎の逆襲 浮世奉行と三悪人 (2019年、集英社文庫)
- 文豪宮本武蔵 (2020年、実業之日本社文庫)
- 臆病同心もののけ退治 (2020年、ポプラ文庫)
- 竹林の七探偵 (2020年、光文社)
- 元禄八犬伝(一) さもしい浪人が行く (2020年、集英社文庫)
- 信長島の惨劇 (2020年、ハヤカワ文庫JA)
- 件 もの言う牛 (2020年、講談社文庫)
- 元禄八犬伝(二) 天下の豪商と天下のワル (2021年、集英社文庫)
- 元禄八犬伝(三) 歯噛みする門左衛門 (2021年、集英社文庫)
- 元禄八犬伝(四) 天から落ちてきた相撲取り (2021年、集英社文庫)
- 崖っぷち長屋の守り神 (2022年、角川文庫)
- 落語少年サダキチ よん (2022年、福音館書店)
- 元禄八犬伝(五) 討ち入り奇想天外 (2022年、集英社文庫)
- 怪談・すっぽん駕籠 貧乏神あんど福の神 (2022年、徳間文庫)
- 十手笛おみく捕物帳 (2023年、集英社文庫)
- 誰が千姫を殺したか 蛇身探偵豊臣秀頼 (2023年、講談社文庫)
- 秀吉が来た! 貧乏神あんど福の神 (2023年、徳間文庫)
- 白鷺烏近なんぎ解決帖 (2023年、光文社)
- 落語少年サダキチ ご (2023年、福音館書店)
- 医は仁術というものの 十手笛おみく捕物帳(二) (2023年、集英社文庫)
- なぞなぞが謎を呼ぶ 貧乏神あんど福の神 (2023年、徳間文庫)
- 若旦那は名探偵 七不思議なのに八つある (2024年、実業之日本社文庫)
- 警視庁地下割烹 (2024年、角川文庫)
- 篠笛五人娘 十手笛おみく捕物帳(三) (2024年、集英社文庫)
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 相沢沙呼
- 青崎有吾
- 青山文平
- 赤川次郎
- アガサ・クリスティ
- 芥川龍之介
- 浅暮三文
- 芦沢央
- 芦辺拓
- 飛鳥部勝則
- 綾辻行人
- 鮎川哲也
- 有川浩
- 有栖川有栖
- 泡坂妻夫
- アーサー・C・クラーク
- 池井戸潤
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- 石川博品
- 石田衣良
- 石持浅海
- 伊藤計劃
- 稲見一良
- 乾くるみ
- 井上真偽
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- 今村昌弘
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