あらすじ
九州A県B郡豆の木村にある私立豆の木高校は、生徒の大半が農家の子供という田舎の無名な貧乏私立高校。そこへ新卒で生物教師として採用された広岡真理子22歳は、単に「若いから」というだけで野球部の監督をすることになってしまう。
野球部の部員は9人ギリギリで、部の創立以来一度も公式戦で勝ったことがなく、県大会1回戦突破が悲願という弱小チーム。熱血スポ根の世界にはとんと縁がなく、野球の専門知識もなく、はじめはやる気のなかった広岡だが、ノックを部員に褒められたことで調子に乗って、いつしか指導に熱が入りはじめる。
一方その頃、A県ではお偉いさんの会議により、地方大会でのシード制が廃止となる。かくして迎えた夏の県大会、シード制の廃止で強豪校が次々とつぶし合う中、豆の木高校は広岡のノックで鍛えられた守備力と謎の幸運を武器に、あれよあれよと県大会を勝ち上がっていき、ついにはなんと甲子園へ……。
概要
少女漫画としては非常に珍しい高校野球漫画。1983年にデビューした川原泉の初の連載作品で、「花とゆめ」1984年16号から18号まで連載された(全3回)。
川原泉作品なので、高校野球を題材にしても熱血とは無縁の(ついでに恋愛とも無縁の)終始ノーテンキなゆるい作風だが、甲子園という夢の舞台が終わりに向かっていく終盤の寂寥感が読者の涙腺を緩ませる、川原泉の代表作のひとつ。雑誌「ダ・ヴィンチ」が行った川原作品の人気投票では、『笑う大天使』『銀のロマンティック…わはは』『メイプル戦記』に次ぐ4位にランクインしている。
単行本は全1巻。本作だけでは90ページほどしかないため、読み切り短編「3月革命」「月夜のドレス」「メロウ・イエロー・バナナムーン」の3作品を併録。白泉社文庫版は《川原泉傑作集》の副題がつき、ゲートボール・ミステリー漫画「ゲートボール殺人事件」と、川原泉の最高傑作に挙げる声も多いフィギュアスケート漫画の名作「銀のロマンティック…わはは」を併録している。
後に「花とゆめ」で連載されたプロ野球漫画『メイプル戦記』は本作の7年後が舞台の続編で、広岡と高柳が再登場して主役を務める。詳細は『メイプル戦記』の記事を参照。
2018年の夏の甲子園(第100回全国高等学校野球選手権記念大会)で秋田県の金足農業高校が決勝戦まで勝ち上がった際には、「田舎の農業高校(豆の木は農業高校ではないが生徒の大半が農家の子)」「スタメン9人が固定メンバー」「滞在費不足で寄付を募る」「決勝の相手は優勝候補筆頭」など豆の木高校との共通点が多かったため、本作を連想する読者が結構いた。ただし、金足農は過去にも甲子園ベスト4の実績がある強豪校で、エースの吉田輝星も大会前からプロ注目のドラフト候補であり、豆の木のような完全な無名の弱小校ではないため、安易に同一視することには批判もあった。ちなみに、同大会で金足農の一回戦での対戦相手であった鹿児島実業高校は作者の母校である。
主な登場人物
豆の木高校
- 広岡真理子(ひろおか まりこ)
- 大卒ですぐ豆の木高校に採用された新任の生物教師。22歳。
「若いから」というだけの理由で女性でありながら野球部の監督をすることになる。最初はやる気も野球知識もなく、練習を眺めているだけだったが、シートノックでの打撃を部員におだてられたことで調子に乗り、うさ晴らしを兼ねて熱心に指導をするようになる。甲子園では、苦手な熱血スポ根タイプである北斗高校の高柳監督と交流を持つことになり……。
- 春日晴彦(かすが はるひこ)
- 3年生。投手。背番号1。試合では9番打者。非常にぼーっとした性格で、キャッチャーの朝比奈と二人揃うと広岡曰く「春の日だまりだぁ」。球は遅いが、広岡の制球重視の指導もあって非常にコントロールが良く、コーナーを丹念につく投球とバックの堅い守備で相手打線を抑え続ける。
- 朝比奈周(あさひな しゅう)
- 3年生。捕手。背番号2。試合では8番打者。女の子のようにおっとりした細身のキャプテン。いつもニコニコと春日をリードする。続編の『メイプル戦記』でもちらっと登場、高校教師となって豆の木高校に赴任し、広岡から野球部監督を引き継ぐことになる。
- 相本4兄弟(朱里・樹里・杏里・悠里)
- 全く同じ顔をした4つ子。2年生で内野手(朱里が一塁手、樹里が二塁手、杏里が三塁手、悠里が遊撃手)。試合では悠里が4番、杏里が5番、樹里が6番、朱里が7番。鉄壁の内野守備を誇り、打撃でも結構活躍するシーンが多い。
続編の『メイプル戦記』では、妹の相本4姉妹(同じく4つ子の内野手)が登場する。
北斗高校
- 高柳邦彦(たかやなぎ くにひこ)
- 西東京代表の優勝候補・北斗高校の監督。推定28歳。自身も10年ほど前に北斗高校の選手として甲子園に出場、大会の選手宣誓を務めている。対戦校の詳細なデータを集めた「高柳メモ」は高校野球関係者の間では有名。宿舎が豆の木高校と同じ宿だったため広岡と交流を持つことになるが……。
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関連項目
甲子園まで何マイル?
マイクロ・バスで行ったんだー
きゃっきゃ きゃっきゃと みんなでさー
――ああ
楽しかったね……
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