略字とは、主に漢字に於いて複雑な字の点画を省略・部品の置換えを行い、簡単にした字。あるいは、複雑な漢字に代用して使える簡単な漢字。略字体とも。
中国の簡体字、日本の常用漢字も略字を採用したものが多々ある。
ここでは、日本の漢字の略字(拡張新字体・常用漢字以外)について解説する。
概要
一般に手書きで用いられ、古くから存在するものから最近のものまで様々である。
現代では、 無論、正式な字として認められていないのもあり余り使われない。
また、「年齢」を「年令」、「○○歳」を「○○才」、「午後」を「午后」など、他の字を代用することを一般に略字というが、簡単な字で代用したのであって、『略字』ではない。(「才」を「歳」の「戈」の部分を取った略字とする説あり。)
しかしその線引きはかなり難しいため、一部ここで取り上げた。
略字の例
略字 | 元の字 | 解説 |
---|---|---|
㐧 | 第 | 草書体による。序数詞として使うのが一般的だが、「次第」なども稀に見る。 |
門 | 行書による。崩し方から考えると、「縦→短い縦→曲げてはね」と書くのが正しいが一般的に「冂→短い縦」と書かれる | |
前 | 草書による。 | |
可 | 草書による。含む字(何・河・阿・崎)などでも書かれる。点はない場合もある。 | |
一 | (灬) | 「馬へん」や「馬」「鳥」などに多くみられる。「魚へん」や「魚」「点」は「大」とする場合もある。 |
点(點) | 「点」の旧字体「點」の略字。 当用漢字(常用漢字の前身)制定以前から「点」と「」が併存して使われており、当用漢字には「点」が採用された。下部は「火」の変形かと思われる。 |
|
様 | 崩し字からか。 | |
亊 | 事 | 行書からか。看板などで良く目にする。 |
卆 | 卒 | 草書による。「砕・酔」などはこの形で常用漢字に採用されている。九十歳のお祝い卒寿はこの略字から。 |
貭 | 質 | 崩し字からか。 |
卅 | 州 | 筆順を変え、点を続けて書いたもの。「卅(ソウ・さんじゅう)」と同形。 |
御 | 草書による。 | |
(雨冠) | 崩し字によるものか。 | |
リ | (臣) | 草書による。「臨・覧・監・賢・緊・鑑」などで「リ」または「││」と略される。例:(監) |
風 | 草書による。また中を省略したものか(「几・凡」との区別を図っての2点?) | |
㐰 |
個 | 囗の中を省略したもの。 中に縦線を入れる場合もある。 |
囗 |
国 | 囗の中を省略したもの。 中に点を入れる場合もある。 |
厂 | 歴暦雁 | 中を省略したもの。「廠」の簡体字と同形。 |
仂 | 働 | 画数の多い部分を省いたもの。 |
仐 伞 |
傘 | 中を省いたもの。八十歳のお祝い、傘寿はこの略字から。 また、中を縦線にしたもの。(簡体字と同形) |
圣 | 経 | 糸偏を省いたもの。旧字体から考えると、かなり略されている。別の字と暗合している。また「聖」の簡体字と暗合。 |
圣 | 軽 | 車偏を省いたもの。経費節減の為、主に熊本県など九州で軽自動車専用駐車場の表記に用いられる。 |
旺 |
曜 | 旁の部分を音の似たものと置換えたもの。 「旺」と区別して「王」を「玉」とする場合が多い。 |
耺 |
職 | 画の多い部分を簡単なものに置き換えたものか。一字目は別の字と暗合している。 |
簿 | 画の多い部分を簡単なものに置き換えたものか。 | |
沪 | 濾 | 「蘆(芦)・鑪(鈩)・艫(舮)・鱸(魲)・櫨(枦)」と同様の略。「滬」の簡体字と暗合している。簡易慣用字体に定められている。 良く見ればわかるが、本項の「濾」は旁が「慮(下が心)」であり、他の字の「盧(下が皿)」とは異なる。そのため、「瀘」の略字ともとれるが、普通日本では「濾」を指す。 |
栈 桟 |
機 | カタカナに置き換えたものなど様々ある。「桟」とその簡体字に暗合している。 |
撃 | 「撃」の旧字体が「擊(車の部分が略字の形)」で、その部分だけを用いたもの。 | |
議 | カタカナに置き換えたもの。 | |
層 | カタカナに置き換えたもの。 | |
図 | カタカナに置き換えたもの。「図書館」など「と」と読む場合に限られる。 | |
魔摩磨 | カタカナに置き換えたもの。 | |
衛 | カタカナに置き換えたもの。「衛」の簡体字は「卫」で、これは日本で「衛」を「ヱ」と略して書いていたのが中国へ伝わったとする説がある。 | |
斗 |
闘 | 「闘(トウ)」と似た読みの「斗」で代用したもの。(「斗」に「トウ」という読みもある。) また、画数の多い部分を「斗」に置き換えたもの。 「トウ」と読む場合に限らず、「斗(たたか)う」などとも書く。 |
品 | 口をつなげたもの。「靈・臨」など横に並ぶ「口」はつなげて書く場合が多い。 | |
器 | 口をつなげたもの。 また、「單→単」など新字体にならったもの。 |
|
巾 | 幅冪 | 部分をとったものか。代用字とも取れるが、「巾」という字の音や意味を完全に無視しているので代用ではなく略であると思われる。(例)幅(はば)→巾、幅員→巾員、増幅→増巾、冪乗(べきじょう)→巾乗 というか代用字と略字の線引きが難しい。 |
ヿ | 事 | 「コト」と読む。というより、「コト」と読むときにしか用いられず、「ジ」と読むときは用いられない。そのため「事」の略字であるという解釈の他に、カタカナの「コト」二文字の合字であるという解釈がある(Unicodeの文字コード上ではこちらの解釈がなされている)。 |
その他、(品を除く)品字様(森・晶・轟etc…)の下部の二つは「・・軣」のように点で省略される。
他にも多々あるが、挙げ切ることは不可能なので、簡体字を参考にしてみるといいかもしれない。
あと、そういう略字は左翼の人が良く使うっぽい。
(以上筆者調べ)
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