特に明確な定義があるわけではないが、ケーブルカーは急勾配を登るものが多いため、登山鉄道とされることが多い。これについては単語記事「ケーブルカー」参照。
ここでは、普通鉄道における登山鉄道について述べる。
概要
日本で現在登山鉄道を名乗っている会社は「箱根登山鉄道」のみである。しかし、それ以外にも山岳地帯を上り下りする鉄道が多い。「全国登山鉄道‰会」というものもあり、多くの登山鉄道が加盟している。
ただし、地下鉄のトンネル内での勾配や、スカイレールサービス瀬野線のような特殊な鉄道は登山鉄道とされないことが多い。
なお、世界最大の勾配を持つ鉄道はスイスのピラトゥス鉄道で、480‰。あまりに急すぎて列車の形がケーブルカーのような平行四辺形になっているが、れっきとした自走式の鉄道である。
平時には主に登山客輸送の為の観光路線といった側面が強いが、噴火等の非常時には避難手段として迅速且つ大量輸送可能な鉄道方式の優位性が指摘されることがある。こうした背景もあって、富士山登山鉄道構想が度々浮上する[1]。
登山鉄道の一覧
以下に、全国登山鉄道‰会加盟団体と、50‰以上の勾配を持つ鉄道事業法・軌道法に準拠する鉄道会社・路線を記載する。
全国登山鉄道‰会
- 箱根登山鉄道鉄道線(神奈川県)
小田原~強羅。最急勾配は80‰。小田原~箱根湯本は小田急の列車が乗り入れており比較的傾斜はないが、箱根湯本~強羅間は箱根山の急勾配を登る鉄道に様変わりする。 - 富士急行線(山梨県)
大月~河口湖。最急勾配は40‰とさほど大きくはないが、高低差は約500mある。富士山や富士急ハイランドへのアクセスに便利であるほか、JR中央線快速の一部列車が東京駅から乗り入れている。 - 大井川鐵道井川線(静岡県)
千頭~井川。最急勾配90‰であり、日本で最も急勾配。その急勾配を登るため、日本で唯一アプト式の区間がある。尾盛駅や奥大井湖上駅など、秘境駅のメッカでもある。 - アルピコ交通上高地線(長野県)
松本~新島々。最急勾配は21.4‰。この中では最も小さい勾配だが、終点の新島々でバスに乗り換えれば北アルプスの上高地や乗鞍高原まで行くことができる。 - 叡山電鉄鞍馬線(京都府)
宝ヶ池~鞍馬。最急勾配は50‰。市原駅までは京都精華大学がある住宅地に沿って走るが、それより先はもみじのトンネルなどを通る鞍馬山への登山鉄道となっている。 - 南海電鉄高野線(大阪府・和歌山県)
難波[2]~極楽橋。最急勾配は50‰。大阪府内は通勤路線であるが、和歌山県の橋本駅以南は高野山へのアクセス路線となり、「ズームカー」という専用車両が運行される。 - 神戸電鉄有馬線(兵庫県)
湊川~有馬温泉。この中では珍しく大都市の通勤路線かつ登山鉄道の区間。神戸市内で六甲山地を50‰の急勾配で登っていき、その先の住宅街「鈴蘭台」などにアクセスする。
その他の鉄道路線で50‰以上のもの
- 黒部峡谷鉄道本線(富山県)
宇奈月~欅平。最急勾配は50‰。関西電力の黒部ダムへの輸送路「黒部ルート」の一部だが、一般人もトロッコ列車に乗車することで黒部峡谷を観光できる。 - 京阪電鉄京津線(京都府・滋賀県)
御陵~びわ湖浜大津。最急勾配は61‰。地下鉄から登山鉄道、そして滋賀県大津市で併用軌道(路面電車)に変化するというバラエティに富んだ路線。
関連動画
関連項目
脚注
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