白痴(はくち)とは、
- 知的障害、精神遅延の重度の状態のこと。知恵遅れ。現在では差別用語のひとつとされるので、あまり公に口にださないように。
- ロシア文学小説。原作者はフョードル・ドストエフスキー。3.の原作。
- 黒澤明監督の長編映画。1951年公開。配給は松竹。
- 坂口安吾の短編小説。
- 4.の映画版。1999年公開。監督は手塚眞。これも配給は松竹。
本項では3.について記述する。
概要
『わが青春に悔なし』以来久々に原節子をヒロインに迎え、前年の『羅生門』にも出演した森雅之、三船敏郎が本作にも引き続いて登場する。
ストーリーは原作のロシアを日本に置き換えたもの。
戦争により精神に障害を負って「白痴」と呼ばれるようになった無垢な男性と復員途中で知り合った金持ちの男が、ある日札幌の写真館で見た美しい女性の姿に一目惚れしてしまう。しかしその女性はある男性の妾となっていて、この曰くつきの女と二人を巡って周囲を巻き込んだ赤裸々なドラマが展開される、というもの。
当初は4時間26分の作品だったが、現在は2時間46分の版が一般的になっている(後述)。
かねてよりこの作品のファンだった黒澤は撮影中も映画化へのプレッシャーによって自殺騒ぎまでおこしかけたらしい。
完全版について
先に述べたとおり、この作品は元々4時間以上ある大作だった。
元々は第一部、第二部と分割して公開するという構想であったそうな。
しかし、松竹首脳陣はこの映画が当たるとは考えておらず、カットを要請。
そして出来上がったのが3時間2分の版だったが、あまりの評判の悪さのため3日で打ち切る映画館も出てきてしまう。
そこで興行的な収入を得るために更なるカットを要請。
この際に黒澤は「これ以上切るならフィルムを縦に切れ」と言ったと言われる。
そして出来上がったのが、今日知られる2時間46分の版となる。
この当時の黒澤明は、まだ「世界のクロサワ」などと呼ばれる前で国内ではゲテモノ監督としての評判の方が多いくらい(つまるところ、今で言う北野武監督みたいな感じだった)で、この作品の文化的な価値などはまったく考えられていなかった。(現在でもあまり黒澤映画としては省みられることのない存在でもある)
しかし、黒澤が亡くなった1998年に熊井啓監督が独自の調査により『4時間26分の完全版の所在を確認した』と発表。このことは「キネマ旬報’98 10月下旬秋の特別号」に詳しい。
この4時間版は黒澤プロも所有者を把握していると言われるが、少々キナ臭い話があり、「もしこの4時間版が現存するとすれば、それはプリント直後のものを誰かが盗んだのではないのか?」という疑惑がある。
そのためか、DVDなどの説明文にも公式にはこの完全版は存在しないことになっており、黒澤作品の著作権が存在している限り、完全版が発売される可能性は極めて低いといえよう。
今でも、この映画の完全版は存在するともしないとも言われており、一種の都市伝説の類として語られることも多い。
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関連項目
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