相対性理論とは、アインシュタインにより提唱された相対性原理に基づいた理論のこと。略して相対論ともいう。
曖昧さ回避
- 相対性理論(バンド) - 2006年結成された日本のロックバンド
概要
本来1905年に発表された特殊相対性理論と1916年に発表された一般相対性理論を併せて称するが、一般には特殊相対性理論を指すことが多い。
やたらに難解であるというイメージをもたれがちであるが、特殊相対性理論は高校生でも理解できる程度である。
なお、名前を付けたのはアインシュタインではなくプランク(マックス・プランク。量子論の創始者。物理学者)だそうだ。
また、疑似科学論者、トンデモ論者からは標的にされやすい理論である。
21世紀の今日に至っては、GPSのように特殊・一般相対性理論に基づいた補正がされたシステムが日常でも用いられるようになっている。しかしそれでも、相対論を(多くはその誕生経緯・根拠となる実験結果等をきちんと理解せずに)「間違っている」と唱えるものは後を絶たないようで、「どのように相対性理論は間違われるのか」を説明した書籍が刊行されるまでになっている。
特殊相対性理論
二つの原理
特殊相対性理論は次の二つの原理に支えられている。
- 光の速さは光源の運動によらない(光速度不変の原理)
- 物理法則は慣性系によらない(特殊相対性原理)言い換えると、止まっている人から見ても一定の速度で運動している人から見ても物理法則は同じなので、絶対的な静止系を選び出すことはできないということ。
知られている現象
これらの原理から次のような現象が予言され、実験的にも確かめられている。
- 二つの出来事が同時に起きたかどうかは慣性系による(同時刻の相対性)
- 動いている物体の時計は遅れる。高速で運動する粒子は崩壊までの寿命が延びる。
- 運動している物体の長さは運動方向に縮む(フィッツジェラルド・ローレンツ収縮)
- 時間の遅れも収縮も相対的である。つまりAさんから見て運動しているBさんの時計は自分のよりゆっくり進むが、Bさんから見れば運動しているのはAさんなのでAさんの時計のほうが自分のよりもゆっくり進む。長さの収縮についても同じ。
- 質量を持った物体は静止していてもエネルギーを持っている(E=mc2)これを静止エネルギーという。原子核反応のように、非常に大きいエネルギーが解放される場合には、そのエネルギー分だけ反応前後の質量に差があることが観測されている。化学反応のように小さなエネルギーでは質量差を観測することが困難なので、質量保存の法則が良い精度で成り立つ。
上の二つの原理からどのようにこれらの現象が導かれるか知りたい人には、関連動画に分かりやすい解説があるので、それを見ることをお勧めする。
ちなみに古い教科書や啓蒙書では、運動する物体の質量が増大すると説明していることがあるが、これは質量をどう定義するかに依存する。最近は増大する質量(相対論的質量)を導入せずに、いわゆる静止質量を単に質量とよぶ本が多い。
一般相対性理論
等価原理
一般相対性理論は重力の理論である。一般相対性理論の基礎となるのは等価原理で、アインシュタインはこれを「自分の生涯で最も素晴らしい考え」だと言っている。
等価原理とは、重力と慣性力は区別できないということ。この原理の説明として有名なのが次の思考実験だ。あなたが外の見えない箱の中(エレベータに乗っているような状態)にいるとしよう。手に持っていた林檎を放すと床に向かって落ちていった。箱の中にいるあなたはこの状況をどう判断するだろうか?
- 箱は地球(もしくは他の天体)上にあり、林檎は重力によって天体の重心方向に向かって加速度運動をして床にぶつかった。
- 箱は無重力の宇宙空間にあるが、一定の加速度で運動している。箱の外から見れば、手を離した瞬間から林檎は等速度運動しているが、床は加速されているから床と林檎がぶつかった。
1では重力が働いている、2は箱の中から見れば慣性力が働いていると言える。常識的に考えて1だろ、と思うかも知れないが、等価原理の主張では箱の中にいるあなたは1なのか2なのか区別できない。さらに言えば、1と2の中間で、重力と慣性力が両方働いているのかもしれないが、箱の中のあなたには分からない。
さて、引き続き箱の中にいるあなたは突如としてふわっと浮くような感覚を覚え、足が床から離れた。試しに手に持っていた林檎を放すと、今度は床に向かって落ちずにその場に留まった。この状況でもあなたは次のように異なる考え方ができる。
- 地球(もしくは他の天体)上で、箱はワイヤーで吊るされていたが、それが切れて箱が自由落下を始めた。林檎は重力によって天体の重心方向に向かって加速度運動をしているが、床も同じく加速運動するのでぶつからない。
- 無重力の宇宙空間にあった箱が加速度運動をやめ等速度運動になった。箱の外から見れば、林檎は等速度運動していて、床も同じ速度で等速度運動しているから床と林檎はぶつからない。
等価原理によれば、箱の中のあなたはやはり1と2のどっちなのか分からない。
ちょっと細かいことを言うと……。厳密には天体からの重力は一様ではない。つまり箱の中でも場所によって重力加速度はわずかに違う。これに対して慣性力は場所によらず同じ加速度になる。従って単に慣性力のみというのは重力と原理的には区別できる。しかし、重力のみの状態と、重力と慣性力が両方働いている状態とは箱の中にいる人には区別できない。この意味で重力と慣性力とは等価である。
ニュートン力学では慣性力が働くということはその系が加速度運動している、ということだった。重力と慣性力が区別できないということは、その系が加速度運動しているかは分からないということ。特殊相対性理論では「静止」と「等速度運動」は相対的な意味しか持たない。一般相対性理論ではさらに進んで「静止または等速度運動」と「加速度運動」に絶対的な区別はない。
時空が曲がる
重力が働いていても慣性力によってそれが打ち消されるような座標系をとることができる。先の例でいえばワイヤーの切れたエレベータの中、あるいは地球周回軌道上の宇宙船内(重力と遠心力の打ち消し合い)を考えてもらえばよい。このような座標系は慣性系(慣性の法則が成り立つ座標系)になっている。ただし重力と慣性力の打ち消し合いは狭い範囲(エレベータ内、宇宙船内)でしか成り立たないから、局所的な慣性系である。
ニュートン力学や特殊相対性理論は一様な時空の理論だったが、これは大域的な慣性系が存在することを前提としたためである。慣性系なくしては一様な時間もなにも定義できない。一般相対性理論では重力が存在する限り、局所的な慣性系しかないので、必然的に曲がった時空を扱うことになる。数学的にはリーマン幾何学というものを使う。非ユークリッド幾何学の記事を参照のこと。
曲がった時空中での物体の運動は測地線方程式で表される。等価原理によって物体に重力が働いているか否かというのは絶対的な意味を持たない。ニュートン力学では林檎に地球からの重力が働いて落下したいうが、一般相対性理論では林檎に重力は働いているとも、いないとも言える。曲がった時空を測地線にそって運動した結果、林檎が地面に向かうことには変わりはない。
物質が存在することで時空がどのように曲げられるかを表すのがアインシュタイン方程式である。これは非線形な方程式で解くのは非常に難しい。
知られている観測現象
- 水星の近日点の移動 -- 水星の近日点移動はニュートン力学からの予想とずれていることが知られていた。このずれが一般相対論の効果で説明がつく。
- 光の径路が曲がる -- 1919年に恒星からの光が太陽近くを通るときに曲げられていることが観測された。重力レンズ効果ともいわれ、宇宙の質量分布を知るのに役立つ。
- 時間が遅れる -- 低いところの時計のほうが高いところの時計よりもゆっくり進む。GPSにもこの効果による補正がとり入れられている。
- ブラックホール -- 当該項目参照
- 重力波 -- 時空の歪みが伝播していく現象。間接的な証拠として、連星系(連星パルサーPSR B1913+16)が回転のエネルギーを失っていることが観測されていて、これが重力波の放出によるものとして説明できる。日本を含め世界各地の研究機関が観測を試みている。2015年9月14日、LIGOの2台の検出器が連星ブラックホールの重力波を捉えて、一般相対性理論と非常によく一致すると言う結果を得ている。
関連動画
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関連項目
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