福間香奈(ふくま かな)とは、将棋の女流棋士である。1992年3月2日生まれ。島根県出雲市出身。森雞二九段門下。女流棋士番号33。旧姓は里見(さとみ)。
キャッチフレーズは“出雲のイナズマ”。その名の通り鋭い攻めには定評がある。
棋歴
アマチュア女流界では幼い頃からその才能を噂され、2003年に女流育成会に入会、わずか1年(2期)で育成会を突破して12歳の若さで女流2級に昇級、その後も快進撃を続け、2006年の14歳で女流1級に昇級する。
同2006年、レディースオープントーナメント(現在のマイナビ女子オープン)で決勝まで勝ち上がり、三番勝負で当時の女流名人の矢内理絵子と対戦。フルセットの末敗れるが「セーラー服&眼鏡っ娘の女子中学生があわや史上最年少での優勝なるか」と、棋界のみならずマスコミにも注目を集めた(この準優勝により、女流初段に昇段)。
女流初段として迎えた2007年の女流王将戦ではタイトルホルダーやタイトル経験者を連破、挑戦者決定戦にまで駒を進めるも、当代最強を誇る清水市代の前に敗れて惜しくも初タイトル挑戦はならず。同年の倉敷藤花挑戦者決定戦でも同じく清水に敗れ、「あこがれの清水さん」がリアルな壁となって立ちはだかる。
「この強さならタイトル挑戦も時間の問題」と評価も上がっていくなか、ついに2008年9月の倉敷藤花戦で初のタイトル挑戦が決定、同日付で規定により女流二段に昇段。その後2008年11月には三番勝負で前年の借りを返すかのごとく清水市代に2連勝。林葉直子、中井広恵に続く史上3番目の若さで初のタイトル獲得を果たし、一気に女流三段にまで登り詰めた。ちなみに関西所属の女流棋士のタイトル獲得は史上初。
さらに2009年には新人王戦にて新進気鋭の稲葉陽を撃破。女流棋士が公式戦にて男性棋士に勝つ史上最年少記録を大幅に更新(16歳10ヵ月)。得たばかりの倉敷藤花防衛にも成功し、女流名人位の挑戦権も獲得。当時の女流名人は清水市代となり、前年度の倉敷藤花に続いてのカードとなったがノリに乗った福間の勢いは清水にも止められず、17歳にして女流二冠を達成。なお、10代でのタイトル二冠は林葉直子に次いで史上2人目。
完全にトップ女流としての地位を確立した2010年に女流王将戦にて挑戦権を獲得。当期タイトルホルダーはまたまた清水市代。三番勝負の初戦を落とすも、残りの2局を連勝し、史上3人目の女流三冠を達成。18歳7ヵ月の女流三冠は最年少記録。しかも、奪ったタイトルの全てが清水市代からのものと言う事で“里見時代”の到来を強く印象づけるものとなった。
その後も三冠防衛を続け、2012年には女流王位戦で甲斐智美からタイトルを奪取し女流四冠に。2013年のマイナビ女子オープンでは上田初美との番勝負をストレートで勝ち、女王をも獲得。一度もタイトルを失うことなく史上初の女流五冠を達成。どこぞの鬼畜眼鏡全盛期の羽生善治を思わせるほどの凄まじい強さを見せ付けた。
これで女流六大タイトルで残すは女流王座のみとなった。他タイトルを防衛しつつこれを獲れば史上初の六冠……だったがさすがにそうはいかず、2013年に女流王位などのタイトルを失い一時は二冠に後退。2014年には体調不良により予定されていた年内全ての対局を休場。休養をとったことが功を奏したのか、翌年復帰してからは以前の強い将棋が復活。失ったタイトルを瞬く間に奪還し、2016年には五冠に復帰。トップ女流棋士として返り咲いた。
2019年は、前年失冠した女流王位を渡部愛から奪還。この年より始まったヒューリック杯清麗戦でも決勝となる番勝負に進出。番勝負では甲斐智美を3連勝で降し、前人未到の女流六冠を達成した。マイナビ女子オープンでも挑戦者となり、これを勝てば女流全冠制覇となるところだったが、西山朋佳に敗れた。ちなみに、里見が挑戦者となるタイトル戦で敗れたのはこれが初めて。
2020年、女流名人戦で谷口由紀を破り11連覇を達成。1991年に林葉直子が女流王将戦で記録した10連覇を29年ぶりに塗り替えた。4月に女流六段に昇段。
2021年、女流名人戦で加藤桃子を破り12連覇、清水市代の持つ通算タイトル獲得43期に並んだ。そして女流王位戦で山根ことみを破り、単独1位となる44期となった。女流王座戦では西山朋佳を破り女流五冠に復帰、同時に通算5期獲得によりクイーン王座の称号を得た。
“女性棋士”への挑戦
一方で奨励会への思いは断ちがたく、2011年当時の日本将棋連盟会長・米長邦雄に「タイトル全冠を返上して女流棋戦を休場し、奨励会に挑戦したい」と直談判した(当時は奨励会と女流の掛け持ちが認められていなかったため)。米長はスポンサー等との対応に苦慮した結果「女流棋士を続けることを条件に奨励会への挑戦を認める」と裁定を下す。これを機に奨励会との掛け持ちが認められることになり、編入試験に合格の後、男性会員に混じって奨励会にて奮闘。2012年に現行規定では女性初の奨励会初段となった。以来、長らく勝ち続けられない時期が続いていたが、2013年7月に二段に昇段。同12月にはついに女性として初めて三段に昇段し、魔の三段リーグに到達した。
しかし、三段リーグ挑戦直前に前記の体調不良により奨励会も3期(1年半)休場。復帰後初の三段リーグでは女性初の白星を挙げるも負け越し、以降通算5期で規定の成績を残すことができず、2018年に年齢制限により奨励会退会となった。
男性棋士との対戦
2009年に新人王戦で稲葉陽四段(当時)を破り、『将棋世界』2009年10月号掲載の紙上対決では若手実力派の村山慈明五段(当時)相手に平手で勝利を収めている。
またエキシビション戦で持ち時間のハンデはあったものの、山崎隆之と平手で対局して勝ったこともある(山崎は初手から持ち時間一手20秒であり、里見は持ち時間10分、切れたら一手30秒)。
2018年にはヒューリック杯棋聖戦で村田智弘、朝日杯将棋オープン戦で増田裕司、福崎文吾に連勝。プロ棋士相手の3連勝は石橋幸緒に並ぶ女流棋士最多タイ記録である。同年度はプロ棋士相手に7勝を挙げ、従来の年度記録である4勝を大きく上回った。
2019年には棋聖戦で出口若武、浦野真彦、NHK杯テレビ将棋トーナメントで高崎一生、棋聖戦で都成竜馬に連勝。前年自身が記録したプロ棋士相手の3連勝を超える4連勝を記録した。また、NHK杯で女性が勝ち星をあげるのは史上3人目。
2021年にはプロ棋戦で通算30勝目を挙げ、清水市代の29勝を超えて単独トップとなった。
2022年、棋王戦予選を勝ち上がり、女性初のタイトル戦本戦入りを果たした。同対局で直近の成績を10勝4敗とし、女性として初めて棋士編入試験の権利を得た。里見はこの権利を行使し、連盟は6月24日付で受験申込を受理。8月から1ヵ月に1局ペースで五番勝負を実施したが、3連敗で不合格となった。
2022年5月26日現在、プロ棋戦での通算成績は41勝50敗。
棋風
振り飛車党。ゴキゲン中飛車や石田流が得意。師匠の森が“終盤の魔術師”の異名を取っていたこともあってか、彼女も師匠譲りの終盤の攻めの鋭さを評されている。居飛車党に対しては振り飛車で戦っている(奨励会入り後はたまに相居飛車で戦うこともある)。
振り飛車党に対しては以前は相振り飛車で戦っていたが、奨励会に入会した2011年頃からは居飛車対抗形、相振り飛車どちらでも戦うようになった。
人物
幼少時に里見が参加した将棋パーティにて、出席していた女流棋士の高橋和に「どうすれば将棋が強くなりますか?」と尋ねに行くと、「毎日、詰将棋を解くとよい」とのアドバイスを贈られ、女流プロとなった現在でも高橋のアドバイスを実践しており、終盤力を日々向上させている。
中学生時には同じ関西所属の室田伊緒、井道千尋(後に関東へ移籍)と3人で“キラリっ娘”というユニットで、イベントや指導対局を行なっており、いつもイベントは大盛況だった。
父親の影響で、学生時代からマンガをよく読んでおり、『ろくでなしBLUES』や『空手バカ一代』等を愛読していたという。その後空手や格闘技に魅せられ、中でも山崎照朝のファンになり対談したこともある。
好きな物はすき焼き、シュークリーム、フルーツ牛乳、うなぎ。苦手なものはピーマン。ゲン担ぎにカツ丼を食べることが多いらしい。
37期女流名人位戦では、憧れの清水市代が下座に座っていて、最初は違和感を覚えたがそれ以上に「『清水市代先生と指せる』ということが、とても嬉しかった」と対局後に語り、将棋好きの一面も覗かせた。
2024年1月1日に、2023年に元奨励会三段の福間健太と結婚していたことを発表。以降は福間姓で活動する。
成績
女流棋士として
昇段履歴
- 女流2級(2004年10月1日)…女流育成会・昇級点2点達成 ※2期連続昇級点
- 女流1級(2006年4月1日)…女流名人位戦B級入り・女流王将戦本戦入り
- 女流初段(2007年2月22日) …レディースオープン・トーナメント準優勝
- 女流二段(2008年9月29日)…タイトル挑戦
- 女流三段(2009年4月1日)…タイトル1期
- 女流四段(2010年2月10日)…タイトル3期
- 女流五段(2011年10月18日)…タイトル7期
- 女流六段(2020年4月1日)…「類いまれなる成績」による
女流タイトル戦履歴
清麗 | 3期(第1期-2019年度~2期・4期) |
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女王 | 1期(第6期-2013年度) |
女流王座 | 5期(第3期-2013年度・6~8期・11期) クイーン王座 |
女流名人 | 12期(第36期-2009年度~47期) クイーン名人 |
女流王位 | 7期(第23期-2012年度・26~28期・30〜32期)※3連覇中 クイーン王位 |
女流王将 | 8期(第32期-2010年度~34期・37~40期・43期) クイーン王将 |
倉敷藤花 | 12期(第16期-2008年度~20期・23~29期)※7連覇中 クイーン倉敷藤花 |
- タイトル戦登場:61回
奨励会員として
- 2011年5月21日 - 奨励会1級(編入試験合格)
- 2012年1月7日 - 奨励会初段(12勝4敗により昇段、1級での成績:25勝16敗)
- 2013年7月29日 - 奨励会二段(12勝4敗により昇段、初段での成績:39勝32敗)
- 2013年12月23日 - 奨励会三段(12勝3敗により昇段、二段での成績:12勝3敗)
- (2014年4月より、第55回三段リーグに参加の予定だったが「体調不良」の為、2014年中の対局を全て休場する事を発表。 2015年上期の三段リーグも休場している)
- 2018年3月 - 年齢制限により、奨励会を退会。
受賞歴
メディア出演など
テレビ
その他
関連動画
関連リンク
関連項目
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- 0pt