移民とは国境をまたぐ移住者のことである。ネットでは彡(゚)(゚)のように他のコミュニティから移動してきた人を指すこともある。
移民の定義について
経団連のInnovating Migration Policies ―2030年に向けた外国人政策のあり方内のコラムでは次のように述べられている(※2段落目の日本に関する記述については、次項で実態との食い違いを指摘する)。
「移民(immigration)」について国際的に共通の定義は存在しない。国連は1998年に各国の統計データを整備するために検討を行ったが、ここでは移民(immigration)を定義せず(というより、結局結論を得ることができず)、1年以上母国や定住地以外に滞在する「長期移住(long-term migration)」と3カ月以上1年未満の滞在となる「短期移住(short-term migration)」の2種類に外国人の定義を分けた。
一方、国際移住機関(IOM)は、永住を目的として入国する外国人を「移民」と定義している。日本政府はこの定義を元に、日本は移民政策を取らないとしている。自民党でも「『移民』とは、入国の時点でいわゆる永住権を有する者であり、就労目的の在留資格による受入れは『移民』には当たらない」とする文書を公表した。
なお、移民とは別に、移住(migration)という言葉が学術的にも国際的にもしばしば用いられている。国境を越えて移住する場合は国際移住(international migration)となり、目的や滞在期間を問わず、一般的に外国人の入国・滞在を示す言葉として使われる。
本提言では、話す人によって定義が異なる「移民」は用いず、「外国人」で表記を統一している。ただし、この「外国人(foreigner)」という定義も国際的には共通していない。日本では、日本国籍を有しない人を「外国人」と定義する(入管法)。一方で、米国、カナダ、豪州などの「移民国家」では、国籍ではなく出生地で外国出生者(foreign-born)と国内出生者(native-born)を区別し、foreign-bornを「外国人」として統計処理する。各国の統計を比較する際には、定義の曖昧さを認識しておく必要がある。
確かに「移民」という言葉は、難民も、合法移民も不法移民も、一時滞在型も永住型も、高度人材も非熟練労働者も、家族移民も労働移民も自由移動移民も、すべてをごっちゃにした言葉であり、各人がそのうちの一部だけをイメージして思考を進めてしまうので、出発点から議論が食い違ってしまいかねない。
実態に即した議論のためには「移民」という言葉より、外国人、外国人材、高度人材、外国人労働者、一時滞在型、留学生、永住資格などタイプを特定した用語を使ったほうが、論点が明確になるかもしれない。
例えば日本経団連は2020年発表の「。新成長戦略」(なにこのわかりづらい名称……)で「外国人材の活躍については、まずわが国として外国人材をどの程度受け入れ、どのように受け入れ態勢を整えるべきか、本格的に議論する必要がある」と述べ、経済団体らしく「外国人材」つまり経済の担い手と見ている。一方、民間有識者による令和臨調は「外国出身者」と呼んでおり、人口減少対策の重視がうかがえる。
近年の日本の動向
国連の定義は統計の不備な国も考慮しており非常に粗い。OECD(経済協力開発機構)の定義は次の通り。
- 永住型移民(permanent-type migrant):滞在期間,及び更新回数に上限がない資格で滞在する外国人
- 一時滞在型移民(temporal migrant):滞在期間,及び更新回数に上限がある資格で滞在する外国人
日本の在留外国人322万人のうち63.8%にあたる約206万人が永住型移民に分類される。
毎年の永住型移民の規模は、日本は13万人で先進国10位となる。1位のアメリカは7割が国際結婚とか先に入った移民が家族を呼ぶ形の移民(家族移民)で、2位のドイツは7割がEUからの移民(自由移動移民)であり、この2つは政策的にコントロールできない(非裁量型移民)。
国の意思が最も現れるのは労働移民である。そして日本は労働移民の総数では先進国5位の規模で、しかも(総数10位以内で見た限り)カナダに次いで永住型の比率が高い。つまり日本は移民に消極的ではなく、定住化を拒む傾向も強くない。
※以上、こちらの記事(連載統計から読み解く移民社会① 日本は移民社会なのか?その特徴とは?
国立社会保障・人口問題研究所 是川 夕、2023年12月)を参考にした。
前項で述べたように、日本政府は「永住を目的として入国する外国人を移民ととらえ、移民政策(文脈から移民推進の意味だろう)はとらない」としており、自民党も「就労目的の受け入れは移民ではない」としているが、実態として日本は「年間十数万人規模の永住外国人の増加」を受け入れていると言える。
移民に関する政策
移民に関する政策(あるいは外国人に関する政策)とは、次の2点から最適値を選び、それに向けた政策を立案・実行することだと考えるべきである。
毎年100人以下の移民はありえない。日本の総人口や出入国や交易の規模からして、100人規模まで移民をしぼりこむのは国境封鎖に等しく、これほど極端な政策は文化・経済・国防まで深刻な問題を生むだけで、日本人をはじめ地球上の誰の利益にもならない(日本の国力低下が利益になりうる少数の国を除く。ただし本当に長期的利益になるかは疑問)。
毎年300万人以上の移民もありえない。これは人口比でアメリカの約10倍の規模であり、国境管理の放棄に等しい。EU域内のように宗教・歴史・社会構造などで関わりが深く同質性高い移民が多数派で、さらに大戦防止や米国への対抗などの強い政治的必然性があり、通貨統一と政治的・経済的・法的基準のクリアなどの準備がなければ、最低限の制度や社会関係資本すら持続不可能だろう。早々に破綻して打ち切るようでは日本人をはじめ地球上の誰の利益にもならない(日本の国力低下が利益になりうる少数の国を除く。ただし本当に長期的利益になるかは疑問)。
なお実数は、前項で述べた通り永住型移民の規模は毎年13万人となっており、毎年100人に比べると130倍であり、毎年300万人に比べると20分の1以下である。
移民の種類を考えないこともありえない。例えば経済的利益(国家財政の問題の軽減を目指す考えも含む)のために移民を受け入れるべきという主張は大きな立場の一つだが、その前提を受け入れたとしても、研究では一概に移民をいれればプラスになるとはされていない。条件によっては、人口成長により一人に使える資本が減り経済にマイナスである(資本の希釈化効果)。経済効果は資本の希釈化効果の大小によるので、理論でプラス・マイナスは決められず実証研究による検証が必要だという(なお日本は移民に関する統計が未整備でありデータが足りない)。最低限言えることとして「高度な技術・技能を有し、受入国の標準語でのコミュニケーションが可能な人材を受け入れることができれば、受入国の経済成長を促進し、自国労働者の社会保障負担を軽減し、財政安定化にも寄与するなどのよい影響をもたらす」のは間違いないと結論が出ているが、これは極めて厳しい基準であり、まさに受け入れる移民の種類を選んで絞り込むことである。
人道も重要な論点である。人道は明治の日本人が独立を守る文明国を志して以来(当時から西洋崇拝の流行と同時に「西洋がすべての面で文明的なわけではない」と言われていた)、国や個人の生存競争が現代よりもはるかに過酷ななかでも可能な範囲で追求してきたものであり、近代日本建設とともにあったはずの精神性は軽んじるべきものではない。また人の力は有限であり、日本も他国に人道援助を求める立場になることはある。そして貿易を含め豊かで安定した国際関係という日本の存立条件のためにも、国際社会に人道の領域を確保することは欠かせない。以上は限界を超えた人道援助を求めるものではなく(それでは持続不可能で未来が無い)、どのようなやり方をどの程度やるのが適しているのかを学術的根拠に基づいて論じることや、可能な限りは力を尽くすべきであることを意味する。
移民の一種ともいえる「難民」については、日本は政策の構想を打ち立てることができていない(日本は立ち遅れてきた国防や経済安全保障の強化、9条に限らない憲法改正、近年ようやく動き出した刑法改革などでも動きが非常に遅く、構想と熟議によって何かを「変える」ことは何でも腰が重いのかもしれない)。難民について十分な研究と準備をせず受け入れれば欧州難民危機のように深刻な事態を招くこともありうる(ただ欧州の場合、アフリカや中東と陸続きだったり、他のEU加盟国が入れたら自動的に自国にも入れるなど、日本とは根本的に異なる状況があった)。一方で移民・難民について政策的に深く検討・整備していないためか、難民申請が本来の目的とは違う意図で使われたりすることも指摘されている。いずれにせよ、日本は難民条約に加入している国であり(1981年の難民条約加盟前にも、日本は1970年代後半からインドシナ難民1万人を受け入れたことがある)、治安を乱しかねない人物は当然チェックすべきだが、悲惨な境遇への支援のためには様々な制度的不備を改めていくべきだろう。難民については、少なくとも日本国内で保護を推進する立場からの説明は把握したうえで議論する必要がある。
なお、一般的な移民は治安を悪化させないという研究が複数ある一方で、難民は他の移民に比べ窃盗や暴行を増やすという研究、難民を追放する政策が逆に犯罪を大きく増やしたという研究がある。難民は極めて不幸な境遇であり、困窮や暴力との接触などで荒れている者もいるという認識を持ち、経済的・心理的・社会的な支援を前提に受け入れるべきという考え方もできる。そもそも難民に限らず、移民に「若さや多産による人口や労働力への寄与」を期待するなら、リスクも伴うのは当然である。日本が若くて多産だった時代は今よりも荒れまくっていて殺人も多く自殺も多く中絶もものすごく多く幼女から成人まで全年齢層の強姦被害も多かった。もちろんこれだけでは因果関係は言えないのだが、「人口や労働力のために移民が必要」と主張するなら、若さや多産には治安悪化リスクが伴うかもという覚悟は必要である(ただ次に述べるように、人口や労働力のために生身の人間を自国領に住ませる政策がどれくらい有効かということ自体、技術や経済構造の変化も合わせて判断しなくてはならない)。
さらに今後は、AIによって労働力が余ったり経済構造が大きく変わるかもしれないこと、経済がモノからサービスに移っていくこと、物流・人流・情報の流れによるグローバル化はさらに進んでいくこと、などの要因も合わせて、経済や社会に対する移民の影響を分析しなくてはならない。グローバル化はヒト・モノ・カネ・情報の輸送技術の発達(コスト低下含む)によるもので、技術の発達は後戻りしないので止まったり逆転することはないだろう(大航海時代から5百年持続し、しかも加速し続けている方向性と言える)。
なお、アメリカは今後も毎年100万人の移民を入れ続けるので1世紀で1億人のペースで人口が増えていくが、国連経済社会局人口部によると2050年には1位のインド(16億6000万人)、2位の中国(13億6000万人)、3位のナイジェリア(4億1064万人)につぐ4位(3億8959万人)になると予測されている。なお5位はインドネシア(3億2155万人)、 6位はパキスタン(3億694万人)、7位はブラジル(2億3269万人)、8位はバングラデシュ(2億193万人)、9位はコンゴ民主共和国(1億9740万人)、10位はエチオピア(1億9100万人)という予想である。
一方、経済では2030年代に中国が経済規模で米国を抜き、2060年代には再び米国が中国を追い上げて拮抗すると日本経済研究センターは2019年時点で予測していた。しかし2022年末に、経済摩擦等の要因で中国が経済規模で米国を抜くのは困難になったと予測は修正された(2020年の予測では2029年、2021年の予測では2033年に中国のGDPが米国を上回ると標準シナリオで予測していた)。そして2023年末の予測は米中の差がさらに埋まりにくくなったとしている(「標準シナリオでは、2029年以降の中国の実質成長率は2%台にとどまる見込み。世界最大の経済大国になるという中国の野望はほぼ不可能な情勢」)。ちなみに日本の一人当たり名目GDPは韓国に2031年、台湾に2033年に抜かれる予想で、これは前年のアジア経済中期予測より大幅に後ろにずれた。日韓台の一人当たりGDPは拮抗していて予測がぶれやすいようだ。韓国は約5170万人の人口に対し約226万人の外国人が(2022)、台湾は約2430万人の人口に対し約76万人の外国人が(2021)住んでおり、日本人(つまり日本人移民)は韓国には2万4720人、台湾には1万5396人が住んでいる。
東アジアは出生率低下に悩んでおり、日本が1.26なのに対して台湾0.87、香港0.77、韓国0.72となっている。中国も例外ではない。なお、グラフからわかるが1979年に一人っ子政策を始める前から中国の出生率は急激に低下していた。乳幼児死亡率が低下すると出生率は下がる傾向にあるので、一見不思議だが子供の命が助かるようになると子供は急速に減っていく。今は世界中の子供の命が助かるようになりつつあり、そのため世界人口の爆発は止まると予想されている。インドも出生率が人口維持できる2.1を下回り少子化が加速している。
世界の移民の歴史
歴史上、民族大移動のように出身地でない地域に人々が移住することはつねにあった。移動しながら生活するユーラシア大陸の遊牧民、拠点に移住して交易を営む東南アジアの華僑・印僑のような例もある。
アメリカやオーストラリアは植民地が独立して国になったもので、もともと西洋人はいなかった。シンガポールは華僑や印僑が中心の国である。イスラエルもかなり新しい移民国家である。
ただし、これらは近代の国民国家概念が確立し国境線が意識される前の話で、現代の移民とは区別される。現代の移民は、主権国家間の集団的な移住を指す。
移民問題は、国民国家の概念と表裏一体であり人口や経済、治安、文化などの問題と合わせて語られることが多い。ただしそれらの要素について、移民の種類・規模・受け入れ体制がどんなときに経済的・社会的な利益と損失のバランスがどうなるか、整理された実証的な議論をするのは非常に難しい。
欧州で非常に激しい騒動と議論が起こったのは、中東やアフリカから100万人の難民・移民が殺到した時である(2015年欧州難民危機)。難民も移民の一種だが、殺到によって受け入れが追い付かないなどのパニックと、ドイツ等のナチスの反省による欧州的な人道主義との板挟みと、欧州連合(EU)内の国家同士の利害対立などによって、欧州は非常に深刻な混乱に陥り、欧州連合からのイギリスの離脱(ブレグジット)にまで影響した。
日本への移民の歴史
歴史的には、中国や朝鮮半島などからの移住者(渡来人)は漢字・仏教・儒教・建築技術など様々なものを日本へ伝え、技術・思想・文化・政治に多大な影響をもたらしてきた。
日本最古の歴史書である古事記・日本書紀も基本的に漢文であり、たとえば古事記の序文には中国の周王や、陰陽・五行・王化など中国的な概念への言及も見られる(ちなみに近現代の日本は中国より欧米に学ぶところが多いため、政治から文化まで欧米の概念を大量に用いている)。
古代における中国や朝鮮半島との関係は非常に深く、古代最大の反乱である筑紫国造磐井の乱などを経て、全体としては時代を下るにつれ関係は遠くなっていった。
大航海時代には、南蛮人と呼ばれる主にヨーロッパ人やアフリカ人の存在が知られている。有名なのは織田信長に仕えることになった弥助がいる。
明治以降、国民国家として国民=国籍保有者として法的に管理するようになってからは、主に朝鮮半島出身者をどう扱うかが問題になった。当時日本経済の主力であった紡績業は初期から積極的に朝鮮人を受け入れている。当時の日本は大日本帝国という多民族の「帝国」であり、異民族の同化に積極的であった。
第二次世界大戦後、日本政府が強制的に旧植民地出身者を国籍喪失させると、「外国人」となってしまった者たちが在日外国人としてアイデンティや生活問題に悩まされた。
法的には移民ではないが、沖縄県民も日本国と文化的・政治的に同一化を迫られる琉球処分が比較的遅く、琉球王国の時代もあったため、同一化が難しくしばしば問題を呼んだ(方言札、人類館事件など)。
ただし文化的には言語などで日本本土と琉球諸島は同系統に属し、日本語族は日本語派と琉球語派に大別される(方言か別言語か決める基準は存在しないが、フランス語とイタリア語の差に匹敵するという)。
1980年代以降は好景気の煽りを受け、南米やアメリカ合衆国の日系人、前世紀からある中国人・韓国人との結びつきなどを利用しての、労働力不足を理由とする定住外国人が増加した。その後も在留資格者は増え続け、1991年の122万人から2016年には238万人とほぼ倍増している。
全体としてみると、中国や韓国、台湾などからの移住者が大都市に多く、職種も一般企業のほか、サービス業ンド非製造業が多いのに対し、ブラジルやペルーからきた南米人は、愛知県や静岡県、群馬など北関東の自動車工業製造業に集中して雇用されている。
これは、産業界の意向を受けた1990年代の入国管理法改正により、海外日系人に国内での求職、就労、転職の制限のない「定住者」の資格が付与されたことによって増加していったものである。
近年はアジア経済全体が安定的に成長してきたこともあり、必ずしも経済的移民ばかりとも言えなくなってきた。ジャパニーズポップカルチャーや日流といった文化面での交流も無視できなくなっている。また韓流や華流などアジアのカルチャーも日本人の間で消費されることも増え、相互的にもなってきている。
移民ではないが外国人旅行者について述べると、かつては平成に入っても400万人に満たなかったが、ビザ緩和など積極的に外国人を呼び込む政策に舵を切った結果、2005年の673万人から2015年の1974万人と出国日本人数の1621万人を初めて抜き観光立国として脱皮を見せている。
越境する移民ネットワーク
オールドカマーとしては上野や鶴橋のコリアン・タウンは古くから飲食店を中心に地域に根付いている。ニューカマーは80年代においては単に日本にやってきて働くというのが移民の大多数であったが、次第に母国と移住先のネットワークが築かれていく。
池袋・新宿で見られたアジア系外国人のネットワーク化は以下の通りである。まず第一段階では、住み着いた人が家族や親族、友人や知人を呼び寄せて、ネットワークを形成する。第二段階は、新たな移住者の集中が独特のエスニックな生活文化世界を形成し始める。
90年代に第二段階への変化が見られ、母国の文化や情報に対する需要が喚起され、エスニック・ビジネスが形成される。移住者自身が始める母国語の新聞や雑誌、ビデオレンタル、たまり場としての飲食店や美容院などが、母国文化を再構成し、ネットワーク化の媒介となった。
近年は中国や韓国といったアジア系だけでなく、ブラジル人やインド人、トルコ人その他イスラム教徒などが新大久保や新小岩、群馬県大泉町(リトルブラジル)といったところに根付いてきており、異国文化を手軽に味わえる新たな観光地として賑わいを見せている。
日本からの移民
日本への移住と同じくらい古い時代から、日本からの移民も見られる。日本列島が形成されたあと、縄文人という人達が住んでいたが、縄文人達は一部アイヌや沖縄人の祖先と混血して今に至っている。また古来から中国王朝と日本は文化的に一体的な時期を有していたので、しばしば中国へ文化を学びに出かけることをしている。
歴史上の人物では阿倍仲麻呂が唐において科挙に合格して役人として成り上がりを見せている。また遣唐使が取りやめになったあとも、経済的交流は見せており、倭寇と呼ばれる人達が日中を往来している(海賊として働くこともあったが、基本的には私貿易を行う商人である、境界人としての見方もある)。
いわゆる鎖国政策が取られる前までは、日本は海外との往来は活発で、東南アジアや遠くはスペインまで貿易、宗教的帰依のために出かけることがあった。支倉常長や山田長政などがいる。幕末であるが、ジョン万次郎という漂流の末、半ば難民同然でアメリカに渡り業をなしたものもいる。
但し、必ずしも穏便に移民が行われたことばかりではなく、人身売買による日本人連れ去りもしばしば見られる。記録が残っている限りでは、フロイス日本史に日本人連れ去りがあったとされる。
明治以降は、アメリカやハワイへの移民、ブラジル移民が顕著である。これらの移民は日本国内での生活が困窮していて、フロンティアとして出稼ぎに行く、日本国政府としては外貨を稼ぎに行ってもらい、本国の経済の助けとしてもらう意図があった。
但しハワイ移民に見られるように、経済弱者であった沖縄人がハワイで再び奴隷同然で働かされるなど良いことばかりではない。似たようなことは北海道開拓の村や満州開拓団でも見られる。そして第二次世界大戦後、旧植民地に取り残された日本人は棄民とも称され、日系人もしくは残留日本人として母国と途絶され未だに尾を引いている。
日本が戦後経済成長を果たしたあとは、企業人としての移民が目立ってきている。その始まりはニクソン・ショック後のドルペッグ制の崩壊であるが、これにより日本経済に見合った通貨価値として円が評価され、急速に円高が進んだ。ここから日本企業は今までの原材料輸入―完成品輸出という輸出型産業から、海外投資を強めて現地生産現地販売へと方針転換を行うようになる。
特に中国の経済成長が決定的になってからは、本社工場だけでなく、下請け工場も関連部品を扱ってもらうために中国本土へ移転するケースがしばしば見られる。また90年代後半から企業駐在員とその家族の移住が増えてきている。
在留邦人の数は、80年台から増加が顕著となり、1990年の62万人から2005年には101万人、2016年は133万人を超えている。最近事件の犠牲になったアルジェリア人質事件や駐在員ではないが現地の経済開発に携わっていた日本人がいたバングラデシュのダッカ・レストラン襲撃人質テロ事件も日本人が国際的に活動していることの例である。但し、現地駐在員はローテーションで派遣される事が多く、必ずしも定着的とは言えない。また現地社員とも交流が乏しい点が指摘されている。
また移民ではないが、海外旅行を楽しむ日本人は1972年の年間100万人超えから90年代半ばまでの1500万人超えまで増加傾向であり、2016年は1600万人と決して海外旅行が珍しくない事を示している。最近は、経済や観光目的だけでなく、文化的動機による移民も目立つようになってきている。
明治時代から日本にとって欧米は文明国として学問や文化に浴する異国の地であった。夏目漱石や福沢諭吉など明治の文人が残した随筆や著書は率直にそのことを今に伝える。
戦後も留学先や文化的に活躍する目的で移住する例はしばしばある。ジャズやダンス、ポップアップ、ヘアメイクなどの分野で活躍を夢見る人はニューヨークに渡り、グラフィックアートや演劇、写真などの分野で活躍を夢見る人はロンドンに渡る傾向が強かった。
学問も相対的にはかつてほどではないとは言え、医学や物理学の実験設備においてアメリカやヨーロッパにしかないものもまだあり、日本からアメリカへの留学生は今も多い。また人文系や社会科学系においてもケンブリッジ大学やハーバード大学などが歴史的にも教授陣に置いても魅力的な中、留学の意義は残っていると言えよう。
また数としては多いとは言えないものの、海外で国際結婚する例や移住する例もあり、ドキュメンタリー映画の『世界残酷物語』や『地球の歩き方』などは文化人類学的にバックパッカーを後押しする役目を担った。硬派な面では報道写真家も異国の人たちをカメラに残すというマインドを持って活動している。
現在でも異文化を覗き見するカルチャーは残っている(日本テレビの世界の果てまでイッテQ!やテレビ朝日のナスDは好評を博している)。また近年はテレビ番組で「海外に住む日本人を紹介する」ことが一つのジャンルとなっている。食やエンターテイメントなど日本文化が輸出されると同時にその文化を現地で広めようという人たちもいる。
関連動画
関連項目
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