概要
口寄せの術の一種であり、口寄せ対象は「死亡している人物の魂」。
つまり死んだ人間を呼び寄せて蘇らせ操る術である。
通常の動物口寄せと違い事前の契約は必要ないが、代わりに呼び寄せる対象の生前の肉体の一部(遺伝子情報を含むもの)が必要であり、また口寄せする時に「別の生きた人間」という生贄が必要である。
このため、薬師カブトは大量の穢土転生を行う準備として各地の墓荒らしを繰り返しており、腐っていて誰の死体か分からないものも含めて多量の穢土転生を試している(そして戦力にならない穢土転生の失敗作を多数作ってしまったと語っている)。自来也は死亡時に雨隠れの里の海の底に死体が沈んでおり事実上回収不可能であったため、口寄せする事ができなかった。
また、口寄せする対象の魂が浄土(あの世)にいる必要もある。具体的には屍鬼封尽によって魂があの世とは別の場所に隔離されている場合。
術が発動すると、生贄の体を塵芥が覆い、口寄せした死者の生前の姿を象る。この時の姿は死の直前の姿を再現し、年老いてから死んだ者は老人の姿で蘇る。
血継限界による特殊体質でも、死亡した当時に持っていたのであれば生来持っていたものでなくても漏れなく再現するが、生身の体でないものは再現しない。
例えばペイン長門は移植によるものである輪廻眼を持った状態で転生したが、死の直前にはやせ衰え自力で歩く事ができない体だったため、転生しても痩せ細ったからだであった。また暁のサソリは人傀儡の体ではなく生身の体で転生している。
穢土転生体は眼球の白眼の部分が黒く染まる(輪廻眼のように眼球全体に模様のある特殊な眼の場合を除く)。
また肌にいくらかのヒビのような模様が残るが、この模様は場合によって多かったり少なかったりする。マダラが印を切って口寄せ契約から抜け出した際にヒビ模様が減ったことから、術者による制限が強いほどヒビが増えるようだ。
穢土転生体は生身であれば致命傷になるほどのダメージを負っても、かかる時間の差はあれど塵芥が自動的に集まって再生してしまうため、ダメージで倒すことは不可能である。
また、チャクラもほぼ無限となる。上限がなくなる訳ではないが、使い切ってもすぐに回復する。
カブト曰く「使用者に何のリスクも無い強力な術」。
穢土転生を設定の通りに発動させるだけの力量があるならば、その後は戦闘は穢土転生体に任せて自分は隠れていればよく、例え術者が殺されても術が解ける事は無い。対処法が非常に限られる術でありながら、術者への反動や負担と言ったものは全く無い。
しかし、実際はいくつかのリスクがある(後述)。
開発者・千手扉間による、本来想定されている使い方は主に次の2つ。
「敵の忍を殺して転生させ、自我を縛って情報を喋らせる」
「起爆札などを仕込んで敵陣に送り返し、自爆させる」
この使い方であれば、情報を持っている忍であれば強い忍を狙う必要が特に無く、また自爆特攻の際も無理なく敵陣に入り込める顔であれば誰でも良い。反逆のリスクを犯して高い精度の転生を行う必要性が無い利用法である。
しかし後世にこの術を使用した大蛇丸およびカブトの2人はこういう使用法ではなく、単純に強い忍を転生させ戦力とする使い方を選んでいる。結果、カブトはうちはイタチに自我の縛りを抜け出されて直接反逆され、マダラにも契約を解除されカブトの思惑とは関係なく動かれるようになっている。
対処法
- 封印する
最も一般的な方法、というよりごく一部の者を除いて大多数の者はこれしか対処法が無い。殺しても死なないので封印して動きを止めるという単純な理屈である。
各種封印術で穢土転生の体ごと封印する場合もあれば、屍鬼封尽などの術で魂を抜き取って封印する場合もある。後者の場合は魂が抜かれた時点で穢土転生の体は崩れ去る。 - 解術させる
当然だが術者が解術の印を結べばその時点で穢土転生体は消滅する。
術の性質からしてまず可能性が低い方法ではあるが、作中ではうちはイタチが薬師カブトを幻術にハメて印を聞き出した上で結ばせ、解除させている。解術の印は、カブトがオビトに説明を要求された時は「戌・午・寅」と語っているが、実際は「子・丑・申・寅・辰・亥」であり全くの嘘だった。
また別口として、大筒木ハゴロモが六道の力で外部から解術して昇天させている。 - 術を無効化して消滅させる
陰陽遁による攻撃であれば「忍術自体が無に帰る」と言う特性上、攻撃を受けた部分の穢土転生による効果が消滅し、再生されなくなる。陰陽遁によって致命傷を受ければ術自体が解除される。
ただしこの方法は六道仙術を会得した者にのみ可能。 - 成仏させる
生前に強い未練を残していた死者の場合、その未練に強く関わるものが未練を解消してやることにより、術の強制力を抜け出して魂が昇天する事がある。
作中ではシン(根時代のサイの兄のような存在)がサイの絵本の完成した最後の1ページを見て成仏した他、サソリがカンクロウに傀儡に宿る魂を説かれ、自分の目指していた美が何だったのかを悟って成仏している。
術のリスク
カブトは「ノーリスク」と称した術であるが、以下のように「口寄せ対象者が命令無視で反逆する」というリスクを生じる場合がある。
- 術者の実力に対して不相応な強者を使役する
戦力を欲して自分の実力に対して分不相応な強力な忍を口寄せしてしまうと、力ずくで支配に逆らって反逆される恐れがある。従って、反逆するだけの力を持たせないように自我を縛り精度を落として「弱め」に口寄せする必要がある。
作中では大蛇丸は二度目の穢土転生の時、ほぼ全身が柱間細胞でありチャクラが大幅に強化されていたため、特に縛りをつけていない扉間でさえもチャクラで縛る事ができたが、柱間本人は縛る事ができなかった。 - 命令札を上回る強制力で命令を上書きされる
上記のように穢土転生は基本的に自我を縛り命令札を埋め込まれて使われるものだが、外力によってこの命令札を上回る力で命令を与えられると術者に反した行動を取る場合がある。
と言っても並大抵の術では不可能で、作中でそれをしたのはうちはシスイの万華鏡写輪眼の瞳術・別天神だけであった。うちはイタチはこれによりカブトの命令札を上回る力で「木の葉を護る」と言う命令を自身に与え、カブトに対して反逆している。 - 口寄せされた者が印を結んで契約を解除してしまう
口寄せされた側が特定の印を結ぶ事で、穢土転生の口寄せ契約を一方的に破棄してしまうというもの。術者による口寄せは解除されるので一切の縛りが無くなり、不死であるという穢土転生の性質のみが残った状態になる。
作中でこれを実行したのはうちはマダラのみ。よく「開発者である扉間が印を知らなかったのか」などと言われる事があるが、そもそも術者に縛られて印が自由に結べないのが殆どである。実際は扉間は1回目に転生されたときは完全に縛られていた。マダラが実行したのも、カブトによって解除の印が結ばれたのを知った=カブトに異変が起きたのを見てから印を結んでいる。
ちなみに契約解除の印は、アニメ版でマダラが結んだものは「巳・未・亥・戌・寅」。
なお、これらの状況に陥って反逆された場合、術者が再度支配権を取り戻す事は難しい。
基本的に穢土転生・解でいったん消した後、制御できる状態で口寄せし直せば済む事ではあるのだが、生贄に使った人間と口寄せ対象の個人情報物質が無駄になるため、場合によっては今消したら再召喚できないので解除したくてもできない、という事もあり得る。
- 力づくで反逆された場合、縛れるまでチャクラを強化すれば良いが、ゼツの身体を乗っ取って柱間細胞を得た大蛇丸でもない限り、通常はそんな短時間で強くなる事はあり得ない。
そもそもこの場合、大抵口寄せ直後に術者の目の前で反逆するので、策を弄する前に殺される。 - 命令札書き換えで支配から逃げられた場合、頭の中の支配札をもう一度書き直せば済むが、そんな強力な幻術を使えるレベルの忍に対して命令札を入れなおす隙があるかどうかは疑問が残る。
1番目のケースとは逆に、術者から離れて活動している最中に起こる事が想定されるので、支配から逃げられたきり戻ってこない可能性が高い(というか普通は逃げるだろう)。 - 口寄せ契約解除をされた場合、以降どうやっても再支配は不可能。
口寄せ契約自体が無くなるので穢土転生・解は効かなくなり、命令札を書き換えてもチャクラで縛ろうとしても無関係。自分以外が口寄せした穢土転生と同じように封印処理するしかない。
反逆した穢土転生がその後術者の所に戻ってくるかどうかは穢土転生体本人の考えによるが、戻ってくるとして、基本的に穢土転生体の方は術者の居場所を知らない。
しかし何らかの優れた探知能力を持つ者ならば命令として送られてくる術者のチャクラを逆探知可能。
劇中では、カブトの居場所に向かったイタチ自身は探知できなかったが、一緒にいた輪廻眼の所持者である長門が探知可能であったと説明されている。おそらく、輪廻眼外道の術のチャクラを逆探知できた仙術習得者でも逆探知できると思われる。
使用者
二代目火影・千手扉間
この術の考案・開発者でもある。
第一次忍界大戦時に多数使用したと思われる。
他に使い手がいなかったこともあり、他里の忍にも「二代目火影の卑劣な術だ」と認識されており、ナルトス界隈では扉間が卑劣様の愛称を得る元凶となっている。
大蛇丸
木の葉崩しの時に一度口寄せする。3番目に呼び出した棺は三代目火影に阻止されてしまったが、初代火影・千手柱間と二代目火影・千手扉間を呼び出した。作中で初めて穢土転生の術が登場したのもここ。
この時は当人たちの自我がほぼ無いレベルで相当制限を強くして呼び出しており、反逆を完全に押さえ込んでいたが、当人たちの実力も相当抑えられていた(それでも三代目火影と渡り合う程の力を持っていたが)。
また、この時は既に口寄せされた状態のものを棺ごと呼び寄せていたため、生贄を使って口寄せするシーンは描かれていないが、魂が封印されて崩れ落ちた後に出てきたのは音隠れの里の部下であった。3番目に呼び出そうとした棺は「四」と書かれていたため四代目火影・波風ミナトのように見えるが、この時点ではミナトの魂は自身が使用した屍鬼封尽によって死神の腹の中にいて口寄せ不可能な状態だったはずなので、誰を口寄せしようとしていたのかは不明だった。
後に第四次忍界大戦の時に、サスケの要望に応じて上記2人+三代目火影・猿飛ヒルゼンと四代目火影・波風ミナトを口寄せする。ミナトだけでなくヒルゼン自身とヒルゼンが封印した柱間・扉間も死神の腹の中にいた状態だが、屍鬼封尽の解除を行って全員魂を開放して口寄せした。
この時は第一目的が対話であったため人格も特に縛らずにありのままに転生させた。そのため、ほぼ柱間細胞でできているゼツの体を乗っ取ってチャクラが大幅に強化された大蛇丸でさえ、マダラの存在を知って戦いを優先させようとする扉間などに反逆されかけたが、柱間が自身の意志で対話を優先する事を選んだため、結果的に反逆されずに済んだ。
こちらは全員、その場にいた白ゼツを生贄にしている。
薬師カブト
第四次忍界大戦の時に、うちはマダラやうちはイタチ、二代目土影・四代目風影・二代目水影などを含む非常に多くの忍を転生させ、戦局を混乱させる。
カブトは術をさらに研究・改良しており、死亡した当初ではない時代の姿で蘇らせる事を可能にし、蘇らせた穢土転生体に追加の能力を与える事までも可能にしていた。
これにより、老衰で死んだうちはマダラを、死の間際での開眼だったはずの輪廻眼を持ったまま全盛期の年齢で蘇らせた上、輪廻眼の開眼条件をギリギリ満たし傷の回復の助けになる程度の柱間細胞しか移植していなかった肉体に追加の柱間細胞を植え付け、大規模な木遁忍術を扱える能力を付加していた。
オビトが連れていた穢土転生人柱力も、カブトの穢土転生の解術で昇天していたためカブトが穢土転生したものだと分かるが、これらは右目を写輪眼・左目を輪廻眼の状態に改造されていた。
「オレ好みに改造してある」とはオビトの談で、実際に輪廻眼は六道のコピー輪廻眼なので転生後にオビトが与えたものだと分かるが、写輪眼の眼球は穢土転生で作られたものと同じ黒く染まった眼球だったので、オビトのリクエストを聞いてカブトがわざわざつけてやったものだと思われる。
余談
- 穢土転生は既に故人とされているキャラクターを登場させ話に関わらせる目的もあったが、分かり合えると信じている主人公のナルトに人殺しをさせないための術であったという経緯がある。
ナルトは敵をたたき伏せ殺す事で解決を試みるのではなく、対話して許す事で解決を図るべきであるとの作者の考えにより、「人間(およびその他の生き物)」と戦う場合は最終的にはいずれも殺傷以外の決着を見せている。ペイン編での自来也戦死から木の葉襲撃までのストーリーはこの方向性を固めるために作られたもので、この方針はNARUTOという漫画の中心テーマであるとも言える。
下忍時代から含めてナルトが対決したキャラクターにも死亡している人物はいるが、いずれも対決後に別の人物によって殺されているか、自らの意思で死を選んだ人物ばかり。 - 穢土転生と併用する前提の術として「互乗起爆札」がある。
これは通常自分自身が爆発するのみの起爆札に、他の起爆札を口寄せする術式を組み込んだものであり、最初の1枚を起動すると延々と次の起爆札を口寄せし続けながら爆発する。
性質上、爆発が非常に広範囲かつ長時間に渡るため、トラップなどには使いづらい反面、忍具などにつけたものや札そのものを持っての手動爆破では自分自身が巻き込まれやすい。そのため、穢土転生の体に仕込んで敵陣の真ん中に送り込み爆破させるという使い方がされる。当然ながら爆破役の穢土転生体も巻き込まれるが問題ないとされる。
互乗起爆札について知らないはずの大蛇丸が口寄せした二代目火影・扉間の転生体の中に仕込まれていたことから、オリジナルの口寄せの術式にも互乗起爆札を組み込まれている模様。
なお、などの連合軍奇襲部隊はサイの兄・シンの穢土転生がデイダラに爆弾を仕込まれ人間爆弾として使われていたのに対して強く怒りを覚えていたが、奇しくもこれは術の開発者である扉間が想定した使い方そのものであった。
また、穢土転生マダラが天涯流星の隕石落としで自分自身を巻き込み、二代目土影(を通したカブト)に巻き添えになると突っ込まれたが、「本来こうやって使うものだ」と語っていた。マダラも穢土転生の本来の使い道を熟知していた模様。 - オビトの項目にあるとおり、穢土転生されている状態だと輪廻眼・外道の術で操る事ができるが、穢土転生の状態の人間を人柱力にすることはできない。というより、尾獣を取り込んで人柱力になるための術が「生体」が条件であるため術の対象にできない。
穢土転生体を人柱力(のようなもの)の状態にするだけならば方法はある。オビトが操った穢土転生人柱力は尾獣化していたが、これは外道魔像の力により外から尾獣チャクラを縛り付けて擬似的な再現をしたもの。また四代目火影・ミナトは自身の魂と一緒に九尾の半身を封印しており、ミナトを穢土転生した時に九尾の半身もついてきたため、ミナトは穢土転生体でありながら人柱力の状態になっていた。 - 魂を口寄せする関係上、既に穢土転生されてこの世に穢土転生体として存在している人物を別の術者が改めて口寄せする事はできないが、穢土転生されている人物を外道・輪廻転生の術で直接蘇生する事はできる。そうした場合、穢土転生体から塵芥が剥がれ落ちる形で直接生身の身体に変わる。
ただし、生前の身体のうち、生きた状態で別の人物がまだ所持している体の部分については再生されない。マダラがこの方法で蘇生した時、眼球だけは死後も別の人物に移植され使われていた(蘇生時も片方はオビトが使っていた)ため、眼球が無い状態で蘇生された。
関連項目
- 26
- 0pt