空対空ミサイル【AAM:Air-to-Air Missile】とは、航空機(主に戦闘機)から発射され、空中の目標を撃破するためのミサイルである。
概要
誘導装置であるシーカー、推進装置であるロケットモーターをもつ。地対空ミサイルや艦対空ミサイルといったSAMに比べ軽量かつ発射機を装備しないといった違いがある。また、SAMよりも射程が短いことが多い。ただしAAMを基に開発されたSAMや、その逆もある。
概ねこのような形で運用される。なお、赤外線ホーミングミサイルの中には自機の真横にいる目標を直接シーカーが検知し、ロックオンすることで発射後直ちに誘導を開始するものもある。
終末誘導方式
終末誘導方式はレーダーホーミングと赤外線ホーミングに大別される。
レーダーホーミングにはセミアクティブレーダーホーミングとアクティブレーダーホーミングがある。
セミアクティブレーダーホーミングは古い形式で、航空機に内蔵されたレーダーから電波を目標に照射し続け、その反射波をミサイルのシーカーが検知し誘導するものである。これは命中率に優れるが、目標に命中するまで自機がレーダーを照射し続けねばならないためその間回避運動を取ることができない欠点がある。
これを解消するため実用化されたものがアクティブレーダーホーミング方式で、ミサイル自身に内蔵されたレーダーが目標に電波を照射し誘導するものであり、撃った後に回避運動を取ることができる撃ちっ放し能力を持っている。ただしミサイルに内蔵されたレーダーは航空機のそれよりも出力が低いため電波妨害やステルスに弱く、また高価なレーダーを使い捨てにするため価格も割高である。
赤外線ホーミングはその名の通り目標が発する赤外線を検知し誘導する方式である。航空機はエンジンから高熱を発するため、これにより生まれる赤外線を検知しようというわけである。初期の赤外線ホーミング方式は太陽を誤ってロックオンしたり、エンジンの熱を検知するためには目標の後方につかねばならずドッグファイトの必要性があるなど問題も多かったが、現在では高速で飛行する航空機より断熱圧縮で生まれる熱を赤外線による画像として検知するといった新型の誘導方式も生み出されており、その命中率は高い。
なお、基本的にレーダーホーミング方式の方が赤外線ホーミング方式よりも射程が長い。これは、空気中では電波の方が赤外線よりも遠くまで届くためである。ただし東側諸国の開発したミサイルの中には、大ざっぱに目標へ接近したのち赤外線を検知できるようになった段階で誘導を開始する長射程のものもある。
対策
ミサイルを撃たれたら直ちに対策を取らねばならならず、さもなければ撃墜されてしまう。このためいろいろな対ミサイル装備が考案されてきた。
- チャフ - 平たく言えば銀紙をばら撒くことで電波を強力に反射する偽目標を作り出し、レーダーホーミングミサイルを逸らす。
- フレア - 平たく言えばマグネシウムなどをばら撒いて発火させ、偽の赤外線目標を作り出して赤外線誘導ミサイルに対抗する。
- デコイ - 平たく言えば、協力な電波を発信する装置を曳航し、レーダーホーミングミサイルをそちらへ誘導する。
- ECM - 平たく言えば強力な妨害電波を放ってレーダーホーミングを困難にする。
これらの手段を行いながら回避行動を行う。古くは太陽や砂漠といった熱源を背にしてそちらへ誤認し誘導させたり、海面スレスレを飛行して電波に映らなくすることで回避するといった方法もあったが、現行のミサイルはこれらの方法では回避が難しい。またミサイルは人体や機体の限界をはるかに超えたGでの機動を行ってくるため、アニメのように純粋にミサイルを避けるといった芸当は不可能である。このことから、敵のミサイルを検知した段階で直ちに反転し、ミサイルの射程外へ逃げて燃料切れを狙うのが基本的な回避行動である。
また、近年ではレーダーによる電波を敵機の方向へ反射しないよう機体形状や塗料を工夫したり、赤外線を極力放出しないようエンジンノズルの形状を工夫するといったステルス技術によって、敵機にもミサイルにも自機の存在を悟らせずまたロックオンもできないようにするといった対策も生まれている。
空対空ミサイルの例
日本で開発された空対空ミサイル
- AAM-1…三菱重工製のIRホーミングAAM。昭和44年頃に実戦配備され、昭和46年までに330発程度が生産された模様。性能諸元は未公表だが、全長約260cm、重量約70kg、射程7km前後と推定される。[1]
- AAM-2…AIM-9Bのほぼ3倍の射程(9km)を持つAIM-4Dファルコンを上回る性能を目指し、1970年から開発を開始した。しかしコストが壁となり、空自は最終的に1973年にファルコンを導入、開発は1975年に打ち切られた。[2]
- AAM-3…AIM-9Lの発展型を狙って日本で開発された赤外線誘導ミサイル。1986(昭和61)年度より開発を開始、1991年12月に90式空対空誘導弾(略称AAM-3)として承認された。[3]
- AAM-4 → 99式空対空誘導弾
- AAM-5…04式空対空誘導弾。AAM-3の後継として国内で開発された。[4]
関連動画
関連項目
脚注
- *「日本の防衛力3 航空自衛隊」 読売新聞社編
- *「自衛隊最新兵器」ワールドフォトプレス編 光文社文庫 1985
- *「FS-X次期支援戦闘機」エアワールド1993年1月号別冊 P.59
- *http://www.mhi.co.jp/products/detail/type-04_air-to-air_missile_aam-5.html
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