立憲主義(りっけんしゅぎ)とは、憲法通りに国家を運営していこうという思想。主義。
概要
立憲主義(りっけんしゅぎ)とは、「憲法で国家権力の仕組みを定める事によって、権力の濫用を防ごう」という思想である[1]。この思想を、大日本帝国憲法の起草者である、井上毅及び伊藤博文の両名は「立憲政体ノ主義」「憲法ヲ創設スルノ精神」などと表現した[2]。「有権者の間で長年、常識とされている事実」を、憲法に記述することが、「国家権力を正常に機能させる」[3]。
立憲主義は、憲法の条文そのものでは無く、運用のされ方に重点を置いている。この考え方は、古代ギリシアに始まり、近代国家において成立し、19世紀に確立された[4]。
民主主義との関係
民主主義とはざっくり言うと、多数の民衆が主権(最高決定力)を持つこと(主権在民・国民主権)を良しとし、それを希求する思想や政体を指す。現在の立憲主義はその最終的目的を民主主義においていることが多く、立憲主義を通して民主主義を成そうとする思想を「立憲民主主義」とも呼ぶ。
憲法は「過去の民意」[5]であるという考え方がある[6]。その「過去の民意」たる憲法を尊重するのが立憲主義であるととらえた上で「現在の民意」と乖離することがあるのではないか、と懸念されることもある。ただし殆どの憲法には憲法改定に関する規定が盛り込まれるため、憲法に定められた「過去の民意」が「現在の民意」と大きく乖離した場合は憲法の改定が行われうる。
だがしかし、元来、民主主義(主権者概念)とは緊張関係にあるというのが伝統的な立憲主義の考え方でもある。例えば民主主義を多数決として捉えた場合、多数が賛成すれば憲法に謳われた理念を否定・破棄することを求める方向にも向かいうる。改定要件が通常の法律の制定改廃要件よりも高めに設定された「硬性憲法」であることは、そういった緊張関係に対する警戒として反映されたものと理解することもできる。
なお、憲法自体が特定の色を帯びていて、それに反対する立場のものの権利が制限される内容になっていることがある、という点にも留意は必要である。共産主義国家においては憲法に共産党の指導やプロレタリア独裁についてが規定されていることがあるし、特定の宗教を国教とする国家においてはその宗教を重視する内容となっていることが多い。
立憲君主制
君主制(君主を戴く政体)のうち、君主大権の淵源が立憲主義に基づく憲法にある政体のことを「立憲君主制」と呼ぶ。
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関連項目
脚注
- *BUZZAP!2017年10月3日 「立憲主義」ってどんな意味?
- *井上毅「立憲政体ノ主義ニ従ヘハ君主ハ臣民ノ良心ニ干渉セス」
伊藤博文「抑憲法ヲ創設スルノ精神ハ第一君権ヲ制限シ第二臣民ノ権利ヲ保護スルニアリ」(「枢密院会議筆記・一、憲法草案」) - *落合仁司「保守主義の社会理論-ハイエク・ハート・オースティン
」、勁草書房、1987年12月
- *樋口陽一「比較憲法 (現代法律学全集 36)
」、青林書院、1992年2月
- *国民投票等を経た民定憲法典の場合、その制改定時点の民意であり、不文法(国体)又はその一部を成文化した憲法典の場合、伝統的価値観と同義である。
- *主権者は君か?―国民主権対民主主義―: 世田谷市民大学 政治ゼミ
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